
●文:ケニー佐川 写真:河野正士/ロイヤルエンフィールド
ヒマラヤを旅するためのバイク
7日間でヒマラヤを1000km走破する冒険ツーリングの旅、「Moto Himalaya 2022」に参加し、なんとか完走できたことは前回のレポートでお伝えしました。今回の旅を成功に導いた陰の立役者がロイヤルエンフィールド(以下RE)の「ヒマラヤ」(英語名:HIMALAYAN)です。
同社は1901年からガソリンエンジン付き2輪車を作り続けている世界最古級のモーターサイクルブランドとして英国に生まれました。ヒマラヤは英国発祥のREがインド資本のメーカーとして初めて完全なオリジナルとして設計したモデルです。
2018年にデビュー以来、排ガス規制対応などのマイナーチェンジを重ねてきました。開発コンセプトはずばり「ヒマラヤを旅するためのバイク」。まさに今回の旅のベストパートナーです。
ユルさが扱いやすさに
見た目はシンプルで無骨。「ヒマラヤ」は最新モデルでありながら昔のオフロード車のような雰囲気を持っています。空冷単気筒SOHC2バルブの古典的なエンジンは排気量411ccから最高出力24馬力と控えめなスペックながら、ピッグシングルの鼓動感と低中速トルクに厚い粘り強い走りが特長。スロットルに対する反応も穏やかで乗り味もゆったりしています。
フレームやスイングアームなど車体のほとんどの部分はスチールで作られていて、見た目どおり頑丈です。足まわりはフロント21インチ&リア17インチのワイヤースポークホイールとセミブロックタイヤを採用するなど本格的なオフロード仕様になっていて、道を選ばない走破性の高さも魅力になっています。
長距離ダートも疲れずに走破できる
一方で車重は200kg近くあるので取り回しはずっしりときますが、跨ってみると単気筒らしいスリムな車体で足着きも良いです。サスペンションの動きもソフトタッチでシートも肉厚なので長時間乗っていても疲れにくく、シート高自体も800mmと低めで乗り降りしやすいことは大きなメリットでした。
ヒマラヤツーリングではゴツゴツした岩が転がるガレ場や砂漠のようなフラットダートも含めて全行程の3割程度は不整地を走りましたが、意外にもあまり疲れないのが不思議でした。低重心とフロント21インチによる走破性の高さで思いのほかダートも良く走ってくれるし、足着きも良いのでスタックしそうな砂地でも両足を着きながら抜け出すことも容易でした。
エンジンも車体も含めて全体的に“ユルい”ところが逆に扱いやすく、長時間でも乗っていられる秘訣と思いました。私も含めて参加メンバー全員が無事完走できたことが何よりもそのことを証明していると思います。ちなみに標高5000mを超える峠道で出会ったバイクのほとんどはロイヤルエンフィールドで、そのうちの多くは「ヒマラヤ」でした。
究極のアドベンチャーツアラーかも
オンロードでも走りも好印象でした。パワーもハンドリングも穏やかで高低差の大きいワインディングでも扱いやすさが際立っていました。どこまでも続くストレートでもトップスピードは120km/hちょっとしか出ないのですが、それがかえって安心で常にアクセル全開にできるのが気持ちいい。
車体もフレーム剛性がしっかりしていて、フロント21インチのどっしり感も手伝って、高速コーナーも安定したラインを刻むことができます。ブレーキは解除可能なABSを搭載していて、それ以外には特に電子制御を持たないのですがそれで必要充分。シンプルだからこそ扱いやすくタフに使える道具のように付き合える。
実際にツーリングの途中で何人かは転倒したり河で水没したりもしましたが、大したトラブルもなく応急修理してすぐに復帰できるタフさも「ヒマラヤ」の強みでしょう。あらためて“旅するバイク”の原点を見た気がしました。その意味で「ヒマラヤ」は究極のアドベンチャーツアラーと言えるのかもしれませんね。

アナログメーターと液晶画面を組み合わせたメーター周り。世界を旅するバイクらしく、右下にはコンパスも装備

車体のほとんどの部分はスチールで作られており頑丈

空冷単気筒SOHC2バルブ411エンジンを搭載し最高出力24馬力を発揮する

シート高は800mmと低めで足つきも良好

フロントタイヤは90/90-21でオフロードでの走破性も高い
主要諸元
メーカー希望小売価格:¥774,400~
全長 (mm) | 2,190 | |
全幅 (mm) | 840 | |
全高 (mm) | 1,370 | |
シート高 (mm) | 800 | |
重量 (kg) | 199 | |
エンジン種類 | 空冷4ストローク 単気筒SOHC2バルブ | |
総排気量 (cc) | 411 | |
最高出力 | 17.9kW(24.3PS)/6,500rpm | |
最大トルク | 32Nm@4,250rpm | |
燃料タンク容量 (L) | 15 | |
トランスミッション | 5速マニュアル | |
タイヤ | Front=90/90-21 Rear=120/90-17 |
ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
http://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/showroom/
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