●文:ケニー佐川 写真:河野正士/ロイヤルエンフィールド

富士山頂並みの標高からスタート

ヒマラヤ山脈の間を縫って走るワインディング。整備された舗装路も多く走りやすい。

 

ロイヤルエンフィールド(以下RE)が主催する7日間でヒマラヤを1000km走破する冒険ツーリングの旅、「Moto Himalaya 2022」に参加してきました。

ヒマラヤと言えば“世界の屋根”と呼ばれる登山家の聖地。途中には海抜5000mを超える峠がいくつもあって未舗装路も多いし、しかもほとんどはテント泊だとか。気候や食事などもよく分かりません。そんな場所を果たしてバイクで走り通せるのか、最初から期待より不安が多いスタートでした。

実際のところ、出発前からインド渡航に必要なビザ申請やワクチン証明の他、ツアーに参加するための健康診断や予防接種、高山病予防の薬のほか、真夏から真冬までを想定したウエアを揃えるなど準備もけっこう大変。手荷物ひとつで旅立てるパックツアーのようにはいかないですね。

8月の中旬、日本から数名のメディア関係者とともに羽田からデリー空港で乗り換えてヒマラヤへの玄関口であるレーの街に降り立ちました。レーはインド北西部に広がる山岳地帯、ラダック地方の中心都市。観光業で栄える治安も良い街です。ただし、すでに海抜3500mと富士山頂並みの高地で、そこが出発点というのが驚き。少し歩くだけで息切れするわけです。

怖気づくほど美しく雄大なスケール

満々と水をたたえる青い湖。信じがたいことに富士山より高い場所にあるのだ。

 

さて、旅の相棒である「ヒマラヤ」(HIMALAYAN)というバイク。英国発祥のREがインド資本のメーカーとして再出発して以来初めての完全オリジナルモデルです。開発コンセプトは「ヒマラヤを旅するためのバイク」とまさに直球ストライク。本場ヒマラヤでその性能を存分に試してほしいというREからのメッセージが伝わってきます。

ヒマラヤへの玄関口となるレーの街。雑然としているがバイクやクルマも多くに賑わっている。街中にラダック地方の5色旗がはためく。

 

ツーリング初日は近場でインドの交通環境に慣れた後、徐々に標高を上げていきます。ちなみにインドは日本と同じ左側通行ですが、ドライバーの運転の粗さは想像以上でした。レーの街を抜けてしばらく行くと広大なヒマラヤの大地とその向こうにそびえる急峻な山々が見えてきます。澄み切った青空の下、山肌を縫って走る気持ちのいいワインディングが続きます。標高を上げるにつれ空高くにあった雲が目線に近くなり、やがて眼下にかすんでいきました。さらに登っていくと路面は荒れ、そこかしこに落石が転がるダート区間へ突入。スタンディングで凸凹のショックを吸収しながら進んでいくと気温もぐんぐんと下がり空気が薄くなるのが分かります。正直、景色を楽しむ余裕はなく、無事に到達することだけを祈りつつアクセルを開け続けました。

自動車が通過可能な世界一標高の高い峠として知られる「カルドゥン・ラ」に到着。周りはちょっとした広場になっていてバイクやクルマで訪れる地元インドの観光客も多い。

 

ふと、突然目の前に記念碑のある広場に出ました。海抜5359m。自動車が通過可能な世界一標高の高い峠として知られる「カルドゥン・ラ」についに到達したのでした。そこで最初に感じたのは「無事に着いた~」という安堵の気持ち。しばらくしてじわじわと感動がこみ上げてきました。一緒に行った仲間とハイタッチで喜びを分かち合いますが、はしゃぎすぎると途端に息が苦しくなります。酸素濃度は地上の2分の1程度と危険なレベルとのことで、スタッフの指示に従い15分で“世界最高の峠”を後にしたのでした。

いたる所で山からの雪解け水が道路を横切って流れていく。ヒマラヤでは河渡りは日常茶飯事だ。

 

旅の後半はさらにヒマラヤの奥地へと入っていきます。巨大な岩盤がそびえるヌブラ渓谷からパンゴン湖まで移動。ルートの一部が川の氾濫で通行止めになったため、「ワリ・ラ」、「チャン・ラ」と5000m超級の2つの峠を超えていくルートに変更されました。

このクラスの標高になると7000m級の山々が低く見えるのですが、ふと今いる地べたが高高度にあるためと気づきます。富士山より高い場所に水をたたえる巨大湖や地平線まで続くダートなど次々に現れるシュールな光景に脳の理解がついていけない感じ。ヒマラヤの凄すぎる絶景の中に身を置くと、景色の美しさより己の小ささに怖気づいてしまう。ただただ畏怖しかありません。

一歩踏み出す勇気があれば成せるバイク旅

だいたい数十キロ走ると小さな街があり雑貨屋を兼ねた簡単な食堂がある。ヒマラヤのオアシスだ。

現地でポピュラーな「マギー」はインスタントラーメンを砕いてお湯でふやかしたような感じでなかなかイケる。ランチは毎日コレを食べ続けた。

 

向こうでの生活も貴重な体験でした。旅の出発点であるレーのホテルは先進国並みに快適でしたが、ツーリング中はほとんどが標高4000mを超える場所でのテント泊。食事は毎回カレー風味ですが美味しく食べられました。ただ、夜は気温0℃近くまで下がるし息切れするので熟睡はできませんし、トイレは一応水洗でもシャワーはなく、支給されるバケツ半分のお湯が風呂代わりだったのはキツかったですね。それでも、月明かりに照らされた湖畔で満点の星を眺めながら眠りにつく贅沢さに比べれば、些細なことに思えてきました。

破傷風、腸チフス、狂犬病、A型肝炎などのワクチン注射の他、高山病の薬や抗生剤、胃腸薬などを海外渡航者向け専門クリニックでたんまり処方してもらった。

 

一日中バイクに乗って移動し飯を食って寝る。そんな遊牧民のようなバイク旅を続けたツーリング最後の晩。ずっと気になっていた悪い予感が的中してしまいました。頭痛とめまいとともに咳が止まらなくなり、たまらず同行しているドクターに診察してもらったところ、高山病の初期症状とのこと。血中酸素飽和度も60%台に落ち込んでいたので、急きょ酸素吸入とステロイド注射を打ってもらい、朝までに少し回復したのでツーリングに復帰。皆と一緒に完走できたのは幸いでした。

砂漠のような大地の中にフラットダートがどこまでも続く。まさにオフロード天国だ。

 

また、道中はオフロード区間もけっこう長く、パンクしたり岩にヒットしてホイールを歪めたりなどのトラブルも少なくないですが、そんなときも同行するREのスタッフが即座に対応してくれます。こうした万全のサポート体制があってこそ、ちょっとハードルが高いと思えるヒマラヤツーリングにも挑戦できるのだと思いました。あとは、ある程度のライディングスキルと環境の変化に順応できる精神と肉体のタフさ、そして一歩踏み出す勇気さえあれば実現できると思います。

RE社では来年以降もヒマラヤツーリングを企画するそうなので、興味のある方は以下サイトをチェックしてみてください。

毎朝、出発前にはロイヤルエンフィールド社のスタッフから入念なブリーフィングがある。すべて英語だがRE日本総輸入販売元のPCIの鈴木氏が通訳してくれたので安心。

「Moto Himalaya 2022」参加メンバーだが、日本のジャーナリストやツアー会社の関係者の他、韓国やタイやインドネシアからもメディアが参加した。

 

ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
http://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/showroom/

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