「ホッピングマシンとバイクのサスの共通点」

バイクはライダーが乗ることでバイクとして成り立つ乗り物です。もっともライダーが乗らなきゃ運転できないのですが、そんなことを言っているのではありません。人体が一体になることで、バイクは本来の機能を発揮できるものなのです。

最近はあまり見かけなくなりましたが、子供のスポーツ玩具であるホッピングをご存知でしょうか。正式にはポゴ・スティックと呼ばれるもので、上下動できる棒に人が乗り、ジャップを繰り返すことできます。子供用の入門用から、トランポリンみたいに大きくジャップして妙技を披露するスポーツ用のものまであるのですが、ここでは普通の入門用に注目してみましょう。

ポゴ・スティックにはスプリングが備わっていて、上下動に反発を加えることができるのですが、そのスプリングによる固有振動数は2.5Hz程度なのだそうです。人が乗ったポゴ・スティックは1秒間に2.5回伸縮を繰り返せるようになっているのです。

また、人間が軽く跳躍するとき、その固有振動数は2.3Hz程度だといいます。人間には、1秒間に2.3回跳躍を繰り返すリズムが備わっているということです。つまり、人間の生体リズムに合わせて軽く跳躍すれば、ポゴ・スティックと人間が共振し、無理なくホッピングし続けていくことができるというわけです。

さて、バイクのサスペンションですが、固有振動数は実はその辺りにあります。ソフトなバネでゆったりと姿勢変化する街乗りバイクとハードなモトGPマシンでは、固有振動数も別次元だと思われるかもしれませんが、さほど変わりません。バネをハードにして固有振動数が上がっても、減衰力でその動きを抑えれば固有振動数は下がりますから、大差ないのです。

でないと、どちらもライダーが乗って自然な感覚でライディングをすることはできません。その辺はファミリーカーとスポーツカーでは固有振動数が2倍ほど異なる四輪車とは根本的に違うのです。

「コーナリングにおいても人体の特性は大きく関わっている」

人が速足で気持ち良く歩くとき、その歩数は1秒間に3.4歩なのだそうです。のんびり歩くときは2歩程度だし、トップクラスの競歩だと4.5歩以上の歩数を維持していますが、毎秒3.4歩を持続するのは体力も要りそうで、瞬間的な急ぎ足と考えたほうがよさそうですが‥‥。

左右1歩づつ、都合2歩で、身体の運動は1サイクルをこなすことになります。つまり、歩行では1.7Hzというリズムをもっていることになります。これは1サイクルに0.6秒足らずということになります。

この1サイクルの運動を野球のピッチングに当て嵌めると、前足の踏み込みからリリースまでになりますし、ゴルフスイングだとダウンスイング開始からインパクトが相当します。これらの所要時間は0.6秒足らずなのです。

これはコーナリングだと、イン足荷重してからグイっと寝かし込むまでの時間に相当します。普段は無意識にそうしたタイミングに対処できていても、ちょっとした失敗で冷や汗を掻くこともあるわけで、生体リズムをないがしろにしてはいけないのです。

また、バイクが高速で揺れ出す現象を経験された方もおられるかもしれません。慣れればどうってことはないのなら、腰から体幹部がしなるような動きとシンクロするように感じられたことでしょう。

実は、人体は横方向にしなる運動に対して3Hzの固有振動を持っています。身体をリラックスさせることでバイクを安定させることができる反面、ライダーが乗っていることでバイクは不安定にもなるのです。

ロボットにバイクを操縦させてGPライダーを凌駕する走りを可能にすると豪語したメーカーがありましたが、ロボットに人体と同じ運動の自由度と柔軟性がない限り、それは無理な話なのです。

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