38年前の仕事にケチ付けられるとは‥‥

 読み捨てならない記事を発見しました。

 1985年型のTZ250に試乗したら、「乗るのがとても難しい。乗りにくい、というか毎回同じように走らせることができないシビアさで、その操作はとても繊細」というのです。
 まあ、現在の完成したマシンからすれば進化途上の昔のレーサーなんてそんなものでしょうが、’85 TZ250の開発ライダーを務めた当の本人からすれば心外で、ましてやジャーナリストの同業者の意見だけに、ここでちょっと書きたくなってしまいました。

 

 YPVS付きのTZ250は1981年の登場(8月の菅生でのデビューレースで優勝したのは私でした)で、1984年型でディメンジョンが見直されました。そして、エンジンをピストンバルブからリードバルブとし、フロントを18インチから17インチとする1985年型を担当させてもらったのが私だったのです。


フロントを17インチ化した1985年型TZ250

 

 はっきり言って85年型は、84年型よりも全てに渡って乗りやすいはずです。特に、エンジンはリードバルブ化で2~3000rpm程度はパワーバンドが広がり、シビアさが解消されていました。実際、ヤマハコースの250cc車のベストタイムも私自身で更新。それに最も貢献しているのが、中速域でワイドレンジ化されたトルクバンドだったと思います。

 

ハンドリングについて糟野雅治さんにボロクソに言われたけど

 1985年になって市販。鈴鹿で初走行したライダーの先輩であるカスノモーターサイクルの大将、糟野雅治さんに呼び止められました。「おい、和歌山。この操安、何や。間違うとる。第一、面白うないわ」。いかにも糟野さんらしいコメントに、私はその真意をすぐ察しました。

 

 1985年型は、フロントの17インチ化に合わせ、フォークオフセットを47mmから43mmとして内向性のバランスを取り、前輪の小径化による車高変化に対してはリヤを下げることで対処しました。
 1984年型ですと、高めの車高と大きめのフォークオフセットによって、進入でのキレのある荷重コントロールが決まれば、舵角を入れてスパッとコーナーに進入でき、ある意味、ヤマハらしいマニアックなハンドリングでした。でも、85年型は穏やかなローリングに対して、リニアに接地感が高まってくる寛容さを狙いました。糟野さんからはボロカスでも、トータルマッチングを考えると、あれしかなかったと思っています。

 

 リヤを下げたことには、もう一つ理由がありました。1984年型のディメンジョン変更で、リヤ上がりになり、ピボット位置がかなり高く(私の見方では適正値よりも8mm高い)、コーナーへの突っ込みでのギヤダウンでリヤの接地状態と姿勢変化が安定しなかったので、それを少しでも補正したかったのです(レポーターの小川勤さんが同じように走らせることができないというのはそのことか)。
 また、ピボットブラケットを剛性アップ、リーンの前後バランスを改善し、トラクションもいくらか安定するようにしたものです。

 

正直を言うと、当時も問題だらけだった

 こんな具合に改良を施したものの、タイヤ性能の向上とともに(当時は時期的にラジアル化の前夜)、車体には限界が来ていました。ですから、小川さんが現在の視点で書いたことも分からないわけではありません。

 これをいかに改良すべきか、それは私が当時のノートに書きなぐった通りです。そして、私が書いたアイデアスケッチをもとに設計屋さんが図面化してくれたのが、1986年型のアルミフレームTZだったのです(私はその開発には関わっていませんが)。

 


アルミフレームを採用した1986年型のTZ250

 

 ともかく、バイクの今日への進化の過程に関われたが幸いと、今更のように実感してしまう私です。そして、小川さんの「これを乗りこなすとは、当時のライダーは凄い」とのコメントを、皮肉としてではなく、素直に受け止めることにしたいと思います。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    小川氏は根本健門下生。故に根本氏の提唱する乗り方をしたのでしょう。
    あの乗り方は正直、レーサーには合わない乗り方。それであの批評、ちゃんちゃらおかしいです。

  2. いしかわ/いしかわ より:

    その辺のライダー100人に84でも85でも乗ってみて感想を言ってもらえば総評としては良いのでわないかと考えます。
    今の公道市販車と比べたら99%は「非常に乗りにくい」と言うことになるのでわないかと思います。
    一人の意見に対してどうこう言うつもりはありませんが、いつの時代も開発チームの苦労が形になったものですので、どうしてこうなっているのか?なぜこうなったのか?を思い巡らせてみてはいかがでしょうか?

  3. CRUSH より:

    和歌山さん、オトナ気ない。(笑)

    絶対値評価で85型TZが現代のバイクより乗りやすいはずないですよ。

    同じ時代のRSやKRとの相対値評価でどうか?
    それも「乗りやすいかどうか」ではなくてタイムがでるかどうかでのみ評価すべき工業製品ですから。

    85型TZは、やられメカでしたよね。
    HONDAがアルミフレームRSを、プロトタイプではなく市販レーサーとして展開し始めてたのに鉄フレーム。
    なおかつダブルタイトルを狙うフレディスペンサーは、ワークスのRS250RWでミシュランラジアルをトライ。
    カルロスラバードをもってしても惨敗。

    でも全日本最終戦筑波で、たしか藤本が
    「史上初の59秒台」
    だとか、ゼロ戦の63型みたいな最後のキラメキがあったと思いますけどね。

    某編集長が個人所有されてたような。
    個人的にも、床の間に1台ほしいデス。

  4. のぶさん より:

    79から86年式TZを乗っていた者です。和歌山さんコメントを読んで感銘を受け投稿しました。万年ノービスだった私とって85年式はクランクリードバルブやYPVSの形状変更により劇的にコントロールしやすくなったエンジンで またフロントホイールの17インチ化とフロントブレーキのブレンボタイプ形状変更による強化にてコーナー侵入時からコントロールしやすくなりエンジンのトルク増大による恩恵と相まってコーナー侵入から脱出まで大きく改善されました。私はスポーツ走行は主に筑波だったので特に85年式の進化を感じました。それにTZ進化において85年式あたりからライディングスタイル変化しロードレース界のレベルアップに大きく貢献していったととも思います。余談ですが今日のMotoGp見ていると開発ライダーの重要性を改めて感じます。今のヤマハにはペドロサと契約したらと言いたいです。

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