
新しいモトGPマシンは車高調整機構を活用する方向に進化している
今年もモトGPが開幕。マレーシアとインドネシアでのシーズン前テストで、昨シーズンにも増してマシンとライダーが拮抗していたのですが、私はマシンの走りにこれまでとは違うものを感じていました。あくまでも私の主観ですが、昨年までよりもホールショットディバイス、ライドハイトアジャスターといった車高調整機構を有効に活用している印象を受けたのです。
ホールショットディバイスは2019年にドゥカティが投入、スタート時にリヤの車高を下げ、重心を低くして加速力を高めようとするもので、翌20年には全てのマシンが、リヤまたはフロント、あるいは両方を低くものが採用していました。
そして、20年にはドゥカティが、コーナーからの立ち上がりでマシンを安定させ、トラクションを高めるために、リヤを低くするライドハイトアジャスターを投入、昨21年には全てのマシンがそれを採用するに至っていました。
そして今シーズン、スタート時もコーナー立ち上がり時も、これまでよりも車高が大胆に変化しているかのようです。そればかりか、低い車高でサスが大きく沈んだ状況を踏まえ、タイヤとのクリアランスを確保できるように、車体デザインにも手が入れられていると思えるほどです。
まず、写真1はドゥカティがスタートテストをしているところです。まるでドラッグレースマシンのように前後の車高が低くなっています。写真2はコーナーの立ち上がりで、ライドハイトアジャスターがフロントにも新投入されたみたいで、通常の走行シーンとしては不自然なぐらいです。写真3は同じドゥカでもコーナーもライダーも異なりますが、こちらはライドハイトアジャスターが効いていない状態と思われ、違いは明らかです。
【写真1】ドゥカティのスタートテスト。前後の車高が非常に低くなっています。
【写真2】コーナー立ち上がり。フロントの車高が不自然なほど。
【写真3】ライドハイドアジャスターが無効の状態と思われ、その違いは歴然。
写真4はスズキのスタートで、リヤのみが大きく沈んでいます。写真5の通常時と比べれば、違いは明らかです。写真6はホンダの立ち上がり時で、写真7のコーナリング時よりもリヤが沈んでいます。写真はないのですが、ホンダのホールショットディバイスは前後とも大きく沈ませているようです。ヤマハも写真8の立ち上がりでは、写真9のコーナリング時よりもリヤが大きく沈んでいます。
【写真4】スズキのスタート。リヤだけが大きく沈んでいます。
【写真5】スズキの通常走行時シーン。
【写真6】ホンダの立ち上がり。コーナリング時よりもリヤが沈んでいます。
【写真7】ホンダのコーナリングシーン。
【写真8】ヤマハの立ち上がりシーン。こちらも例外ではなくリヤが沈んでいます。
【写真9】ヤマハのコーナリングシーン。
この車高調整機構は市販車にこそ有効かも
サスペンションへの電子制御はレギュレーションで禁止されていますから、ライダーは走りながらこれらをハンドル部でレバー操作しています。ライダーも大変です。
でも、状況に合わせて電子制御すれば、モトGPマシンのハードを生かして、多くのバイクをもっと公道に即したものにできるのではないかと思ってしまいます。
そもそも、近年のレーシングマシンや市販スーパースポーツの車高が高くなっていったのは、コーナーでの運動性能を高めるためでした。でも、加速時は低いほうがいいとモトGPが証明しています。ひょっとすると、ブレーキング時も低いほうがいいかもしれません。言うまでもなく、停止時も低いほうがいいです。デゥアルパーパス系なら、ラフロードで高くても、ストリートで低くするのもいいでしょう。
車速や加減速Gに加え、上下方向のGの変化から路面状況を検知して、車高を最適化する。そんなことを妄想してしまったのです。
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なんか
走行中のライドハイドアジャスターは
2023年あたりから禁止って聞いた。🐕
昔乗ってたレンジローバーみたいやなぁ。