
1990年代に国内外のロードレースでその名を轟かせた青木三兄弟の次男、青木拓磨氏。全日本で王座に輝いた後、世界グランプリの500ccクラスにステップアップし、これからという時に1998年のテスト中の事故で下半身の自由が効かない身体になってしまいました。
その後4輪レースへ転向し、最近ではル・マン24時間耐久レースにも参戦。また、ハンドシフトのバイクでサーキット走行を楽しむなど、2輪での活躍も再び注目されています。この連載では、青木拓磨さんの今でも溢れ続けるモータースポーツへの情熱を語ってもらいます!
「TAKUMA RACING ACADEMY」って何?
今回は前回触れさせていただいた「TAKUMA RACING ACADEMY」について、もっと詳しく解説したいと思います。まずこの「TAKUMA RACING ACADEMY」は何なのかと言いますと、熊本県内で展開するレーシングライダー育成機関となります。
僕は常々からレーシングライダーが速くなるために最も必要なのは練習回数だと感じていました。速くなるライダーとそうでないライダーとの境目は「常にバイクに乗っているかどうか」、そこに尽きると思っていたのです。これはレースに限らず、ツーリングメインの一般ライダーでも愛車に毎日乗っているか否かで走りがまったく違うものになるのは皆さんにも想像できることと思います。僕自身も子供の頃は学校から帰ってくると裏にあるわずか10数m四方の田んぼで毎日バイクを乗り回していました。しかしながら、今ではなかなかそうしたレース練習のための環境を個人で揃えるのは難しいというのが現状でしょう。
本格的にコースを使って練習しようとすると、何日も前からスケジュールを調整してマシンや装備もすべて自前で用意する必要があります。そうした部分を解決した本格的なレーシングスクールも鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎで開講されていますが、ごく少数の限られた人たちしかカバーできていないですし、受講費用はもちろんのことライダーがまだ子供だとサーキットまでは親御さんが送迎しなければならないなど、いろんな意味で家族全体での大きな負担が要求されてしまいます。
そこまでやっても走れるのは月に数回というのでは、せっかく身体が覚えたことも次の練習までには鈍ってしまうわけで非常にもったいないなと忸怩たる思いを感じていました。それに速いライダーに育つのにある意味で才能より必要な「情熱」があるのに、せっかくバイクやレースに興味が持てても親御さんが共働きで協力できる時間が無いなど環境やきっかけに恵まれていない子供たちがきっと多いはずなんです。
そこで、もっと気軽にそれこそ放課後に塾に通うような感覚で子供たちが毎日でも訪れられる練習場があったらいいなと考えていました。理想を言うと、自転車に乗って身一つでそこに訪れればバイクやコースがあり、切磋琢磨できる仲間や頼りになる先輩や大人がいて、伸び伸びと走り回ることができる…。そんなこと日本では夢物語にすぎないと思っていたのですが、実現できる土壌があったんですねえ、ホンダ国内唯一のバイク工場が存在する「熊本県」という土地に!!

陽が暮れるまで、いや陽が落ちてるのにギリギリまで練習できちゃいます。
すでに合志市をはじめとする3か所にフラットトラックコースが整備ずみで、これを核として普段は活動することになります。フラットトラックはダートですが、MotoGPライダーたちも採り入れているようにマシンコントロールを覚える練習としては何より最適なのは皆さんもうご存じの通り。それにホンダ熊本工場の隣にあるHSR九州からも協力してもらえることになりましたので、時にはそのオンロードコースやオフロードコースを使った実戦本番に向けた練習も可能となります。
整備が進んでいる我々の練習コース。ダートや芝のフラットトラックで練習します。
「先生」はいません!
気になる講師陣としては…、実は「先生」と呼ぶような存在やきっちりしたカリキュラムというのはあえて置きません! というのも、このアカデミーでもうひとつ狙っているのは速いライダーとなるために必要な要素のひとつである「自発的に考えて行動すること」を覚えてもらいたいからなんです。物事を覚えるときは目的意識を持ったときが最も吸収できる瞬間です。
仲間たちと一緒に走ることで「なぜ、あの人は速く走れるのか」「何が自分と違うのか」といったことを、自分の力で見つけ出してほしいのです。それは1人1人で様々に違っていることでしょう。このあたりを通り一遍のカリキュラムにしてしまうと、伸びる人と伸びない人の差が出てきてしまうと思うのです。もちろん、一緒にいる大人たちはどうすればいいのか聞かれればそれに対して答えてくれるかたちにはなっています。でも、そのためにまずは「今の自分に一番必要なのは何か」ということをしっかり見つけ出してほしいのです。それに人に物事を尋ねるにしても、まずはお願いの仕方であるとか礼儀についてとかも覚えなければなりません。
僕らのアカデミーではバイクを通じて、そうした社会性も身に着けられる場にしようと考えています。それにできることなら、アカデミーに通う先輩・後輩や仲間たち同士でも互いに教え合えられるような場になってほしいというのが僕の希望です。誰かに教えるという行為は、自分の頭でしっかり理解していないとできません。実はこの「教えること」自体も双方にとっては練習の大きな一環であり、先生役となる側も理解を深めることでより上達につながっていけると思うのです。
速くなるためにはどうしたらいいか、子供が自発的に考えて大人に頼り、大人はそれに応えることが大事だと思うのです。
目指しているのはバイクの「寺子屋」なんです
まあいろいろと難しそうですが、簡単に言うと昔で言うところの「寺子屋」みたいな感覚でしょうか。皆でワイワイ楽しく時には厳しくやりながら、速くなるという目標に大人から子供達まで一緒になって向かっていく場所だと思ってください。だから、対象としている年齢も子供だけとは限りません。現在予定しているのはジュニアクラスが8歳~25歳まで、一般クラスは8歳~青天井と幅広くしています。
名乗りを挙げてくれている参加予定の子たちも、まったくのバイク未経験から既に全日本に参戦しているライダーまで様々。「オジサン」だってもっとバイクを頑張りたいと思ったら仲間となる資格は十分です。アカデミーの正式な募集開始はこの2月に始め、開講するのは4月からを予定。詳細が決まりましたらHPに掲載しますので、興味があったらぜひチェックしてみてください!
バイクが好きで速くなりたいなら、初心者でも大人でも我々の仲間です。
<参考URL>
takuma-gp
国際スポーツアビリティ協会
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