【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

師走に入り本格的な冬がやってきた。ライダーにとって厳しい季節の到来だ。今回は冬を安全に乗り切るためのポイントについて考えたい。

停車時はバイクを日向に置く

気温が下がる冬場にまず注意したいのがタイヤ。低温になるほどタイヤのグリップ性能も低下してくる。冬でもある程度の時間走行していれば自然とタイヤも温まってくるが、夏に比べると3倍以上は時間がかかると思ったほうがいい。自分の経験上、気温が10℃を下回ると急激にグリップ性能が低下してくる。
走り出しは時間をかけてタイヤを温めながら徐々に加速やブレーキを強めていき、コーナーでも徐々にバンク角を増やしつつ接地感を探っていく。周囲の安全をよく確認しつつ、少し強めにリアブレーキをかけてみるといい。簡単にロックしたり、ABSが入る場合はタイヤが冷えていると思っていい。
温まるにつれて路面としっかり摩擦している手応え(接地感とも言う)が出てくればひと安心だ。

特にタイヤのサイド部分はなかなか温まらない。慣れた交差点などでも急に倒し込むとバンク角は浅くても滑りやすいので注意が必要だ。また、停車時も冬はなるべく日向にバイクを置きたい。試しに素手で触ってみれば分かるが、日向と日陰ではタイヤの温まり具合はまるで違うはず。冬場は5分程度の休憩でもタイヤが冷えてしまうので、再スタートするときは最初からウォームアップするつもりで慎重に走り始めたい。

ツーリング日和の早朝に注意

参考までにだいたい3℃以下になると路面凍結の恐れが出てくる。東京などの都市部でも気温より路面温度が低くなることがあるので注意が必要だ。冬になると「放射冷却」という言葉をよく耳にすると思うが、これは地表の熱が奪われて極端に冷え込む現象のこと。「天気が良く」「乾燥した」「風のない夜間」に起こりやすい。
つまり、ツーリング日和の早朝が最も路面が冷えて危険な状況ということも心に留めておいてほしい。

また、ツーリングに行くときなどは時間帯と場所にも注意が必要。特に山など標高が高い場所では朝夕は極端に気温が下がる場合が多い。ワインディングも日向は大丈夫でも日陰は凍結している場合がある。また、トンネル出入口付近や橋の上、陽が当たらない場所などは凍結しやすい。特に冷たい風が吹き抜ける高架橋は要注意で、実際に毎年のように事故が起きている。
凍結路では少しの斜面でも身動きがとれなくなる。危なそうなときは迷わず迂回すべきだし、本当に寒い日は無理してバイクに乗らない勇気も必要。その意味では、事前に行先の天候などを調べておくことが大事だ。

バイクも冬セッティングにしよう

バイクも冬仕様に調整したい。といっても難しいことではなく、簡単にできることだけでいい。まずはタイヤの空気圧。気温が下がると空気が収縮してタイヤの空気圧も下がってくる。何もしなくても一か月に0.1kgf/cm²程度は自然に減少するが、冬場はさらに下がっているはずだ。
空気圧はハンドリングにも影響するのでしっかり管理したいところ。夏と冬とで空気圧を変える必要はなく、車両メーカーの指定空気圧に合わせるのが基本だ。

冬はサスペンションの動きも鈍くなりがちだ。気温低下によりサスペンション内で減衰力を生み出すダンパーオイルも固くなるためで、結果として路面追従性や乗り心地も悪くなる。「夏場に比べてなんか乗り味が固いなぁ」と思ったら、ダンパー調整機能付きであれば前後サスとも1段階程度下げてみるといいだろう。
ちなみにスプリングの初期荷重を調整するプリロードは気温とは関係ないので変える必要はない。

最後に操作系について。厚めのウインターグローブを着けているとゴワゴワしてブレーキやクラッチのレバー操作がしづらくなる場合がある。握ったときにレバーが遠く感じる場合、調整機能があれば近めにセットしてみよう。あるいはグリップヒーターか電熱グローブがあればそれがベスト。操作系は安全に直結する部分なのでチェックしてみてほしい。

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