10月6日、カワサキモータースが都内で事業方針説明会を実施し、今後の経営方針を示すとともに開発中の電動車両を展示した。そのうち一台は初公開のハイブリッドスポーツバイクの研究車で、他にも2019年のミラノショーで発表した完全電動モデルも国内初公開。

カワサキモータースの伊藤浩社長は、2025年までに10機種の電動バイクを発売し、2035年までに日本を含む先進国向けバイクの主要機種の電動化を完了すると宣言。その切り札がハイブリッドだと思われるが、既存のモデルの延長線上で開発できるのがメリットになりそうだ。

高速はエンジン、街中では電動、山道ではハイブリッドと使い分ける3モード搭載

バイクではクルマほどEV化が進んでおらず、特にエンジン×電動を動力源とするハイブリッドはホンダのPCX e:HEVのみしかラインナップがなく、それもモーターのみでは走行できないマイルドハイブリッドとなる。

今回、カワサキが公開した「HEV二輪研究車」は、伊藤社長自身がストロングハイブリッドと明言しており、市販されれば二輪では世界初の事例となるだろう。カワサキが開発しているハイブリッド機構は、「エンジンのみ」、「電動のみ」、「エンジン+モーター」の3つのモードが切り替え可能。

パワーを必要とする高速道路ではエンジンのみで走行し、エンジンが規制されると想定される市街地では電動のみで走行し、郊外のワインディングロードではエンジンとモーターを組み合わせたパワフルなハイブリッドモードで走行するといった使い方を想定している。

▲カワサキが公開したHEV研究車。HEVはハイブリッドエレクトリックビークル(Hybrid Electric Vehicle)の略。排気量は未発表でサイズ的には250~650ほど。フレームは専用設計となっている。

▲カワサキが公開した動画の1コマ。PCXハイブリッドではスタート時にモーターがアシストするだけでこのような切り替えはできない。街中を電動走行することで、燃費も向上するはずだ。

エンジン背後にモーターをドッキング! MT車として楽しめて変速は自動化も視野

カワサキが公開したHEV二輪研究車は公式に市販予定とされている。もちろんこのNinjaシリーズのようなモデルが出てくる訳ではなく、公開されたのはあくまでも研究車だが、カワサキハイブリッドバイクの方向性が示されたものと考えていいだろう。

カワサキはハイブリッドバイクもあくまでファンモデルとして考えており、バイクの構成自体を様変わりさせるものではない。既存モデルの範囲内で、リチウムイオン(と思われる)バッテリーを搭載し、変速機もエンジン車と同構造としている。

そして、この研究車がユニークなのはシフトチェンジを自動化しているところ。ペダルとクラッチ操作を電動メカで作動させているという。あくまで研究の一環で搭載しているもので、市販車で実装するかは決まっていないというが、研究が進めばホンダのDCTのようにオートマ化もできそうだ。

▲カワサキのハイブリッドバイクは、チェーン駆動とする車体の構成は既存モデルと変わらない。エンジンのシリンダー後方に大きなモーターが配置されている。

▲クラッチカバーとその右下部分周辺にクラッチ操作を自動化する装置があるのが分かる。モーターの動力はクラッチハウジングのギアから伝達されているようだ。

▲ジェネレーターカバーの上にあるのが変速機を自動化する装置で、モーターがシフトシャフトを動かしている。下段のクーラーはモーターと繋がっており水冷式になっているようだ。

▲シートの下にはリチウムイオン(と思われる)ハイブリッドモーターを駆動するためのバッテリースペースがある。セルスターターなどエンジン用の鉛バッテリーも別途搭載している。

▲ニンジャ250/400系のハンドルまわりに上級モデルの液晶メーターやスイッチなどいろいろなモデルパーツが使われているコックピット。どれが変速用のボタンかは教えてもらえなかった。

他にも、2019年のミラノショーで公開した完全電動の研究車も展示されており、EVも市販が予定されている。こだわったのは、変速機付きというところ。この研究車には4速マニュアルミッションが搭載されており、操作する楽しみが損われないよう配慮して開発が進められていることが分かる。

さらに、カワサキでは水素を燃料とするエンジンの開発も進められており、脱炭素化が推進されていってもライダーが楽しめるバイクを開発しようという意欲が感じられる。

▲旧ニンジャ250ベースのEV研究車。4速ミッションを搭載しているのがポイント。航続距離は100kmと公表されている。

▲水素エンジンに必要な直噴技術を研究する「二輪用直噴エンジン」も公開。H2のユニットを改造してシリンダーに燃料を直接噴射している。まだ水素で動かしてる訳ではないようだ。

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