
【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】
いいバイクがあればヨーロッパは遠くない、と思っていた
バイクジャーナリストを生業とするようになって30余年。私はこれまで海外試乗をメインに活動してきました。平均月1回、海外に出掛け、かつては1週間ごとに海外と日本を行き来するほどで、日本で予定がなければそのまま知人宅に滞在して、次の試乗会へ出掛けて行ったことも少なくありませんでした。
その間、様々な事情から活動が制限される事態に何度か直面してきましたが、今回のコロナ禍は、私のキャリアにとどめを刺ささんがばかりでした。
海外に出掛けられず、様々な事情も加わり、もう潮時かの思いに駆られたことも事実です。また、慢性時差ボケからも解放されたことで、健康のためにもう海外出張は止めようとさえ思ったものです。
なのに、どうでしょう。3週間ほど前に、KTMジャパンから今回のRC390の試乗の話をもらうや、二つ返事でOKと言っていたのです。そればかりか、また再び、やる気がみなぎってきたではありませんか。
でも、今回、ヨーロッパは遠かった
以前は、チケットを手配して、パスポートを持って空港へ行けば、そのまま多くの国に出掛けられました。多発テロ以降、アメリカ入国はちょっと面倒になりましたが、それでもヨーロッパは問題ありませんでした。
今回も、そんな頭でいたのですが、それはとんでもない間違いでした。
渡欧時も再入国時もWeb上での詳しい旅程申請(航空機の席番号も含む)が必要です。再入国後は2週間自宅隔離せねばならず、自宅への帰路に公共交通機関を使うこともできません。自宅隔離中の行動管理アプリなどもスマホにダウンロードしなくてはならなりません。KTMジャパンの増岡さんが休日返上で作ってくれた指南書があっても、もう気が滅入ってしまいます。
そればかりか、出発前日、とんでもない事態が発生。ワクチン接種証明書があればEUに入国できるはずなのに、明日からPCR検査の陰性証明も必要だというではありませんか。私が住むのは浜松。もう時間的に無理かとの想いも過る中、増岡さんが羽田から遠くないところに17時までPCR検査を受け付け、翌朝9時に証明書を発行してくれるところを見つけてくれたのです。
それはお昼過ぎのことで、大慌てで自家用車(帰路は公共交通機関を使えない)で出発。極難を脱しました。
まだ、話は終わりません。その日からワクチン接種証明書がないと欧州側で5日間隔離になるそうで、今回、同行のもう一人ジャーナリストがチェックインで渡航を断念せねばならない事態になったのです。
渡欧と新型RC390とのご対面にはちょっと感激
結局、単身イタリアのモデナにやって来ることになり、新型RC390を見たときは、初めての海外試乗を思い出す感激です。
前置きが長くなりましたが、そのRC390は、燃料タンク後部カバーとシートカウルが一体で、カウリングも2層構造になっており、スタイリングが斬新です。
フレームも明らかに別物で、リヤフレームが別体です。390デュークは2017年型で別体になっていましたが、それに倣ったのではなく、全くの新設計で、ピボット部からリヤフレームとリヤショック支持点へのメンバーが湾曲しています。
さらに、フレーム形態とフロントのディスク回りに注目すると、大胆な軽量化が施されていると思わせます。パワーでは2気筒勢に対し不利でも、単気筒のトルクフルさと軽量な車体によって、トルクウェイトレシオが軽減。トルクを生かしての機敏なハンドリングに磨きが掛かっていると予感させます。
実際にどうなのか、正式発表と明日の試乗を待つとしましょう。
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