【和歌山利宏MT-07購入】私が愛車に新型MT-09ではなく、YZF-R7でもなくMT-07を選んだ理由とは

【和歌山利宏：モーターサイクルジャーナリスト】

▲向かって右側は、直々にMT-07を納車してくれた45年来の親友、阿部三吉さん。第1～5回鈴鹿8耐でのペアライダーである。

エクセレントなMT-09に対しMT-07はベーシックスポーツ

前回のコラム『新しいMT-09に乗った。メッチャいいぞ！』に書いたように、私は試乗会で乗ったMT-09をいたく気に入りました。

実はちょうどその頃、あれこれと愛車候補を物色しており、あのコラム原稿を書いた時点で、MT-09 SPに気持ちはほぼ固まっていました。ところが、先ほど我が家にやって来たのはMT-07だったのです。

では、そのとき私は試乗したMT-07に、どんな印象を持ったのでしょうか。
エクセレントスポーツを思わせるMT-09に対し、MT-07はあくまでもベーシックスポーツとの印象で、特にサスペンションは性能的に街乗りバイクを思わせました。街乗りからツーリング、はたまたサーキット走行も楽しめそうなのですが、最先端技術による洗練さからは程遠いものがあります。

もし、MT-09並みのサスが装備されていたら、ブレーキングでの急激な姿勢変化が抑えられる（MT-07のフロントフォークは、乗った印象からするとカートリッジ式ではなく昔ながらのフリーバルブ式だと思いました）とともに、しっとりとした接地感が得られ、ワンランク上の走りを楽しめると思ったものです。

もちろん、それはヤマハの手抜きではありません。高水準サスへの要求はさほどなく、むしろ低価格であることを望む人のほうが多いという実情に合わせているのです。

▲2021年新型MT-07。エンジンは吸排気やECUを変更して排ガス規制に対応しヘッドライトまわりを中心にスタイルを刷新しています。価格は81万4000円です。

▲新開発の2into1エキパイ・マフラー一体型の排気系は極太形状。最高出力は従来型の73PS/ 9000rpm→73PS/8750rpmとより低回転数でパワーを出しています。

▲足回りは従来型から不変。サスペンションはフロント正立フォーク＆リアは水平マウントのリンク式モノサスです。リアのみ伸び側の減衰力が調整できます。

選択の決め手になったのは、現実に合っていたということ

物足りないとの印象もあったMT-07に気持ちが変わっていくプロセスは意外でした。それは自分にとって興味深く、楽しくもありました。
MT-09を手に入れることをイメージしたとき、ワクワクし、気分が高揚した自分がいました。ただ、その一方で、プレッシャーが感じられたことも否めませんでした。

それが、MT-07の場合をイメージすると、ホッとした気分にさせられるではありませんか。等身大で付き合えるということのようです。
確かに、強くフロントブレーキを掛けたときフロントが急激に沈みがちなのですが、それも考え方によっては、楽しみの幅を広げていることになります。繊細なブレーキ操作に加え、体幹部の柔軟性を生かして減速Gをじんわりと荷重することで、かなりのところ対処できます。
見方によると近年の高性能バイクは、ラフな走り、下手な操作をも許容するように進歩していることになりますが、MT-07は基本を安全に習得しやすいことにもなります。

また、バンクセンサーはかなり長めで、バンク角の限界を早めに検知できる設定を感じます。身近なところからトライしていけそうなことも好印象です。
さらに決定的だったのが、レース活動を共にした45年来の友人の一言でした。「MT-09みたいな面白いバイクに普段乗ったら、もう危ないぞ。歳を考えてみい」かくして、愛車はMT-07になったというわけでした。

▲MT-07を買うなら新型YZF-R7という選択肢もありましたけど、前傾のライディングポジションや835mmのシート高（MT-07は805mm）から見送りました。

▲新型YZF-R7は、フロントに倒立フォークを採用しているので、MT-09並みのブレーキングが得られそうなので、スポーツ志向の方にはいいと思います。

▲購入を検討した新型MT-09 SPは、中高速での複合コーナーでの意思に忠実にラインをトレースできるコーナリングの正確性には素晴らしいの一言。究極のストリートスポーツです。

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