
【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】
Noslisuはユニークな電動三輪自転車
カワサキから電動三輪自転車Noslisu(ノスリス)が登場しました。カワサキからと言っても、一般的なプロジェクトではなく、川崎重工の社内公募制度であるビジネスアイディアチャレンジの第一号としてから生まれてきた製品で、クラウドファンディングサイトで販売されます。
こうした社内公募制度は、アイデアとスタッフの熱意を発掘することを目的に、多くの企業で採択されています。この場合はプロジェクトリーダーを務める石井宏志さん(写真右で車両に跨る)が、「家族のところに駆け付けたいときに一人で気軽に乗れる乗り物がない」との高齢者の声を聞きつけたことをきっかけに公募に至ったそうです。
そしてテストライダーの東條憲一郎さん(写真中央)、設計担当の中島健志さん(写真左)らスタッフが加わり、開発が始まったそうです。彼らはカワサキでバイクの開発に関わってきた経験も豊かで、狙いが高齢者が気楽に乗れることであっても、Noslisuはバイク乗りにも共感できる乗り物であるのです。
狙いが具現化されているNoslisu
Noslisuは走り始めたら自転車感覚そのものです。とは言え、停止時に倒れずに自立できるし、使用中に倒れそうになっても、車体の傾きが20度になると持ち堪えてくれるので、安心感は高いです。
ただ、バンク角20度は決して大きくなく、ハンドル切れ角も一般的な自転車よりも小さいので、機動性を楽しむには物足りないことも否めません。が、これも「高齢者が気楽に乗れる」という狙いを考えれば納得です。
それでも、決してやわな乗り物というわけではありません。積載量20kgを積んでも安定感があります。ブレーキもしっかり効き、ジャックナイフに対してもガチっと車体が受け止めてくれます。
あれっ? 電動アシストモデルのほうがハンドリングがいい?
Noslisuには、電動アシストモデルとスロットルレバー操作だけで走れるフル電動モデルがあります。
キャリアが前上部にある電動アシストモデルは、前輪のトレッドが600mmでハンドル切れ角40度ですが、フル電動モデルはキャリアを左右輪の間に置くこともあり、トレッド750mmでハンドル切れ角は30度になっています。
楽にスピードを出せるのはフル電動モデルながら、そうしたディメンジョンの違いにより、電動アシストモデルのほうが機動性に勝ります。いや、機動性ばかりか、ハンドリングも電動アシストモデルのほうが良好に感じます。
と、そのことをテストライダーの東條さんに告げると意外な答えが返ってきました。「いやね、私たちも意外だったのですが、たとえ車体とディメンジョンが同じでも、フル電動で乗るよりも、電動アシスト状態のほうがハンドリングはいいんですよ。」
下半身に適度の緊張状態を保っていたほうが、マシンの状態が伝わりやすくて対処もしやすく、また下半身でトラクションを感じることでコントロール性が高まるということなのでしょう。
ライディングにとって大切ことを、改めて教えられたような気がしたのでした。
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