【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】
悩まされてきた目の老化
私は今、20数年ぶりに眼鏡なしでパソコンに向かい、この原稿を書こうとしています。スクールやこのコラムでライディングでの目の使い方の重要性を説きながら、実はここ数年来、白内障に悩まされてきたのですから、医者の不養生みたいなもんです。そこで、年明けに手術を受け、お蔭様で回復を実感しているところなのです。
白内障というのは、目の水晶体が濁り視界が霞む病気です。手術では水晶体を人工レンズに換えるのですが、もっとバイクに乗ってアクティブに過ごしたいため、レンズに保険の利かない3焦点レンズを選択しました。おかげで、遠くのものがハッキリ見える一方で、至近距離にもピントを合わせることができるようになりました。
蘇った3-Dの世界
私は、数年前に兆候に気付き、3年ほど前からはサーキット走行で高速コーナーのラインや、ストレートからの突っ込みでの寝かし込みポイントがはっきり把握できなくなっておりました。白内障が特にひどい左目は霞むばかりか、視力が0.2~0.3程度になっていることが、その原因だと思っておりました。
確かにそのことも一因に違いありませんが、私は最初にその左側の手術を受けて間もなく、それだけではなかったことに気付かされました。
どうやら私はさほど白内障が進行していなかった右目だけでモノを見る癖が付いていたようです。人は両目の視線の角度の違いによって立体感や遠近感を把握しているため、片眼に依存することで遠近感が失われていたのです。
新しく見る視界は、それはもう感動的でした。この世界が、いかに立体感と造形美に富んでいるのか改めて知ることになったのです。
その遠近感が距離感と速度感を生む
そのおかげで、街中をクルマで走っていても、両側に並ぶ建物の遠近感が明確で、次の交差点までの距離や、速度感がはっきり分かるではありませんか。無性にサーキットを走りたくなってくるほどです。
そう言えば、私はこの1年程は、カーナビが装備されているのも関わらず、道を間違うことがあったのですが、それもこのせいだったのかもしれません。よく高齢者の運転するクルマがオロオロしているのに出くわすことがありますが、これも視力の衰えが一因なのではと思ってしまいます。
安全に楽しくバイクを走らせるには、目のメンテナンスにも気を配ったほうがいいと思い、アドバイスさせていただく次第です。
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