【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

右直事故、また右直事故……。ここ一か月で何回耳にしたことだろう。毎日のように繰り返される悲劇。バイク(直進)とクルマ(右折)による死亡事故がこれだけ立て続けに起こっているとなると、もうこれは根本的に何かがおかしいと思わざるを得ない。

1日当たり120人が「右直」に遭遇している

4輪側の見落としが多い。気づかなかった(前方不注意)。いけると思った(速度誤認・判断の誤り)。事故を起こした4輪のドライバーの多くが同じことを言うが、注意力散漫ではないか。認知・判断・操作のどれもができていない。というか、真剣に事故を起こしてはならない、事故を回避しようと思っているのだろうか。

ヒヤリ・ハットの法則として知られる「ハインリッヒの法則」というものがある。1つの重大事故の陰には数多くの潜在的なトラブルが潜んでいるという考え方で、その割合は1(重大事故):30(軽微な事故):300(ニアミス)というもの。
2019年の全国の交通事故死者数は3215人。その中で2輪車が510人でともに減少傾向にあるが、それでも1日当たり約1.4人のライダーが亡くなっている。さらに2輪死亡事故の約3割が「右直」事故というデータに基づくと1日当たり約0.4人が「右直」事故の犠牲になっている。
ということは、これをハインリッヒの法則に当てはめると1日当たり12人が「右直」でケガを負い、120人が「うわっ!」と肝を冷やすようなヒヤリ・ハットに遭遇している計算になる。つまり毎日、死亡事故につながりかねないニアミスが相当数起こっていると考えていい。
ニュースで取り上げられる右直事故はまさに氷山の一角でしかないのだ。

2020年現在、全国の運転免許保有者数は約8200万人(※1)いて、自動車保有台数もトータルで8000万台強(※2)もあることを考えれば意外と少ない数字と見ることもできそうだが、逆に言えば「右直」事故を撲滅することは容易ではないことも分かる。

出典:※1 運転免許統計(警察庁)
※2 (一社)自動車検査登録情報協会

「交差」するから事故になるのでは

では、我々ライダーはどうしたらよいのか……。
交差点では速度を抑えて、いつでもブレーキをかけられるよう準備しつつ通過する。右折待ちのドライバーの目を見てこちらを認知しているか確認する。
前走車の真後ろに付かず右折車から見えるようなポジションで走る等々、右直事故を回避するためのサバイバルテクニックはいろいろあるが、すべてを駆使したとしても完全に事故を回避できるとは限らない。それは直進するバイクと右折車は必ずどこかで「交差」するからだ。

右直事故は日本の道路交通の構造上、必然的に起こるものだと言っていい。こうした事故を防止するために赤信号+右折用の矢印信号を表示している交差点も増えてきた。だが、それでも信号が守られなければ意味がないし、その意味では直進バイクが信号無視しているケースもあるとは思う。
もちろん、「右直」は交差点だけで起こるわけではないが。

直新車と右折車が物理的に交差しないようにするためには、ラウンドアバウトやロータリー式と呼ばれる環状交差点にするしかない。今までも何回かコラムに書いてきたが、海外、特に欧州では環状交差点を取り入れているところが多い。

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これは人とクルマの流れを分ける分離交通の考え方が欧州では古くから浸透していることもあるが、クルマ社会の歴史が浅い日本では道路を整備する前にクルマ社会が到来してしまい、都市部でもなかなか分離ができていない現状がある。
ともあれ、環状交差点を導入すると進入速度の低下や交差ポイントの減少によって重大事故も減少するという諸外国のデータもあるようだ。とはいえ、日本全国の主要交差点を今からすべて環状交差点に置き換えていくとなると、何兆円の予算が必要で何十年かかるか分からず現実的ではない。

ITCを活用した安全運転支援システムへの期待

ではどうするか……。
自分はITC(IT+コミュニケーション)テクノロジーしかないと思う。ご存じのように4輪には自動ブレーキや衝突低減ブレーキが普通に搭載される時代になってきた。前走車が停止していれば、アクセルを踏んでも発進しない仕組みもできる。

レーダーを使って前走車との距離を最適化しながら追走するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や衝突予知警報なども、いよいよ2輪にも搭載されようとしている。
こうした先進安全支援システムを駆使すれば、右折待ちの4輪は交差点に近付いてくる直進バイクを検知して警告したり、発進を遅らせたりすることもできるはず。
また、2輪は右折待ちのクルマを検知して動き出す兆候があればブザーで警告、人間にはできない早業で減速したりブレーキをかけたりするアシスト機構を備えることも可能なはずだ。

現に筆者は昨年、ボッシュ社が開発中だった2輪向け先進安全運転支援システムの試験車に試乗し、そのテクノロジーの一端を肌で感じることができた。そして、来年からは量産市販車の一部にも導入が始まることになっている。きっとおそらく、その延長線上に「右直事故防止システム」があるはずだ。

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いくら安全運転啓蒙やトレーニングを行っても人間の能力には限界があるし、交通工学によって道路そのものを改良することが物理的に難しいのであれば、あとはテクノロジーによって変えていくいくしかない。ラッキーなことに、それこそが今を生きる現代人の得意な分野でもあるのだ。

「右直事故」は人の命がかかっている問題だ。できることがあるならば、「なるはや」で進めていくべきと思う。
年の瀬を迎える12月は1年で最も交通事故が増えるシーズンだ。バイクもクルマも今一度気を引き締めて、心に余裕を持った運転を心がけていきたいものだ。

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