【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

最高速315km/h、BMWモトラッド初のMモデル

BMWから究極のスーパースポーツ「M 1000 RR」が登場した。

M 1000 RRは現行スポーツモデルの最高峰であるS 1000 RRをベースに、スーパーバイク世界選手権(SBK)を戦うレーシングマシンで培われた技術とノウハウが注がれた最強バージョンであり、BMWの2輪として初の「M」モデルとなる。

2019モデルで全面刷新された新型S1000RRのシフトカム搭載の水冷直4エンジンは最高出力212ps/14,500rpmへと7psアップし中速トルクも向上。レブリミットも500rpm上乗せされ1万5,100回転へ。
各部の軽量化により車重も192kgへと8kgシェイプされ、最新のエアロフォルムをまとった結果、315km/h(サーキット用ギアレシオ)のトップスピードと0-100km/h加速3.1秒というクラス最強レベルのパフォーマンスを実現した。

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エンジンも車体も専用設計のまさに耐久レーサー

具体的な改良点として、エンジンはピストンを2本リング仕様の鍛造製とし、軽量チタンコンロッドとロッカーアームを組み込み、シリンダーヘッドもウォーターラインを見直しつつベアリング・ハウジングを強化。吸排気系もさらなる改良が施された。
チェーンとスプロケットは専用品とするほか、ブレーキシステムもレース対応の専用設計でブレーキパッドも数種類から選択可能だ。

また、車体のジオメトリーもサーキット走行用に最適化され、ホイールベース拡大によって過度な車体の姿勢変化を抑えつつ快適性をも実現。スイングアームピボットも新設計として調整幅を拡大。
後輪アクスルやリアブレーキもクイックリリース機構を採用し、ピットでの素早い交換作業を可能にするなど、まさに耐久レーサーさながらの仕様となっている。

16kgのダウンフォースを生むMウイングレット

そして、外観上でひと際目を引くのがカーボン製のMウイングレットだ。最大で16.3kgものダウンフォースを作り出すことで、加速でのフロント浮き上がりを抑制するとともに旋回中におけるフロントの接地力とブレーキング安定性を向上。
キャノピータイプのハイ・ウインドスクリーンが空気を切り裂いて最大効率の加速へと導くという。

M1000RRには以上のベーシックバージョンの他、さらにレーストラック専用パーツとして、Mマシンドパーツとカーボンパーツからなる「Mコンペティション・パッケージ」も用意されている。
ちなみにサーキット専用モデルとしてはカーボンフレーム&ホイールを採用した215ps仕様の「HP4 RACE」があるが、ストリート仕様としてはM1000RRが頂上モデルとして位置付けられることになった。

狙いはスーパーバイク世界選手権での勝利

さてM1000RRの狙いは、ずばりスーパーバイク世界選手権(SBK)での勝利だろう。市販車ベースの改造マシンで競われるSBKでは、ベースマシンの性能がそのままレースの成績に直結すると言われる。

そのため、各メーカーとも特別に強化された限定バージョンである、いわゆるホモロゲーションモデル(市販車して承認されたモデル)を投入してくることが多い。例えばドゥカティのパニガーレV4RやカワサキのZX-10RRなどだ。そして、その狙いを明確に示しているのが今回新たに導入されたMウイングレットである。

流行りのウイングもまずはホモロゲが必要

MotoGPでは数年前から羽のようなウイングレットが流行り出し、試行錯誤とレギュレーションによる変遷を経て現在のようなダクトウイングやブリスターカウルに落ち着いてきているが、SBKでは今まさにエアロ戦争が起きている。
ドゥカティが巨大なウイングを付けたパニガーレV4Rで2019シーズンに勝ちまくると、今シーズンからホンダもダクトウイング採用のCBR1000RR-Rを投入するなどウイングマシンの優位性が明らかになってきた。

しかしながら、改造範囲が厳しく規制されているSBKではベースとなる市販車のフォルムを変えることができず、ウイングレットを付けたければホモロゲモデルに最初から装着されている必要があるからだ。

また逆に言えば、SBKレーサーそのものの走りの性能と迫力のエアロフォルムは熱心なスポーツユーザーのハートをワシ掴みにし、M1000RRのレースでの活躍によってBMWはマーケティング面でも勝利を収めることになるはずだ。

気になる価格と発売時期については未定だが、おそらくはS1000RRとHP4 RACEの中間的なプライスになるのでは。続報を期待したい。

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