【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

青梅市で起きたシカとバイクの事故

ニュース報道などで見た人も多いと思うが、7月19日午後2時45分頃、東京都青梅市の都道で、バイクを運転中の男性(51)が転倒し、反対車線のガードレールに頭を強打して亡くなる事故があった。

路上には野生とみられるシカ(体長約1m)が死んでいて、地元警察ではバイクとシカと衝突したとみて調査している。現場は山林に囲まれた片側1車線の直線道路だそうだ。何ともやるせない不運な事故である。

野生動物との接触事故は頻繁に起きている

野生動物との衝突事故は日本全国でけっこう頻繁に起きていて、運が悪いと死亡事故にもつながる。JAFによれば、NEXCO東日本管内の高速道路だけで年間約18,600件の野生動物の死亡事故が発生しているそうだ。※出典: JAFクルマ何でも質問箱 

万に一つだろうと楽観視せずに、「そういうこともあり得る」と常に頭の片隅に入れておく必要があるだろう。
野生動物がよく出没する場所には、動物のマークを描いた「動物注意」の黄色い警戒標識が設置してあることが多い。元々はその動物たちの住処や通り道だったところに人間の都合で道路が建設されたわけで、動物たちは何も悪くないのだが、かといって運を天に任せていてもお互いのためにならない。

ここは人間のほうが何か対策を考えなければならないだろう。道路管理者がやるべきことは話が大きくなるので、ひとまず置いておくとして、事故防止のために自分たちに何ができるのか。

夕暮れ時の峠道でイノシシと接触したが…

事故の総数としてはタヌキや鳥など小動物が多いようだが、中にはクマやシカなどの大型動物もいて注意が必要だ。体重が数百kgになる個体もあり、万が一衝突すれば大きなダメージを負うことになる。

自分もかつて山中のワインディングでイノシシに遭遇したことがあった。新型スーパースポーツの撮影のために山中のワインディングを走行していたときのこと。
コーナーを抜けて直線を加速している瞬間、山の斜面を転がり落ちるようにイノシシの一団が飛び出してきたのだ。そんなことが起きるとは想定もしていなかったので、妙に自分の動きがスローモーションに感じ、反応できるまでに時間がかかったことを覚えている。
咄嗟に急制動しつつ、その勢いでジャックナイフになりかけた状態でフロントに一頭が衝突してきたが、ハンドルをとられながらも何とか転倒は免れたのはラッキーだった。たぶん直線だったから助かったのだと思う。

【参考】
【ケニー佐川 コラム】野生動物との交通事故を避ける秘策

衝突寸前まで全力ブレーキで速度を落とす

イノシシの一件のときも夕暮れ時だったが、朝夕の時間帯に野生動物と遭遇することが多いようだ。可能であれば、危ない時間帯は避けつつ、「動物注意」の警戒標識を見たらまず速度を抑えて注意深く走るのが賢明だろう。

それでも、不意に避けられない遭遇が起きることがあるかも。その場合は、ニーグリップで車体をしっかりホールドしつつ、バイクが最も安定する垂直状態をキープして全力ブレーキで減速するしかないだろう。まさに急制動である。ABS装着車であれば作動させてしまったほうが確実。
何故ならパニック時に入力をコントロールすることなどまず不可能だからだ。同じ理由で回避制動なども難しい。動物の習性として、恐怖を感じると道の真ん中で止まってしまったり、急に方向転換したりと動きが読めないからだ。

まずは防衛運転、シミュレーションも大事だ

だからまずは車体を立てて全力で減速すること。最終的に避けきれなくても運動エネルギーを極力削ぐことで、双方のダメージを低減できる。ちなみに歩行者とクルマとの交通事故でも、30km/h以下になると死亡率がぐっと下がるというデータがあるらしい。

その上で、もし避けきれなければヒットする瞬間はニーグリップをしっかり決めて、ハンドルを両腕でガチッと押さえたほうがいいだろう。おそらく、それぐらいしかできないはずだ。
危険予知と防衛運転が事故を未然に防ぐための基本ではある。ただ、万が一の場合のことを考えてシミュレーションしておくことは大事だ。

この記事にいいねする


コメントを残す