
【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】
▲Z H2 フレーム
ハンドリングにはフレームの影響が大きい
バイクのハンドリングには様々な要素が絡み合っています。サスペンション、車体ディメンジョン、車体剛性、ライポジ、タイヤはもちろん、空力やエンジン特性もハンドリングを一変させます。
ただ、今では、オンロードバイクにとって依存度の高いタイヤを始め、全ての要素が技術の進歩に伴い、それぞれのカテゴリー向きに高水準化され、特定の要素を取り上げて依存度を問うことは難しくなっています。その意味で、現在のバイクのハンドリングの特徴を最も際立たせる要素としてフレームを挙げることができます。
そのフレームは現在、ツインスパーであろうと、トラスタイプ、バックボーンであろうと、エンジンを剛性部材として抱え込むダイヤモンドタイプが主流です。
そうした形態は軽量化とシンプル化に有利ですが、実はハンドリング面でも具合がいいのです。エンジンを剛性部材とすることで、フレームに捩じり変形の軸はヘッドパイプとピボットを結ぶセンターに近付きます。また、エンジンをボルト接合するので、剛接合ではなく、変形に伴うフリクションが生じ、減衰効果が生じることもあるかもしれません。ともかく、ヨレても煽られず、しなやかかつ安定性に富むハンドリングが実現されてきたのです。
技術の進化を捉えたH2のトラスフレーム
ニンジャH2シリーズの成功には、あのトラスフレームが大きく貢献していると思います。フレームにスペースを取らせず車体をコンパクト化、そのしなりによってコントロール性とフィードバック性が得られているからです。
とは言え、パイプをトラス状に組めばいいというものではありません。写真のようにトラス構造メンバーの集合部にエンジンマウント点が設けられています。私はその点をアンカーポイントと呼んでいます。支持点、基準点という意味があり、土台にアンカー(錨)を置くとのイメージがあるからです。エンジンを支持するアンカーポイントを基準に車体の剛性分布が理想化されているというわけです。
ツインスパータイプも00年代後半以降は、ヘッドパイプから伸びたエンジンハンガーでエンジン前上部を懸架しており、これもアンカーポイントに相当すると考えます。
アンカーポイント思想を初展開したのは、ビモータの創始者の一人でもあるマッシモ・タンブリーニ氏です。彼によるビモータDB1(1985)、ドゥカティ916(1994)、MVアグスタF4(1999)を見ればそのことは明らかです。
H2シリーズ3モデルのフレームは全て専用
H2シリーズにはスーパースポーツのH2、スポーツツアラーのH2 SX、先日加わったネイキッドのZ H2の3バージョンがあり、フレームはそれぞれが専用設計品です。
H2に対しH2 SXのフレームは、前部にメンバーが追加され、また一体のリヤフレームによって後部の変形が抑えられ、剛性が高められています。H2は要らぬ挙動をフレームのしなりで吸収するような外乱吸収性に富みますが、H2 SXではタンデムや荷物搭載時でもしなりを抑えた重厚感のある落ち着きを狙っているのでしょう。
そして、Z H2では構成が大きく変化しています。トラス構造が簡素化され、パイプ径も太くなっているみたいです。また、アンカーポイントが気筒の前下側に移動するとともに、アンカーポイントが2つあるかのようでもあります。さらにピボット部は左右のプレートで固められています。
エンジンの剛性部材としての役割を高め、フィーリングもトラスタイプらしい個性が期待できます。実際に乗っても、Z_H2には高剛性感と力強い手応え、そしてダイレクト感が伝わってくるのです。
これらには、狙ったキャラクターを具現化しようとのカワサキの拘りが感じられるのです。
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