【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ティムール・サルダホフ氏が語った本音

前回のコラムにおいてブルターレ1000について書きましたが、試乗後、MVアグスタ社本社に戻った私は、CEOのティムール・サルダホフ氏にインタビューする機会に恵まれました。

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そのブルターレは、エキサイティングさを追求するのではなく、コントロール下に置けることを主眼にした造り込みが印象的だったわけですが、そのことについて話を向けると、意外な答えが返ってきました。
「我々、バイクのメーカー側はもっと一般的なライダーのことを理解しなくてはいけません。だって、100ps以上もあって軽量なバイクって、ビギナーにとっては怖いだけでしょ。危険なくらいです。」

自称“普通のライダー”であるという彼ならではの本音とも言えますが、これは私にとっても我が意を得たりです。確かに、これまで留まることを知らない高性能化とそれを操れることに感動しながらも、これは限られた人だけのものと思わずにいられなかったことも事実です。つまり、限られた人だけに目を向けて、昨今のバイクは進化してきたと言えなくもないのです。

とは言っても、高性能化という進化を逆戻しできないことも事実であり、それに対する回答がブルターレ1000だと言えましょうか。

バイクとは、足代わりに使えて、気が向けばどこでも遊べるべきもの

▲2019EICMA

私は常々、バイクとは足代わりに使えて、それでいて気が向けばどこでも遊べるものでないといけないと申しております。それがバイクの面白さの原点であり、私にとっても、そうやって楽しむことが出発点だったからです。

でも、昨今は、マニアックな限られた人だけに目を向けたことで、そうした原点がお座なりになり、バイク離れを加速させているという面もあったのではないでしょうか。でも、多くの人がマニアックさの追求に疲弊していのが現状かもしれません。

もちろん、欧州メーカーは、インドや東南アジア生産で魅力的でリーズナブルな小中排気量モデルを送り出し、若い人たちがもっとバイクに親しめるように努力しています。サルダホフさんによると、MVアグスタも中国生産の300、400、600ccのパラレルツインモデルを開発中とのことでした。

世界中のどのメーカーも、バイクの理想社会の構築に向けて動いていることを実感させられるのでした。

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