【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】
モータースポーツとは人とマシンの調和度を競うもの
モータースポーツは、マシンという道具を使って競われるスポーツです。ですからレースでの速さ、強さは、マシンの性能とライダーの能力によって決まってくるとされます。
でも、レースが高水準であるほど、そんな単純な図式は当て嵌まらなくなります。ライダーの特徴とマシンの特質を調和させることによって、ライバルに対する弱点を補い、長所を強さとして生かすことができるようになります。人とマシンは別々の要素ではなく、それらを調和させ、マンマシン系としての能力を競うのが本来のモータースポーツなのかもしれません。
近年のモトGPの進化が物語る接近戦
昨今のモトGPでは、かつての250ccクラスのような接戦が展開されます。マシンもライダーも高水準化されていることは確かながら、マシンが良くなるほどにタイム差が小さくなることも事実です。つまり、どのメーカーも技術的に差がなくなっているということです。
ECUとそのソフトに加え、昨2019年からは慣性計測ユニット(IMU)も、マグネッティ・マレリ製に統一されています。タイヤも2016年からはミシュランのワンメイクで、かつてのようなワークス専用のスペシャルはなく、平等にタイヤをチョイスできるようになっていることも、こうした性能格差の減少に拍車を掛けています。
また、シーズン中に使用できるエンジンの数が制限され、エンジンの仕様変更も禁止されています。一般化したウィングなどの空力パーツも変更できるのはシーズン中に1回とされますし、ブレーキもディスク径などがしっかり定められています。
こうしたレギュレーションもモータースポーツとしての魅力を高めていると思います。
レギュレーションの厳格化は関わる全ての人たちにとってもハッピー?
かつてワークスマシンには、企業機密の集合体であるかのようなイメージがあったと思います。だから、隠すことを美徳とする風潮も一部にありました。
シーズンオフになると、各メーカーのモトGPマシンの詳細や、エンジニアのインタビューが専門誌の誌面を賑わせています。そこでのエンジニア達の受け答えを見ていても、実に気持ちよく語ってくれています。
仕様がレギュレーションで詳しく定められ、共通化された電子制御にもPCでのチェックが入る(当然ながら他チームに漏洩されることはない)のですから、かつてよりも雰囲気をオープンに感じます。
また、チームからのレースリリースにあるライダーのコメントからも、彼らが抱えている問題を察することができます。モトGPがプロフェッショナルスポーツとして、いいかたちで進化していることを実感できたというわけです。というわけで、今年もまもなく開幕するモトGPが楽しみです。
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◆MotoGPニュース
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