●パワー5 装着車。今回はスズキ・カタナをメインに前作パワーRS と同時比較。MV アグスタ・ブルターレ800 でもテストした。
【ビッグマシン・ゼロ:文-大屋雄一 写真-ミシュラン】
サーキット走行も楽しめるワイドレンジなハイグリップタイヤとして人気を博したミシュランのパワーRS。フルモデルチェンジを機に、ストリートに特化したパワー5と、サーキットでの性能をより高めたパワーGPへと分流した。ミシュランが想定する一般公道とサーキットの使用比率は、RSが85%:15%だったのに対し、パワー5は一般公道が100%、パワーGPは50%:50%であり、この数字からそれぞれの狙いがおよそ理解できよう。
目次
よりナチュラルな操安性ウェット路面も恐くない
▲パワーRS 装着車
前作のパワーRSは、ハイグリップ系でありながら暖まりが早く、軽快でスポーティなハンドリングを特徴としている。今回はグリップのいいテストコースで試乗したのだが、'17年の登場時に公道用スポーツラジアルとして最高水準にあると絶賛されただけに、全く不満がない。唯一、わずかにステアリングが切れるのが早いような印象を受けたのだが、これは試乗車であるスズキ・カタナの特性かもしれない。
▲先代 POWER RS。パイロットパワー3の後継として'17 年に登場したのがパワーRS だ。一般公道だけでなくサーキット走行も視野に入れて設計された。
そう思いながら新作のパワー5を履いた試乗車に乗り換えると、表現が過ぎるように思われるだろうが、全くの別物だった。まず感じるのは乗り心地の良さで、明らかにしなやかで接地感が高い。パワーRSはリヤにACT+という独自のテクノロジーを採用していたが、パワー5ではシンプルなシングルカーカスに。これは技術的な後退ではなく、さまざまな技術の中から最適な組み合わせを選んでいるだけに過ぎない。事実、このしなやかさはツーリングに最適と思うほどだ。
そして、ハンドリングもパワー5は進化している。前後のタイヤが絶妙にシンクロしながらバンクするので、印象としては極めてナチュラル。ブレーキングを残しながらのコーナー進入で狙ったラインをトレースしやすく、しかも深く寝かせている際の安定性が高い上に、そこからスロットルを大きく開けたときのリヤからのインフォメーションが潤沢など、全ての印象がパワーRSを上回っている。なお、ドライグリップに関しては、リヤのショルダーのコンパウンドがブラックカーボンからシリカに変更されているが、ケーシングのしなやかさがそれを補っているのか、差異は感じられなかった。
さらにウェット性能もいい。土砂降りの中でABSやトラコンの介入レベルを試してみたが、一般公道を常識的なペースで走る分には滑り出す気配すらなく、一昔前のハイグリップ系のネガなイメージは一切なし。スポーツモデルはもちろん、ツアラーにも対応できるほどワイドレンジなタイヤだ。
4種の新タイヤでシリーズ化!「POWER 5」
●税込価格:オープン
パワーRS がモデルチェンジし、公道向けのパワー5と、サーキット性能を追求したパワーGP の2種類に分流。さらにサーキット指向の新作が2種登場し、全4種で「パワーエクスペリエンスシリーズ」を新たに呼称する。
2つに分流!NEW POWER EXPERIENCE SERIES
■POWER 5
前後ともボイド比(シーランド)比を増やしたり、リヤのコンパウンドをオールシリカにするなどして、ハイグリップ系で犠牲になりがちな公道でのウェット性能を追求する。
■POWER GP
パワーRSからトレッドパターンを引き継ぎつつ内部構造とコンパウンドを一新。公道性能を犠牲にせずサーキットでの能力を向上。
■POWER CUP 2
’15年に発売となったパワーカップEVO の後継で、前後ともコンパウンドにブラックカーボンを採用。ドライ路面での性能を向上。
■POWER SLICK 2
サーキット専用の完全なスリックタイヤだが、内部構造およびコンパウンドのレイアウトなど基本的な技術はシリーズ共通である。
基本構造は4銘柄とも同一
パワーRS ではカーカスをビードで折り返す独自のACT+をリヤに採用していたが、新シリーズでは全4種類が簡素なシングルカーカスに。しなやかさと軽量化を同時に達成した。
※公道走行不可
溝増加&全面シリカでウェット性能を高める
トレッド面における溝の比率を表すボイド比は、パワーRS の前後6.5%から前後とも11%にアップ。リヤのショルダーのコンパウンドはブラックカーボン→シリカへ。
①視覚的な安心感と速度感を演出
トレッドショルダーのディンプル模様とスクエアパターンの細溝は、ウェット時にライダーに対して視覚的に安心感を与えるもの。
②ベルベット調で上質感プラス
光を吸収してグレーとブラックのコントラストを演出するベルベットテクノロジーを採用。サイドウォールに上質感がプラスされた。
先代と比較!「POWER CUP 2」
さらに攻めやすく進化!サーキット指向の「カップ2」
▲パワーカップ2 装着車
こちらはZX-10R でテスト。前作のパワーカップEVO はリヤが先に寝る印象で、それに追従するフロントの挙動がややシビアだったのに対し、新作のパワーカップ2は前後のシンクロ率が高まり、安心してもうひと寝かせが可能に。さらにケーシングがソフトになったので、しなやかに路面を捉えつつも鋭く旋回するイメージが強まった。
▲パワーカップEVO 装着車
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