【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

開発において技術者は目標を数値化するのが常

新登場のダンロップのロードスマートIVは、大変にユニークな取り組みから生まれたタイヤだと思います。実際にもそのことが見事なまでに走りに反映されているのです。

では、どうしてそれがユニークだと言えるのでしょうか。
ここで製品開発におけるプロセスについて考えてみます。まず、最初にコンセプトが立案されます。それは製品の基本的な方向性みたいなもので、バイクやタイヤで言えば、どんな人がどのように楽しめるものかということです。

次に、それを実現するための開発目標が明確にされていきます。そして、それは性質などが抽象的に表現される定性目標と、数値化された定量目標に分けて考えることができます。工業製品であるバイクやタイヤでは、定性目標が最初に設定されても、それを技術的に実現するために、技術者は諸項目における数値目標に展開していくのが、一般的なプロセスかと思います。

定性と定量の比重はカテゴリーやキャラクター次第

半世紀近く前なら、開発は定量目標さえ決まれば進んだでしょう。早い話、ライバル車の性能を上回れば、魅力ある商品になり得たのです。もちろん、現在だって、レースにも使うスーパースポーツでは、そうした数値目標も大切になります。

ところが、多くのストリートモデルがそうであるように、絶対性能が満足できる水準に達すると、面白さとか楽しみの質が追求されるようになり、開発スタッフがそのイメージを共有することで、定性目標をいかに具現化していくかが問われるようになります。

さて、タイヤですが、やはりタイヤは定量目標の追及によって完成度を高めてきた製品だと言えます。
新タイヤの発表資料では、乗り心地、ハンドリング、安定性、ウェットグリップ、ライフ‥‥などの項目の評点を表したクモの巣(多角形)グラフが、よく紹介されます。そうした評点が大きくなり、ハイグリップタイヤの乗り心地やウェットグリップが、一昔前のツーリングタイヤのそれを上回り、ツーリングタイヤのコーナリング性能が一昔前のハイグリップタイヤのそれを上回るというように、近年のタイヤは進化してきました。

ロードスマートIVは定性目標をタイヤの世界に持ち込んだ

ところが、新しいロードスマートIVでは、「いかにライダーを疲れさせず、快適に走りを楽しむことができるか」がテーマに掲げられ、その目標に向かって作り込みを受けています。もちろん、そのために実現しなければならない定量目標に踏み込んでいることは言うまでもありませんが、狙った走りのイメージなくして、こうしたタイヤはできなかったはずです。

ゆっくり走り出せば、それは明らかです。路面の凹凸がしなやかに吸収され、ハンドルへの衝撃も優しいので、緊張感から解き放たれます。ステアリングが軽快な上に低速でバランスを保つための操作を要求しないので、ホッとさせられます。すると、ホッとさせられたことで、次には楽しもうかという気がもたげ、ワクワクしてくるではありませんか。

連続した高速コーナーでも、ストレスなく道なりに走っていきます。曲がり具合に合わせて上体を寝かし込んでいけばいいのです。曲げようとか、寝かし込もうといった意識も要求されず、リラックス状態を維持できるのです。

このことは、技術的に高次元に進化した今日のタイヤが、走りの世界を表現するアイテムとしての新しい領域に踏み込んだことを物語っていると感じた次第です。

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