
【ビッグマシン・ゼロ:文-中村友彦 写真-真弓悟史】
雰囲気も乗り味もSTDとは別物。ヨシムラパーツを装着したKATANAは、かつてのカタナ好きなら感涙モノ、と言うべき資質を獲得していた。
目次
ヨシムラならではのカタナに対する愛
往年の雰囲気を取り入れていても、かつてのカタナを再現したモデルではない。ただし、ネオクラシックという分野の取り組み方に、絶対的な正解はないのだから、これはこれで大いにアリだろう。それが現行KATANAに対する、僕の率直な印象だ。でもヨシムラのデモ車を試乗している最中、ふと思ったのである。これぞカタナだと。やっぱりカタナは、こうあるべきじゃないかと。
タレ角がイイぞ!ハンドルとミラーで雰囲気が激変!
僕がそう感じた原因には、全高を伸ばしたスクリーンやコンパクトなエーテック製カーボンミラー、バーが後方かつ上方に移動するX-TREADステップなどもあるのだが、最も重要な要素はプロトタイプのハンドルだ。バーハンドルのSTDに対して、単純に、低く、遠く、狭くなっただけではなく、このハンドルはタレ角と絞り角が絶妙なのである。
▲高さを抑えたハンドルとミラーによって、マシンの雰囲気は劇的に変化。取り付け角度も絶妙だ。
その絶妙さを生み出したキーパーソンは、伝説のヨシムラ製コンプリートマシン・刀1135Rの開発にも携わった設計部の川口裕介さんだ。タンクカバーが干渉し、一般的なセパハンが装着できないKATANAのために、川口さんは独特な構造に加え、ハンドルバーの位置を入念に検討。試作品のブラケットはアルミ7075材で、使用した素材よりも削り落とした量のほうが格段に多かったと言う。なお、カタナらしさを追及した結果として、ハンドル切れ角は大幅に減少しているが、この問題には現在開発中のオリジナルタンクカバーで対処予定だ。
▲ハンドル位置は下がっているが、上半身の前傾は特にキツいわけではない。SSとツアラーの中間的なライポジだ。
マシンとの一体感が大幅に向上!
▲ハンドルとステップでライポジを変更したヨシムラKATANAは、どんな場面でもSTDよりマシンとの一体感が濃厚。従来型のカタナに似た雰囲気を獲得している。
さて、前置きが長くなったが、ヨシムラのデモ車の乗り味は、確実にかつてのカタナに近づいていた。まず走り出した瞬間から、コクピットの雰囲気がカタナだと思えるし、高速道路でアクセルをワイドオープンした際の加速感や、峠道で攻めるような走りをしたときの印象もカタナ感が濃厚。どんな場面でもいい意味の緊張感があって、乗り手は加速と減速を積極的に楽しみたくなるのだ。独創的なハンドルに対しては、当初の僕は剛性不足によるたわみを心配していたが、そういった気配は皆無で、むしろSTDより前輪の接地感が明確になっていた。
今回の試乗を通して僕が実感したのは、ヨシムラスタッフの〝カタナ愛〟である。それがあるからこそ、同社のデモ車は、かつてのカタナを彷彿とさせる雰囲気と乗り味を構築できたのだろう。ヨシムラはこの車両を「第一段階」と位置付けており、今後も開発に注力していく方針だという。そのカタナ愛は、今後もさまざまな形で、ヨシムラのKATANA用パーツに注入されていくはずだ。
“カタナ"らしさ重視 ハンドルKIT(開発中)


STDのトップブリッジにブラケットをボルト留めする構造のハンドルKITは、年内発売を目指して開発中。量産型では素材や形状は見直すが、絶妙な“カタナ感"を醸し出すハンドルバー位置やロゴの凸文字(1135Rで用いた手法の再現)は踏襲される予定だ。タンクカバーとの干渉を防ぐため、ハンドル切れ角はハンドルストッパー(上)で規制する。
◆ヨシムラ:ステップKIT X-TREAD(エックストレッド) 商品ページ
他のパーツも続々登場!
■チタンSlip-On B-77サイクロン 政府認証(税込10万7800円)
マニアの間で“バナナ管"と呼ばれるアルミ製マフラーは、'80年代初頭のヨシムラ製カタナレーサーのスタイルを再現。STDと比較すると、音質はまろやか&軽快な印象。
◆ヨシムラ:Slip-On B-77 サイクロン 政府認証 (ヒートガード付属) 商品ページ
■フェンダーレスKIT(税込2万4200円)
商品名はフェンダーレスだが、実際はスイングアームマウントのナンバープレートとウインカーをテールランプ下に移設するキット。ナンバー灯にはLEDを採用する。
■ウィンドアーマーNK(税込3万800円)
スクリーンの形状だけではなく、4本のボルト留め方法やそのピッチもかつてのカタナと同様。15mmの範囲で高さ調整が可能で、全高はSTD+70~85mmとなる。
開発中も多数!
タンクカバーの前や左右アンダーカウルなどのカーボンパーツはエーテック製の試作品。クイックシフターが備わるサブコンのBAZZAZも今後の販売を予定している。
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