【石戸谷蓮:JNCC AA1クラス、JEC 国際A級ライダー】

【プロとアマチュア】、【選手と観客】。どんな競技においても、それぞれの間には一定の境界線が引かれているものです。だからこそ楽しめる、ということが一般的でしょう。

しかし「ハードエンデューロ」に関して言えば、境界線はあるものの、いとも簡単に飛び越えることができてしまう。それが逆に、会場全体の一体感を生み出しているのです。

今回は、そんなハードエンデューロならではの世界観や、「観客として飛び込む」独特な楽しみ方をご紹介します。

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プロとアマチュア

一般的な競技・スポーツでは、実力差によってクラス分けされることが多々あります。お互いの力量が近いほど、より激しい競い合いが楽しめるからですね。二輪レースも同じで、コース分けが行われることさえあります。

一方、ハードエンデューロでは、ライダーの実力がどれほど離れていても、同じ環境のなかで競い合います。もちろん走るコースも一緒。しかし特徴的なのが、「コース内で単独で進めなくなったときに、敵味方関係なく互いに助け合う」、ということ。これがある種、ほかの競技であれば起こりうる、実力差による格差を中和してくれているのです。

このことが、どんなライダーとでも自然とコニュニケーションが生まれ、皆が和気あいあいとした雰囲気で過ごせる要因だと感じています。ハードエンデューロでは、選手間の境界線を簡単に飛び越えることができてしまうのです。

選手と観客

また、観客としても、独特の体験を楽しめるのがハードエンデューロ。僕自身はライダー(選手)ですが、ハードエンデューロは、どんなレベルの方が走っているのを観ても感動を与えてくれます。

トップライダーならば、その高い技術で、人が歩くのも困難な場所を華麗に駆け抜けた瞬間。アマチュアライダーならば、体力がギリギリでも死力を振り絞って、あと1cm進めた瞬間などは、その苦労を間近で眺めていただけに、拍手と歓声がその場を占めます。

また、どんなレベルのライダーであっても超えられないセクションが現れることがあります。スタッフもいない、助け合うライダーもいない。そんな時は観客(ギャラリー)の出番!!

ハードエンデューロには、ライダーを助けることを至極のこととしているスーパーギャラリーが存在します。なんと彼らは、バイクを引っ張るために、カラビナやフックをロープの先端に括りつけて、いつでもライダーを助けられるようにスタンバイしているのです。

日本ではまだ少数ですが、先日行った世界最大のハードエンデューロレース「erzberg rodeo(エルツベルグ ロデオ)」では、そのような観客が無数にいて、非常に助けられました。ライダーにとっては砂漠のオアシス、九死に一生を得るという心境です。

『後ちょっと進めない!!』そんな時には「リタイア」の文字が脳裏をよぎりますが、たまたま居合わせた観客たちのおかげで、そのセクションを通過できたという経験が少なくありません。そんなスーパーギャラリーたちは、どうしてそこまで、身を挺してまでライダーを助けようとするのでしょうか。

僕自身も観客として参加することがありますが、助けたライダーからは、心の底からの『ありがとう』がもらえます。正直なところ、助けるといっても簡単ではなく、むちゃくちゃ疲れるけど、むちゃくちゃ楽しいし、その時間には言葉にできない充実感があります。選手と観客の境界線を簡単に飛び越えてしまうような、この体験が病みつきになるのです。

「全員参加」の感動体験

通常であれば、同じフィールドにいることなどあり得ないような、【プロ・アマチュア/選手・観客】が、同じ場所で同じ感動を共有できる。そんな体験ができることが、ハードエンデューロの素晴らしい部分なのです。

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