【石戸谷蓮:JNCC AA1クラス、JEC 国際A級ライダー】

前回:オフロードバイクレースの世界-4 ハードエンデューロ

出典:Red Bull

こんにちは、オフロードバイクライダーの石戸谷蓮(いしどや れん)です。

今回は、僕が5年計画で挑戦しているエンデューロレース「Erzberg Rodeo(エルツベルグ ロデオ)」についてです。

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Erzberg Rodeoとは

出典:Red Bull

出場者1,800人。決勝出走500台。コース長35km。完走率2%未満。この物凄い数字は、20年以上に渡って現実に開催されているオフロードバイクレースの数字です。コースもライダーも年々レベルアップしてきているので、その成長速度に負けない速さで、自分も強く・速く・上手くならないとこのレースの完走者にはなれないと感じています。

出典:Red Bull

【予選:タイムアタック】ダートを150km/hの速度で駆け抜ける

このレースはまず予選がありますが、これは純粋なタイムアタック。しかもただのタイムアタックではなく、普段砕石を運ぶ巨大なダンプが走行している作業道をマックス150キロの速度で駆け抜けます。

出典:Red Bull

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路面は固くしまっていて時折、尖った石や段差、水たまりが出てきます。歩いていればなんてことのない路面の凹凸も、ダートで、しかも150キロ近くの速度で走っているととてつもない衝撃に変わるので油断できません。まるで喉元に包丁を突きつけられながらそれに向かっていくような感触で、非常にエキサイティングな環境でタイムアタックを行います。

出典:Red Bull

もちろん、ゆっくり走れば気持ち良い景色と走りやすい路面で爽やかですが、上位を狙うにはちょっと危険地帯に突っ込んでいかないと良い順位は狙えません。

【決勝:目を疑うような難所ルート】一瞬の隙を縫いマシンを前に進める肉弾戦

決勝ではこの予選の順位でスタート列が決まります。一列50台×10列=500台が決勝出走。僕は昨年が204位、今年が167位で予選を通過しました。そのため今年は4列目でのスタート。スタートの段階ですでに前には150台がいるという状態です。

出典:Red Bull

決勝のコースは予選と打って変わって非常に走行困難な場所を走っていきます。
頂点の見えない坂道、ブレーキをかけても止まらない下り坂、信じられない大きさの岩が地面を覆い、連日降り続いた雨で立つこともままならない滑りやすさ。数十、数百のマシンがその場を走り、セクションを走破していきます。

出典:Red Bull

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そのため、コースの至る所で渋滞が発生します。簡単には通れない道へ一気にライダーがなだれ込むため、一人が失敗すると連鎖的にミスが伝播してあっという間に渋滞となります。押し合い、引き合い、一瞬の隙間を縫いマシンを前に進める様子はまさに肉弾戦です。

出典:Red Bull

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しかし、ライバルでもありながらともにコースを走破する仲間でもあるのがハードエンデューロの良いところ。時にはお互いのマシンをヘルプし合いながらセクションを走破していきコースを攻略していきます。

出典:Red Bull

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そもそもバイクで走るのが困難な場所をあえて走るのがこのハードエンデューロなので路面状況が悪化すればどんなに頑張っても進めません。渋滞を潜り抜け、無数の転倒、100kgを超えるマシンを押し切りセクションを抜けていくことを繰り返していくうちに、身体は激しく酷使されていきます。

出典:Red Bull

写真提供元:株式会社アニマルハウス

心拍数は1分間に180回を超え、全身の筋肉は攣ってしまい、レース終盤には握力などほとんど残らないぐらいまで走り切ります。

そんな身体の限界に達しても気持ちが途切れなければまだまだ振り絞れます。
ライダーと肉弾戦を繰り広げ、目を疑うような無数の難所を超え、身体の限界まで絞り切りましたが残念ながら今年は完走には至りませんでした。

この常識外れのレースに対し、僕は5年計画で現在挑戦しております。
今年は2回目の挑戦を終えて課題もまた一段とはっきり見えてきました。

▲石戸谷蓮(写真提供元:株式会社アニマルハウス)

僕が自分に課したリミットまであと3回。この挑戦はまだまだ続きます。
一人の日本人が世界一過酷なレースで戦う様をぜひ見届けてください。
限界・危険・死・恐怖などの言葉が脳裏にちらつきながらも、それと戦い抜いて目標である完走を達成したいと思います。

石戸谷蓮

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