
【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】
XCITING(日本語表記はエキサイティングだが、英語のExcitingに対しEはない)S400の試乗会が、キムコの地元、台湾で開催されました。参加者はアジア、オセアニア地区のジャーナリスト、総勢21名。当地区のほとんどの国からの参加でした。
写真はサーキット走行前の記念撮影で、私と肩を組むのがキムコの副社長レオン・ウー氏です。
海外試乗を4半世紀に渡りこなしながら、前回のコラムの舞台であるタイと言い、今回の台湾と言い、意外に思われるかもしれませんが、私にとっては初訪問です。これは何を意味するのでしょうか。国によって事情は異なりますが、一つには生活の足としてのバイクから脱し、趣味性を求める時代になったということかと思います。
そして、キムコと台湾の元気の良さも印象的でした。台湾でのクルマの流れは、隙あらば前へ前といった30年以上前の日本のようでもありました。全てが右方上がりで人々がアグレッシブに活動していた頃のようで、パワーも感じます。キムコも然りで、30年前のバイクブームだった頃の日本メーカーを思い出した次第でした。
キムコの高水準の造り込みと品質
試乗は、1日目に台中市にあるサーキットで走行、2日目は公道ツーリングです。台湾には富士山よりも高い標高3,952mの玉山があり、標高3,275mまで道路が通っているので、その山岳地帯を走るのです。
KYMCO XCITING S400 和歌山利宏試乗ムービー
あいにく、動画の通り、台湾はもう梅雨入りしたかのような天候。サーキット走行時こそ雨が止んだものの路面は生乾きで、山岳地帯は雨と濃霧の最悪の条件でした。
それでも、エキサイティングS400はサーキット走行を楽しめるだけの、「走り、曲がり、止まる」の高い基本性能を持ち併せていて、そのことで頼もしくツーリングをこなすことができました。すでに昨2018年に欧州には市場投入されていて、販売台数がこのクラスでホンダ、BMWに次いで3位であることにも納得させられます。特に感心させられたのが車体の剛性バランスで、それが旋回性能や安定性に貢献、日本車に負けない造り込みを思わせます。
そう考えたとき、キムコの歴史が頭に過ります。キムコの前身「光陽工業」は1964年にホンダと提携、ホンダ車の生産を開始したことからバイク産業への関りが始まるのですが、そのことでホンダのモノ作りや品質管理を学んだのかもしれません。カワサキのスクーターやBMWスクーターのエンジンを受託生産していることからも、高い技術力を思わせます。
400はスクーターのベストバランス形か
私には、もう一つ、考えさせられたことがありました。
500ccを超えるビッグスクーターでは、その動力性能を生かすために、車体構成がモーターサイクルに近いものとなっています。でも、それは収納スペースを減少させ、オープンレッグ性を阻害することになります。でも、このエキサイティングS400は、十分な動力性能を備えながら、車体構成はスクーターらしいユニットスイング式で、その弊害も感じさせません。
スクーターらしい利便性とスポーツ性能を両立するには、この400ccクラスが絶妙のバランス域にあると思えたのでした。
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