【ビッグマシン・ゼロ:文-中村友彦 写真-山内潤也/ブリヂストン】

SPならではの上質な車体の動きを維持したまま、STDに通じる高揚&爽快感を取り戻している。それがS22を履いたMT-09SPに対する、僕の率直な印象だ。

守備範囲を拡大しながらスポーツ性に磨きをかける

いや、初っ端からわかりづらいことを書いてしまったが、そもそもの話をすると、やんちゃでアグレッシブなSTDのMT-09に対して、前後ショックの高性能化が図られたSPは、真面目なスポーツネイキッド?と言いたくなる特性だったのである。速い遅いで言うなら、確実にSPの方が速く走れるものの、インパクトではSTDに軍配が上がる。でもS22を履いたSPは、速く走れるだけではなく、常用域から高揚&爽快感が味わえるマシンに変貌を遂げていたのだ。

▲近年のスポーツバイクの流行を取り入れる形で、S22はトレッド面にも製品名を表記。もちろん、エッジ部を何度か使えば消える。

もっとも、昨年末に開催されたS22の発表会でかなりの好感触を抱いた僕にとって、この変貌は想定内、と言うより、我が意を得たり!という感じだった。何と言っても先代S21と比較すれば、S22は相当にファンライドな特性だったのだから(ちなみにMT-09とSPの純正タイヤは、S22の先々代に当たるS20)。

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同一機種によるS21/22の比較を主体とした昨年の発表会で、僕が最初に感心したのは、冷間時とウェット路面における安心感の違いだった。万全とは言い難い状況で、直進→旋回に移行する際の接地感は、明らかにS21よりS22のほうが上で、中でも前輪の感触がわかりやすいので、乗り手は早い段階から臆することなく、車体を倒し込むことができる。

ただし本当に驚いたのは、タイヤが温まってからの運動性だった。いい意味でファジーなS21と比較すると、S22はメリハリがハッキリしていて、コーナー進入時には制動力をフルに引き出したくなる安定感、旋回時には自由自在にラインを選べるヒラヒラ感、コーナー脱出時には後輪が駆動力としての存在感を主張する、濃厚なトラクションが味わえる。誤解を恐れずに言うなら、万人が対象だったS21に対して、峠道やサーキットでスポーツライディングを満喫したい人向け、というのがS22に対する印象で、守備範囲を拡大しつつも、Sシリーズの新作はスポーツ性に大幅に磨きをかけていたのだ。

▲S21と22 の溝面積の比較図。軽快感とウェット性能を高める手段として、前後ともショルダー部の溝が増えているのに対して、センター付近はスリックに近づいた印象。この変更が、コーナー進入時の安定感や、脱出時に後輪から伝わる濃厚なトラクションの一因になっているのだ。

▲先代S21と同じく、トレッドには日本刀をモチーフとするデコレーショングルーブが刻まれる。主な対応機種はミドル以上のオンロード車で、リヤの190は2種類の偏平率を設定。

そんなS22とMT-09SPの相性は抜群で、S20を履くノーマルと比較すると、操作に対するすべての反応が軽快かつダイレクトになっているから、乗り手の心には自然にヤル気がみなぎって来る。そしてそのヤル気はアグレッシブな姿勢につながり、結果的にS22を履いたSPで走っていると、STDやSPのノーマルよりレベルが高い、高揚&爽快感が堪能できるのだ。

今回の試乗でそういった感触を認識した僕は、S22は装着車両から、操る楽しさをきっちり引き出せるスポーツタイヤなのだなあ……と感じたのだった。

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