
【ビッグマシン・ゼロ:文-青木タカオ 写真-ピレリジャパン】
スポーツモデル並みの高出力や操縦性を誇る近年のハイパフォーマンスVツインクルーザー。メッツラーが新たに発売するクルーズテックはそうしたモデルをさらにスポーティにする、新感覚のクルーザー用タイヤなのだ。
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◆「CRUISETEC」タイヤ 商品ページ
目次
もうタイヤで嘆くことはなくなった!
▲CRUISETEC 税込価格:オープン ■対応機種:ハーレーなどのV ツインクルーザー全般
メッツラーの新作「クルーズテック」のメディア向け試乗会が、イタリア・シチリア島にて行われた。
ハーレーダビッドソンやインディアン用として開発されたタイヤだが、メッツラーにはすでにME88マラソン/ウルトラというロングライフと耐候性に定評を持つクルーザー用タイヤがある。なぜ新製品が必要だったのか。それは走り出してすぐにわかった。クルーザー用でありながら軽快なハンドリングを生み、コーナリング性能に優れているのだ。
試乗前の技術説明会で開発責任者のサルヴァトーレ・ペニーズィ氏は「ユーザーの求めるものが変わってきた」とし、「クルーザー用でもハイパフォーマンスでなければ満足してもらえない」と力を込めた。
昨今のハーレーやインディアンはエンジンが高出力化し、車体や足まわりも強化されてスポーツライディングが楽しめるよう高性能化している。購入後もオーナーらは、サスペンションやホイールを高性能なものに交換し、エンジンをモディファイするなどアグレシッブに走るためのカスタムを好み、クルーザーをデコレーションパーツで飾り立てた時代とは趣きがだいぶ違う。
そんなハイパフォーマンスクルーザーを好むライダーからの「もっとハイグリップなタイヤを」という要望に応え、クルーズテックは誕生したのだ。
試乗は高速道路から欧州最大の活火山エトナの麓を駆け抜ける豪快なワインディングを経て、さらにウェット性能も確かめるべくサーキットへも場を移すというコース。
ハーレーのファットボブやアイアン1200、インディアンのスカウトなどを乗り換えつつ走るが、メッツラーの先導ライダーによって終始ハイペース。
ターゲットにしているユーザーらがそうであるように、真っ直ぐな道をただVツインの鼓動に揺られてノンビリ流すのではなく、ヘビーな鉄馬のビッグトルクを存分に活かしつつスポーツライディングを堪能するという狙いが、その行程には込められていた。
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◆「CRUISETEC」タイヤ 商品ページ
適度なクイックさとウェットでの安心感
さて、肝心な乗り味だが、まずコーナー進入時の車体の寝かし込みがスムーズで、フロント19インチのアイアンはよりクイックに車体が倒れ込むし、前後16インチのファットボブやスカウトはノーズから鋭く向きを変えていく。
それでいてクイックなだけではなく、適度な穏やかさも併せ持っており、旋回中はしっとりとしたグリップ感が乗り手に伝わってくる。早々に路面と接地してしまうバンク角の浅さが恨めしい。
旋回初期の身のこなしが軽いのは、前輪のトレッドパターンを排水性だけでなく、シャープに寝ていくよう溝の入れ方を追求した賜物。コンパウンドはリヤでデュアル化され、センター部はロングライフに、ショルダーはしなやかに路面を掴むよう分けて、偏摩耗も抑止している。
現地の舗装は粗悪なうえ砂も浮き、見るからにスリッピーだったが、接地面がたわむように動いて路面をしっかり捕まえて良好なトラクションを生み出していることが心の余裕を生む。クルーザーなら苦手なはずのタイトコーナーでもグイグイ向きを変え、大排気量Vツインの強大なトルクもお構いなしにアクセルをワイドオープンできるのだから痛快としかいいようがない。
また、タイヤの剛性不足から腰砕けになって、アクセルを開けるのをためらいがちになる高速コーナーでも、ショルダーの剛性がしっかりあるのでハイスピードのままに駆け抜けていくことができる。たとえばハイウェイの出口にあるダラダラと続くカーブ。
ハイスピードでランプを下っていくとき、いつもならアクセルを閉じて我慢するような場面ですら、容赦なく加速しながらコーナーを抜けていけるのだ。
衝撃吸収性も良く、乗り心地がいい。縦方向のバネをハードにし、ガッチリとするのがクルーザー向けのタイヤだが、クルーズテックは縦バネをソフトにし、疲れにくい快適なライドフィールとしているのだ。
そしてクローズドコースにはタップリと水がまかれ、濡れた路面をテストできた。新開発のコンパウンドは路面温度が下がる雨天時や冬でも高いグリップ力を維持でき、ウェットでも不安なく車体を寝かし込めるため疲労感が少ない。濡れた路面での安心感がとにかく高いのだ。
ドライの一般道でも感じたことだが、グリップに余裕があるから気を遣う必要がなく、ペースを上げようともクルーザーならではの心地良さやイージーさが、このタイヤのおかげで余計に感じられた。
それでいてライフはME88シリーズと同等を維持し、長旅にもも最適。高年式クルーザーに乗るライダーには待望の高性能タイヤと言える。
雨にも強い!
クローズドコースではウェット路面のテストも。排水性に優れる新トレッドパターンと耐候性の高いコンパウンドによって、濡れた路面にも強い。急制動ではABS の作動が明確に遅くなったことも報告しておこう。
軽快な初期旋回を実現
旋回初期の寝かし込みがヘビーになりがちなクルーザーも、細かく刻んだトレッドパターンによってスムーズで軽やかに。高いウェット性能を実現しつつ、コーナリングを得意とした。
リヤはデュアルコンパウンド
リヤタイヤはデュアルコンパウンドとし、長距離走行後もセンターだけが極端に擦り減ってしまうことを抑止。均一性のある摩耗で、軽快なハンドリングを維持する。
高性能に直結する特徴的トレッドパターン
<FRONT>
交互に配されたフロントの長い溝(赤)は水膜の排出性やブレーキング性能に貢献。ABS の効力も最適化している。短い溝(青)はタイヤの温まりやすさなどに威力を発揮。
<REAR>
長い溝(赤)はウエットグリップに加え、摩耗を抑制しつつ接地面を最大化してグリップ力を向上。その溝を細かく切断するようなブリッジ部(青)は安定性に貢献している。
サイズ
最新V ツインクルーザーに対応するラジアルおよびバイアスプライタイヤをラインナップ。リヤは260サイズという超極太も設定している。発売は'19年6月末頃を予定。
METZELER
1892年に創業したドイツ生まれのタイヤブランド。モーターサイクルタイヤにこだわり続けて百余年、年間1400万本ものモーターサイクルタイヤを生産。メッツラーはピレリ社の一ブランドとして21 世紀も更なる躍進をめざし、タイヤ開発に従事している。また、ドイツのアウトバーンで鍛え上げられたメッツラーのスタッフの多くは、自らが熱狂的なライダー。だからこそ、ライダーが何を求め、何を期待しているのか本当の意味を理解しているのだ。
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