ライディングの理想形を思わせるジョナサン・レイ

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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ジョナサン・レイのライディングは走りのお手本になると思う

今年のWSBKは、8月22日の第7戦ナヴァラを終えた時点で、6年連続チャンピオンのジョナサン・レイと、人車共々進境著しいヤマハのトプラック・ラズガトリオグルが同ポイントでランキングトップに並ぶという熱い戦いを展開しています。
さぞかしレイはプレッシャーを感じているのかと思いきや、「これから年間6戦のシリーズが始まると考えればいい」とのコメントに、王者の貫禄さえ感じてしまいます。

さて、私は、コラム 「ZX-10Rに乗るジョナサン・レイの強さの理由とは」で書いたように、レイの1次旋回と2次旋回のメリハリが明確なライディングスタイルと、ZX-10Rのハンドリング特性がマッチング、最強ポテンシャルを発揮してきたと思っています。
決して彼の走りが特殊というわけではありません。理想的な荷重コントロールを忠実に実践しているに過ぎないのだと思います。その意味で、見て勉強になるライディングだと言っていいでしょう。

レイの基本を超越した走りから、改めて基本を知る

そんなジョナサン・レイも、基本を超越した走りを見せることがあります。

YouTube「Last laps from Race 2 at #TeruelWorldSBK」は、昨年のアラゴンでのレース2の終盤です。04:30は、先行していたマイケル・ルーベン・リナルディをラスト3周で抜き、1コーナーへ進入していくところです。両足をステップから浮かせて、体重移動しているのです。また、04:50からはその拡大スローモーションです。

さすがに後輪が浮くフルブレーキングでは挙動が乱れてしまいますが、注目すべきはそのステップワークです。06:20からの最終ラップへの進入でも同様のステップワークを見せています。

これは、1次旋回において、出した内足を外旋させて骨盤をイン側に引き込もうとするとき、それを邪魔しないように外足も浮いてしまっているのです。もちろん、その直前では外足の股関節にしっかり荷重が掛かっていることは言うまでもありません。

また、上記のYouTube「SBK CZECH RACE 2 2021 FULL RACE | GREAT RACE REDDING & TOPRAK」の07:04からは、今年のチェコのモストでアンドレア・ロカテッリを抜いて右コーナーへ進入していくところです。内足を出してはいませんが、外足は一瞬、浮いてしまっています。これも、基本から外れているようですが、1次旋回を明確に行っている結果と言えましょう。

全日本JSBの中須賀選手も、よく似た走りを見せることがあります。ただ、中須賀選手はライバル不在の中で自身の走りを確認しているかのようですが、レイはライバルを抜き去り引き離そうかというときに、このようなアグレッシブな走りになるようです。

荷重コントロールを、体内ウェイトを移動させるイメージで考えてみる

私は、体内にあるウェイトを体内で移動させるイメージで、荷重コントロールを考えることがあります。アプローチでアウト側肩関節にあったウェイトが落下、その勢いでウェイトはイン側股関節に移動してくれるのです。このウェイトの存在を体軸点と考えることもできます。

210826_wakayama_01-680x453.jpg▲写真1

写真1はカタルニアでのテスト時、裏のストレートからの突っ込みです。ここではその寸前に外足は浮いていなかったと思いますが、ウェイトはイン側股関節に移動し、外足はステップを踏んでいます。

ここで、その外足が外旋していることに注目してください。そのことで、骨盤をアウト側に引き戻す効果が生まれています。タメを入れ、舵角を入れることができるのです。

210826_wakayama_02-680x453.jpg▲写真2

210826_wakayama_03-680x453.jpg▲写真3

写真2、3は今年のミザノでのもので、2次旋回に入った写真2では、ウェイトは再びイン側股関節に戻り、さらにイン側肩関節にあるイメージです。イン側肩関節に体軸点があることが肩からコーナーに入るという感覚に繋がっていると、私は考えています。

やはり、ジョナサン・レイはセオリーに忠実なのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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