ファビオ・クアルタラロの強さの秘密は独自のライディングスタイルにあり

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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他のライダーとは異なる2ステップ走法

モトGPで現在、ランキングトップのファビオ・クアルタラロのコーナリングには、他のライダーにない大きな特徴があります。

動画で見てください。Youtubeのfabio quartararo、さらにonboardで検索すれば、シートに取り付けた車載カメラからの映像が、いくつかアップされています。走りの特徴を見て取りやすいものとそうでないものもありますが、どうでしょう。

寝かし始めからワンテンポ置いて、腰(骨盤)が一度アウト寄りに戻り、外脚股関節に荷重されて踏ん張り感が伝わってきます。顕著な場合、骨盤が一度浮き気味になって、アウト寄りに座り直しています。これは1次旋回から2次旋回に移行するタメに相当する1.5次旋回とも呼ばれるタイミングになります。

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私はこれを2ステップ走法と名付けました。アプローチで外脚股関節に荷重されていた状態から、荷重が内脚に移り、また外足に戻ってくるので2ステップというわけです。ソフトボールのピッチングの2ステップ投法に因んでの命名です。

ただ、ロードレースではユニークとも言えますが、実はこれ、多くの人が知らず知らずのうちに使っています。Uターンのとき、寝かし始めのタイミングで、シートのアウト側エッジに座り直すことで、小回りしやすくなるのと同じです。モトクロスでも同様です。
腰をアウト側に移動することで、生じ始めた遠心力が抜重され、そのままでは倒れそうになるマシンのバランスを保つために舵角が入ってくれるのです。

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そのため、クアルタラロのコーナリングを同じチームのマーベルック・ビニャーレスと比較すると、初期に舵角が入ることで、バンク角は浅めでリヤの軌跡が外側にあるオーバーステア状態になっている傾向があり、これが速さに繋がっていると考えます。

一般的なのはツイスト走法

では、ビニャーレスを始め、多くのライダーはどうやって乗っているのでしょう。
1次旋回で骨盤が併進運動(旋回方向への回旋運動を伴う)、骨盤がイン側に押し込まれるのは同じです。体軸(股関節と肩関節を結んだ線上にあると仮定した身体の運動軸)がアウト側からイン側に移動、イン足を内旋させることで体軸を押し戻しつつ、骨盤はイン側が前に押し出されます。これが1.5次旋回の部分で、2次旋回で上体がコーナーに向けて飛び込んでいくことになります。

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1.5次で骨盤が逆方向に回旋するためツイスト走法と呼ぶことにしましたが、野球のバッティングやゴルフのスイングでもこうした身体操作を行う人は少なくなく、これがツイスト打法と呼ばれていることに因んでいます。

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ツイスト走法だと曲げるためのコントロールをイン側に体軸を置いてこなしますが、クアルタラロの2ステップ走法ではアウト側体軸で行っていることになります。ボール投げで例えると、右投げの場合、左片足立ちで投げるのがツイスト走法、右片足立ちで投げるのが2ステップ走法に近い身体操作と言えるかもしれません。

ロードレースでは今も昔もイン側体軸でステアする乗り方が主流ですが、例外もあります。ホルヘ・ロレンソはヤマハ時代、クワタラロほど明確な2ステップではありませんでしたが、アウト側体軸でこなしていましたし、マイケル・ドゥーハンはコーナーの左右に関わらず右軸でコーナリングしていたものです。

事によると、クアルタラロの2ステップ走法を他のライダーが取り入れ、テクニックが変遷していくのはスポーツの進化として当然の流れかもしれません。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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