新型ZX-10Rのハンドリングが取り回しでも良いのは空力のおかげ?

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

210524_wakayama_01_2021Aerodynamics-680x510.jpg

刷新された空力特性あっての新型10R

私は3か月前、コラム「21年型ZX-10R/10RRは稀代の正常進化系かも」において、新型10Rの予想インプレを書きました。
そして実際に乗ったところ、それは期待以上の素晴らしさで、コラムの内容にも間違いはありませんでした。ただ、一つ補足、強調しておかなければならないことがあります。

私のコラムでは空力特性の改善は改良点の一部との扱いでしたが、実は空力特性こそが新型車のメインテーマであり、他の改良点は刷新された空力特性にマッチングさせるためのものであったと思えるぐらいだったのです。

とにかく、低速取り回しでも、ハンドリングが軽快で従順です。これには様々な要素が考えられますが、何より空力のおかげではないかと思えました。マシンがリーンして向きを変えるという動きに対して、低速域でさえ抵抗が小さい印象なのです。

さらに、そのメリットが、高速域まであらゆる状況において生かされているかのようです。特にコーナリングでは、マシンの素性のままに振る舞ってくれるので、素直で、ラインの自由度も高いのです。

私はコラム「ZX-10Rに乗るジョナサン・レイの強さの理由とは」において、10Rのハンドリング特性が彼のライディングスタイルに合っていることに触れたことがあります。
1次旋回では、クランク軸のジャイロ効果が抵抗になり、舵角を入れやすく、2次旋回では高めの重心によって倒し込みやすくフルバンクを目指せます。

そうした特性も、より分かりやすく、鮮明に感じられるのです。

新型は外装表面に空気の高圧部も低圧部も少ないか

そこで、従来型との比較の上で、新型のカウリング形状に注目してみましょう。

210524_wakayama_04_2016_Front_cowl-680x510.jpg▲2016年型ZX-10R
210524_wakayama_05_2021_Front_cowl-680x510.jpg▲2021年型ZX-10R

まず、フロントマスク部にウィングレットが設けられていることが大きな特徴です。ダウンフォース獲得を狙っているのですが、モトGPマシンのように両サイドに設けられるわけでなく、ダウンフォースが車体の挙動に影響を与えることなく、ダイレクトにフロントを抑えてくれると期待できます。

210524_wakayama_02_2016-680x510.jpg▲2016年型ZX-10R
210524_wakayama_03_2021-680x510.jpg▲2021年型ZX-10R

そして、車体全体に渡り、走行風による高圧部、負圧部が生じにくい工夫がなされています。圧力によって押し込まれ、負圧に吸い戻されることで、車体はストレスを受け、挙動が影響されることになるからです。

210524_wakayama_06_2016vs2021_HeadLight-680x510.jpg

ヘッドライト部は窪みがなく空気溜まりが生じにくいですし、両サイドから空気を抜けるようになっています。また、シートカウル両サイドにはエア抜きのためのスロットが設けられています。エア抜きを良くすることで、空気の流れが表面から剥離するときに負圧が生じないのです。
そしてカウルサイドに注目しても、流れを乱さない工夫が見て取れます。

空力の影響というと、高速走行でのことを考えがちですが、意外なほど低速域でも走りを左右するものなのです。ジョギングで肌にピッタリしたインナーシャツか、それともごわごわのスェットシャツを着ているかの違いを想像していただければ分かると思います。

さらに言えば、こうした空力特性への取り組みがより明確になっているのが、昨今の各メーカーの新型車の傾向でもあるようです。

【ウェビック バイク選び】
【ZX-10R】の新車・中古車を見る

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

この著者の最新の記事

           

20210413_wms_magazine_1280_160.png
   
20210201_wms_336_280.png
ページ上部へ戻る