新型ハヤブサは22年前の初代型の理念を今日的に高次元化させた

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

初期型の理念・究極のスポーツとは

99年に市販されたハヤブサの登場は、実にセンセーショナルでした。300km/hを超えるという最速ぶりが注目されたものの、乗ったそれは期待を超えたオールラウンダーぶりだったのです。

最強性能を生かしてサーキットを気持ちよくスポーツ走行できる一方、ワインディングロードでは豊かな低中速性能を利して生き生きと駆ることができ、一般道で持て余さないバランスを備えていたのです。コンセプトである「究極のスポーツ」の意味を思い知らされたのでした。

08年には第2世代に進化。ストロークの2mmアップで排気量を41cc拡大、最高出力は175psから197psに引き上げられました。ただ、それはリッタースーパースポーツが限りなく超高性能化されていく当時の時流に合わせた進化だったかもしれません。

エンジンマネージメントが高次元化されながら、中回転域でのトルクの立ち上がり勾配が強くなってサーキットではリヤスライドを招きやすく、サスペンションもパワーに合わせて高荷重設定で、スポーティでありこそすれ、フレンドリーさはやや損なわれたというのが偽らざる気持ちでした。シート高の諸元値は同じでも、サスの違いのせいか足着き性も少々劣る感じでした。

そして、この第3世代となる最新型ですが、リリースからはキープコンセプトのまま22年間の技術の進化が造り込まれている印象を受けています。もはや、従来型に対してどうこう以前に、新世代における究極形が新しく具現化されているかのようです。

▲右から初代GSX1300Rハヤブサ、第2世代ハヤブサ、新型ハヤブサ

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トルクカーブが初期型と相似形であることに注目したい

エンジンは最高出力が7ps低い190psとなりました。その結果、トルクは初期型にそのまま上乗せしたようなカーブを描いています。

これによって、扱いやすさが向上。そればかりか、電子制御スロットルの採用、スロットルボディのφ44mmからφ43mmへの小径化、電子制御の進歩によって、コントロール性がはるかに上質になっているはずです。

また、モード切り換えによって特性を選択でき、バンク角対応のトラクションコントロール、ウィリーコントロールによって高性能が御しやすくされています。設定可能のエンブレコントロールによって走り方に合ったスムーズさも期待させます。

▲上段がトルクカーブ(緑=初代、青=第2世代、赤=新型)、下段が出力カーブ(同)

ハンドリングは軽快で素直で、スポーティであろうと思う

ハンドリングに関してまず注目したいのは、リヤフレームが700g、マフラーが2054g軽量化されたことです。前後輪分布荷重は50/50%になったそうです。

この配分はストリートスポーツの理想かもしれませんが、むしろ私が注目するのは、車体後部の重量軽減によるマスの大幅な集中化です。これによって、車体の長さを感じさせない素直で軽快な運動性が期待できるのです。

そして、新しい外装は空力特性も刷新されていて、バイク特有の3次元的な動きに対して、空気が影響を与えにくいと思わせます。

小振りになったフロントフェンダー、空気の高圧部が生じにくいフロントウィンカー回り、上下に幅小になったリヤカウルなどによって、ハンドリングもより素直になると思います。また、カウリングは先端部までウェッジシェイプが効いており、ダウンフォースも高まっているかもしれません。

もう一つ、キャスター角は初期型から1度少々立てられ、特に低速域で軽快になっていると思われます。高速安定性には不利になりますが、タイヤやサスペンションの進歩、ダウンフォースが高まった車体によって、従来型よりも改善されていることでしょう。

付け加えますと、シート高が従来よりも5mm低い800mmになっていることも、小柄な私にとって嬉しいところです。

▲新型ハヤブサのシャーシ

究極のスポーツ向きに最適化された最新鋭の電子制御装置

新型ハヤブサは6軸IMUを備え、最新鋭のスーパースポーツに準じた電子制御装置が採用されています。そして、それらが「究極のスポーツ」向きにアレンジされています。

クイックシフターが、サーキットでのレスポンス重視のモード1と、公道での軽いタッチ重視のモード2に切り換えできるのもその一つですが、私は特にブレーキ制御に注目しています。

正直を言うと、前後連動ブレーキが採用されたと知り、最初はいささか興醒めしたものです。レバー操作でのリヤの連動(ペダル操作ではリヤのみ)とは言え、フロントブレーキによる姿勢変化を利用したいスポーツライディングにとってマイナスではないかと思ったのです。

でも、それは間違っていたようです。ハヤブサのブレーキ制御には多くのスーパースポーツ同様、コーナリングABS、アンチリヤリフト機構が備わっています。前後輪の回転速度、IMUが検知したマシンの運動状態から、前後ブレーキの液圧を最適化(減圧)するというものです。

ならば、リヤを連動させながらも、このシステムを利用すれば、望まない条件下での減圧が可能になります。これは私の希望的推測でしかないのですが、ハヤブサは期待を裏切らないと信じます。

いずれにしても、ブレーキングで常に車体挙動の乱れはなく、自信を持って走れるものが目指されていることは確かです。そうした思想が、新型ハヤブサの全てに展開されていると見ていいでしょう。

▲3次元の動きをするバイクのロール、ピッチ、ヨーをIMUが計測

▲ABSはボッシュ製でアンチロック機能だけでなくIMUのデータも活用したブレーキ配分の調整も自動で行う

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和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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