世界中で白熱の「カウンター」vs「ボディ」ステアリング論争

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

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ネット上でも熱いライテク論争

ライディングスクールやライテク論者には、カウンターステアリング(逆操舵)がコーナーに進入する方法だと説く人がいます。一方、私のように、大切なのはボディステアリング(体幹操舵と名付けます)だと主張する人もいます。

これは諸外国でも由々しき問題のようで、ネット上でも両意見が飛び交っています。
それらの中で、逆操舵論者の最たるはカリフォルニア・スーパーバイクスクールの創始者にして、ライディングに関する著書でも有名なキース・コード氏です。
バイクが向きを変えるための唯一の方法は逆操舵だと言明。身体を移動させるにはマシンに入力せねばならず、結局は逆操舵を使うしかないというのです。そのため彼は車体本体にダミーハンドルを取り付けた(スロットル操作は可能)“ノー・ボディステアリング・バイク”を製作。「ほら、曲がらんだろ」と実演しています。

すると、それに反論する人が、ロサンジェルス北部のワインディングを手放しで走り切る動画“ノー・ステアリング・インプット”をアップ。「キース・コード、見てろよ」とやってのけたのですから、何とも楽しい論争です。

体幹操舵とは、身体の移動ではなく、重心移動

逆操舵論者には勘違いがあります。ボディステアリングのための体重移動を身体の移動だと解釈しているのです。
身体を動かすことで(極端な話、現在のロードレースのように)、バイクを寝かし曲げているのだと思っているのです。確かに、それではキース・コードが言うようにマシン側に入力せねばなりません。そればかりか、モトクロスのようなリーンアウトでも曲がるのだから、体重移動は関係ないとまで言い出す人さえいます。

でも、人間の身体には柔軟性があります。骨盤の動き、体幹の捻転と伸縮を伴ったしなりで、重心を移動させることができるのです。もっと言えば、重力を利用することで、重心移動を引き出しやすくなります。

これは、歩行において、着地脚上に重心がくるように、左右の重心移動を繰り返していくのと同じで、走り、投げる、打つというスポーツの基本動作に通じます。だから、うまいライダーは、たとえ見た目はまったくのリーンウィズのままでも、しっかり重心を移動させ、向きを変え、コーナリングを見事にこなしていきます。

論争上、逆操舵論優勢なことには理由がある

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残念ながら、ネット上では逆操舵論が優勢です。また、体幹操舵への認識がなくとも、逆操舵を教えるスクールは結構あります。おまけに、某メーカーのホームページには、体重移動ではなく逆操舵でないと曲がらないとの記述を見掛けるほどです。

これには訳があります。説明しやすく、その通りにやれば、誰もがすぐに反応を体験でき、曲がるきっかけの一つとして納得できるからです。
でも、体幹操舵には習得しにくいと言えます。その身体操作は不随意筋である深層筋によるものだけに、言葉で伝え、意識して動かすことができないのです。その点、逆操舵なら随意筋で操作でき、伝えやすいというわけです。

逆操舵はあくまでも補助操作であるべき

ただ、一切の逆操舵なく、正確かつ安全に速く走ることができないのも事実です。
でも、逆操舵を補助操作ではなく、主操作として身体に覚え込ませてしまうのは危険です。攻め込んでいこうとしたとき、逆操舵ではフロントへの限界が早く訪れます。また、コースアウトしそうになったとき、逆操舵で回避しようとしても、パニック時に行きたい方向と逆にハンドルを切るのは、本能的に困難です。

第一、逆操舵に依存したコーナリングではレースで速く走れないのは明らかです。逆操舵だけで理想的なコーナリングができるなら、ライディングはスポーツとは言えません。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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