21年型ヴェルシス1000のスカイフックサスは何が素晴らしいのか

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

スカイフックという呼び方の由来はまさに文字通り

ヴェルシス1000は、2019年型のSEモデルにショーワの電子制御サスERRAが装備されました。走行状態によって減衰力が逐次最適化され、しなやかさと踏ん張り感の両立だけでなく、モード切り替えによって街乗り用からスーパースポーツ指向にキャラを変えるワイドレンジぶりが実現されているのです。

そして、そのヴェルシスの2021年型は、電子制御サスの制御ロジックがスカイフック理論を加えたものにバージョンアップされました。

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バネ下(ホイール)からバネ上(車体)を、バネとダンパーで浮かせているのがサスペンションです。スカイフック理論とは、イメージ図で表したように、車体を空中から仮想スカイフックダンパーで吊り下げ、仮想移動直線状を安定して走らせようというものです。乗員を酔わせることなく快適に移動させるのが目的で、四輪車の電子制御サスが着目され始めた30年以上前からある考え方です。

▲スカイフック理論イメージ図

当然ながら、仮想ダンパーを装備することは現実問題、不可能ですから、仮想ダンパーをバネ上とバネ下を結ぶ通常のところに移動、バネ上の運動状態に応じて減衰力を電子制御することで、仮想スカイフックダンパーの働きを担わせようというのです。

バイクのスカイフックサスには、バイクならではの取り組みが必要

そもそも四輪車向きのアイデアであるスカイフックサスは、そのままではバイク用には不向きです。バイクは姿勢変化(ピッチング)を有効に利用して走らせる乗り物だけに、姿勢変化を排除する四輪車の考え方とは相容れないのです。

そのためか、ドゥカティは2013年型以降のムルティストラーダにスカイフックサスを採用していますが、私が知る2015年型は、安定性指向で快適に移動できても、タイトターンで曲げにくいきらいがあったことを思い出します。

ところが、このヴェルシスでは、キビキビとした操縦性は全く損なわれていません。言ってみれば、路面の影響によるバネ上の不要な動きは排除されても、意志通りに姿勢変化させることができるのです。その意味で、ショーワはスカイフック理論をバイク向きに具現化したと言えます。

試乗後に技術屋さんにその秘密を聞く機会を逃してしまい、あくまでも私の推測ですが、バネ上に設置されたIMU(慣性計測ユニット)で運動状態をセンシングし、姿勢変化やバウンシング(上下動)を抑えながらも、加減速Gやスロットル開度、ギヤ段数から、ICUがそれをライダーが意図した姿勢変化だと判断したときは関知しないなどの制御補正が入っているのではないでしょうか。

それにショーワの電子制御サスはストロークセンサーを備え、抜群の応答性と対応性を獲得しているだけに、そのメリットもスカイフック制御に生かされているはずです。

このスカイフックサスは電子制御サスを高次元化させている

おかげで新しいヴェルシスは、ワインディングを攻め込めるセッティングのスポーツモードで、路面の不整には固さを感じても、不整通過後の挙動が乱れにくいし、連続突起も吸収しやすい状況に保たれています。
また、しなやかにサスが動き、吸収性に長けるレインモードでは、サスが大きく動くだけに車体があおられて不思議でないのに、挙動は乱されません。コーナー入り口でブレーキングして姿勢変化こそ大きくても、その状態から自然にアプローチできます。

大きく姿勢変化してもピッチングのセンター(私のイメージとしては重心よりもやや前方の低いところにある)がブレることがありません。バネ上の不要な動きが排除されるだけに、より意志通りに姿勢変化させることができ、素性そのものが良いバイクに乗っている印象です。

さらにショーワでは、電子制御サスの仮想バネレート制御に取り組んでいるそうです。減衰力にバネ反力に相当する要素を加えるというのでしょうか。ともかく、さらに高次元化したスカイフック制御も含めた電子制御サスを期待できるのですから、技術の進歩への可能性にワクワクしてくるのです。

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和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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