一本橋走行にはライディングの基本が詰まっている

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

一本橋走行の上手い下手の違いを分析した研究

二輪車の操縦安定性に関する研究論文は多く発表されていますが、微分方程式の羅列が難解だったり、一般のライダーには縁遠いものもままあります。そんな中、私は先日、大変に興味深い論文を発見しました。

J-STAGE において、公開されている 「自動二輪車の低速走行におけるライダーの挙動(著者:横井元治、青木和夫、堀内邦雄)」という論文です(参考文献には私の著書もリストされていますが、果たして参考になったのか冷や汗を掻いています)。

この論文では複数の一本橋走行初心者と熟練者それぞれの、一本橋走行におけるマシン操作や車体の挙動が比較されており、ライディング上達の一助になると期待できます。そこで、要点を箇条書きに挙げ、それぞれについての私の見解をカッコ内に書いてみました。私の見解は論文内での考察と食い違う面もあることをお含みおきください。

熟練者と初心者の違いは明らか

(1)初心者は頭部の動きが大きい
[初心者は上体を左右に大きく振ることで、その場をしのごうとします。が、結局は反対方向に車体が動き、脱輪しがちです。]

(2)初心者は上体(頭)左右に振ると同時にその方向にハンドルに体重を掛けている
[上体を振ったことによる荷重をハンドルで受け止めていることになります。]

(3)操舵角は、初心者は10度以下だが、熟練者では30度近くにも達する
[熟練者はハンドルを積極的に大きく切ることでバランスを保っています。]

(4)熟練者は常にハンドルに体重を掛け、故意にハンドル荷重をコントロールしている
[初心者はハンドルから力を抜くという呪縛に囚われがちですが、熟練者は四つ足動物であるかのように振舞っています。]

(5)熟練者はハンドル荷重によって車体が起き上がり、逆に初心者は車体が荷重側に寝ていく。
[論文ではこれはステアリング系の幾何学的構造によるものと考察していますが、私はそうは思いません。熟練者がハンドルを切っている(引き舵)であるのに対し、初心者は押し舵になっていると考えます。今回の実験装置では操舵力が計測されると説明されながら、操舵力のデータが記されていないのが不可解です。]

一本橋の上手い下手は、コーナリングにもそのまま当て嵌まる

つまり、上手な人は下半身主導で体幹を移動させ、ハンドルを切りつけることでバランスを維持していくのですが、下手な人は寝ていく車体を起こす方向に上体を動かしながら逆操舵しているわけです。
これはコーナリングにもそのまま通じます。うまくコーナリングできない人は寝ていく方向に上体を振り、逆操舵しているだけなのです。
 
私は、何度も触れてきたように、コーナリングテクニックとしての逆操舵に否定的です。正しいコーナリングを習得するメソッドとして一本橋走行が有効ではと考えるうちに、この論文に遭遇したのですが、一本橋走行が単なる免許教習用科目ではなく、ライディングの基本が一杯詰まっていることを証明していたのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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