「KTM 1290スーパーデュークR」試乗インプレッション 上質にして獰猛、しなやかに牙を磨いたハイテク野獣だ!

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

写真/星野 耕作

マシン解説

6馬力アップの6kg軽量化

KTMのスポーツネイキッド、DUKEシリーズの最高峰モデル「1290 SUPER DUKE R」の2020モデルが登場。2013年の初代から3代目となる今回、エンジンと車体と電制も含めた全面刷新となる大幅進化を遂げた。

水冷75度VツインDOHC4バルブ1301ccエンジンは従来ベースながら、チタンバルブや鍛造ピストンの採用、トップインジェクターやラムエアシステムの導入により従来比6psアップの最高出力180psを実現。ミッションやクランクケースも改良され、エンジン自体も軽量化された。
フレームも一新され、従来の1290アドベンチャー系の鋼管トレリスフレームから、エンジンを剛性メンバーの一部として利用する鋼管スペースフレームに変更するなど、さらなる剛性アップと軽量化が進められた結果、車重も従来比6kg減の198kgに抑えられている。

進化した車体に最新装備をメガ盛り

新型トリプルクランプや新たなリンク式リヤショックの採用とともにスイングアームのロング化とピボット位置の変更などによる車体ディメンションの最適化。さらにWP製APEX前後サスペンションも改良され、工具を使わず手動でのプリロード調整も可能に。

電子制御もさらなる改良を受け、4種類のライディングモード(レイン、ストリート、スポーツ、トラック)も新設定とし、5インチTFTディスプレイとスイッチ類も機能的でスタイリッシュな新デザインとしてインターフェイスを最新化。スーパーモトモード搭載のコーナリングABSやMTC(トラコン)、MSR(モータースリップ制御)、クルコンなどの電子制御もアップグレードされるなど、まさに最新装備“メガ盛り”のファイターに鍛え上げられている。

試乗インプレッション

見た目もスマートに乗り味も洗練された

左右に分かれたLEDヘッドライトの中間にセンターダクトを設けたニューデザインのフロントマスクが目を惹く新型スーパーデュークRは雰囲気からして一変した。車体は全体的に低く構えた前傾スタイルとなり、歴代モデルのやや腰高なモタード風イメージを一新。従来の筋骨隆々のマッシブなデザインから、ずいぶんとスマートに洗練された感じだ。

さて乗り味だが、これが滑らか。クラッチのつなぎも軽く、左手をミートするだけでスルスルと走り出す。鼓動もマイルドで振動も少なく、上体が起きたアップライトなライポジということもあって、街を普通に流していると快適ですらある。

初代の頃の硬質なドコドコ感や暴力的な加速は鳴りを潜め、あのビーストは何処へ行ってしまったと思ったほど。吸排気系を含むエンジンの改良や電制のアップグレードにより、確実に扱いやすくなっているのだ。

調教されたがビーストの本質は変わらない

もちろん、これは“普通”に走っていればの話。いくら調教されたと言っても本質は猛獣であることに変わりはない。ひとたびアクセルを大きく捻れば、猛烈な加速Gに襲われ、反射神経がついていけなくなるほど。ライダー側もモードを切り替えなければならない。
そして、最もアグレッシブな「トラック」モードに入れようものなら、ひときわ高鳴るVツインサウンドとともに日常とは次元の異なる瞬間移動装置と化してしまう。

だが凄いのは、そんな状態でも電子制御が常に監視していることだ。試乗会が行われた富士スピードウェイの安全な場所でライドモードをいろいろ試してみたが、たとえば一番穏やかな「レイン」だと、いくら乱暴にアクセルを開けてもトラコンが瞬時に介入して、ウイリーもしなければ後輪が滑ることもない。
しっかり安全圏内でビーストの手綱を締めてくれているわけだ。

オンロードの骨格を得て新たな次元へ

ハンドリングも激変した。エンジンを中心にマスが集中している感じで、S字を切り返したり、コーナーに向けて倒し込んだりといった一連のモーションが圧倒的に軽い。KTMによればシャーシ剛性は3倍に強化されているが、実際の乗り味としては逆に当たりがソフトになった感じがする。
従来モデルは大柄な車体を振り回すイメージがあったが、新型はより俊敏なのに安心感があるというか、自然な乗り味なのだ。

そのヒントはまったく新しくなったフレーム構造にあるようだ。先代までは1290アドベンチャー系の鋼管トレリスフレームを採用していた。
これは文字どおり鉄パイプをヤグラ状に組んで、そこにエンジンをぶら下げる構造だったが、新型では同じ鋼管フレームでもエンジンを剛体メンバーとして組み込んだ一体構造となり、見るからにシンプルでコンパクトだ。従来モデルよりエンジン搭載位置も高く、重心もよりロール軸に近くなっている。

さらに言うと、フレームのデザインはかつてラインナップにあった唯一のスーパースポーツ「RC8」に似ている。つまり、長年のオフロード呪縛からようやく解放されて、完全にオンロードに顔を向けたモデルへと階段を上ったわけだ。

例えるならオープントップのスーパーカー

そして、最新の電子制御がビーストの足元をさらに盤石なものとしている。コーナリング対応のABSとMTC(トラコン)は言うに及ばず、減速側のトラコンとも言うべきMSR(過大なエンブレによる後輪スリップを防ぐ)を含めたMSC(モーターサイクル・スタビリティ・コントロール)がマシンの挙動を完全に統合制御している。
また、シフトアップ&ダウン対応のクイックシフターの滑らかな操作フィールが気持ち良く、新設計のパドルタイプのスイッチ類も節度感があって扱いやすい。すっきりとコンパクトにレイアウトされた、新型TFTディスプレイとともにスタイリッシュな気分を盛り上げてくれる。

こうした電子デバイスは、ライダーの走りを陰で支えてくれる縁の下の力持ちのようなものだ。電子制御はなくても走れるが、あるに越したことはない。特に1290スーパーデュークRほどの超ド級マシンの性能を安全に楽しむためには必要不可欠な装備と言っていいだろう。
さらに言えば、電子デバイスを上手に活用したほうが、より上手くスムーズに走れるのだ。その意味で、1290スーパーデュークRを4輪に例えるならオープントップのスーパーカーのようなものだ。

MotoGPにも名を連ねるKTMの最先端を味わいたい人、フルカウルのSSにネイキッドでガチ勝負を挑みたい人に是非おすすめしたい。

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ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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