ミシュランにとってもレースは走る実験室!?

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

新型モトGP用リヤスリック、2020シーズンに向け発進

2016年以降、モトGPの公式タイヤサプライヤーになっているミシュランですが、たとえワンメイク状態であっても、やはり開発は絶え間なく続いていて、2020シーズンに向け新構造のリヤスリックが投入されるそうです。

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その新スリックは、昨シーズン6月、カタルニアでの公式テストで全ライダーを対象にした初の評価セッションが行われ、以降も公式テストを通して完成度が高められ、マシンやライダーを問わず、ラップタイムや耐久性、安定性が向上しているといいます。

60年代にホンダが世界GPに挑戦し始めたとき、本田宗一郎さんは「レースは走る実験室」と位置づけ、実際に技術的に大革新を遂げたものです。
とは言え、そのことは技術的にも高度化した現在でも当て嵌まるのでしょうか。ましてやタイヤの場合、モトGPと公道では目指すものが異次元だと思えないでもありません。

ところが、ミシュランが昨年末に発表したパワー・エキスペリエンス・シリーズには、モトGPでの技術が見事にフィードバックされていたのです。

パワー・エキスペリエンス・シリーズはモトGP直系

そのシリーズには、サーキットと公道の走行比率の違いによって4種類のタイヤが用意されます。パワースリック2は当然ながらサーキット専用で、パワー5は公道専用と位置づけられます。そして、それらの全てに、モトGP直系の共通の技術的思想を展開、基本構造やコード材質、プロファイルやコンパウンドの分割構造も同じです。

今回、公道とサーキットの走行比率を100/0%としたパワー5と、10/90%とした公道走行可能なレーシングタイヤであるパワーカップ2に試乗する機会に恵まれたのですが、基本特性を同じままに、それぞれが照準とするシチュエーションに適合したものになっていることが、あまりに印象的だったのです。

公道専用にして、サーキット性能が先代のパワーRSよりも高いパワー5

まず、パワー5はパワーRSの後継型と言えます。公道専用とされるだけに、ウェット性能の向上ぶりに目覚ましいものがあります。それでいて、走行比率が15/85%だったパワーRSよりもコーナリング性能が高められていることに驚かされます。一次旋回の回頭性も二次旋回での旋回性も高く、しかも狙い通りにラインをトレースできるのです。

ここで思い出すのは、2016年当初、それまでのブリヂストンと比べ、フロントのグリップに難があるとされながら、早々に対策されていったことです。聞くと、単にフロントのグリップを上げるという対処療法ではなく、前後輪のバランスに心血が注がれたそうです。

パワー5の前後輪が素直にストレスなく転がっていく特性には、やはりモトGPの技術が生かされていると感じたのです。

寛容な走り味はパワー5と変わらないパワーカップ2

パワーカップ2は、寛容なパワー5のように気負いなく走り出せる一方、攻めだすと高い接地感や運動性能を秘めていることに気付き、高次元のコーナリングを可能としてくれます。レーシングタイヤにありがちな先鋭さをひけらかすことなく、高い潜在性能を備えているわけです。

モトGPにおいてライダーが不安に感じる要素を徹底的に排除させる方向で開発が進んでいるそうですが、そのことも市販タイヤにフィードバックされていると見ていいでしょう。
モトGPで培われた基本的な技術コンセプトが、異なるカテゴリーのタイヤに生かされていることに感心させられたのでした。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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