新登場のGIXXER250を大胆に私的考察する

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ジクサー250登場の背景にGSX250Rの存在あり?

東京モーターショーで発表されたジクサー250は、参考出展だけに詳細は未発表です。でも、生産国のインドではすでに夏に発売されており、そのスペックに注目すると大変に興味深いことに気が付きます。

油冷SOHC4バルブ単気筒のジクサーのボア×ストロークはφ76.0×54.9mmで、そのストロークは水冷SOHC2バルブで2気筒のGSX250Rのストローク55.2mmとほとんど同じなのです。つまり、GSX250Rと同じ回転域での走りを楽しめるということです。

GSX250Rは扱いやすさで定評がありますが、高性能な競合モデルと比較して、重く大柄という短所もあります。つまり、GSX250Rの扱いやすさをそのままに、単気筒化による軽量コンパクト化とか低価格化といったメリットを最大限に引き出し、より多くの人にバイクの面白さを知ってもらおうというのが、このジクサーだと推測できるわけです。

単気筒化しても約10%の高出力化を実現

そう考えると、ジクサーのエンジンの造りにも納得させられます。
4バルブ化し、トータルのバルブ数を維持して、新気の充填を維持。超高回転を狙うのでなければ、GSXと同様にSOHCで大丈夫で、そのほうがヘッド回りのコンパクト化と軽量化が可能になります。
それでも、最高出力は2.5ps高い26.5psを得ています。その発生回転数は1000rpm高い9000rpmで、回転数が約10%高くなった分、出力も約10%強力になったと考えていいでしょう。

高回転に向かって立ち上がっていくトルク特性となったことで、ひょっとすると低回転域トルクはいくらか低下しているかもしれませんが、車重が178kgから156kg(カウル付きのSFは161kg)へと10%以上軽くなっているので、トルク・ウェイトレシオは同等を維持、ハンディを感じさせないのではないでしょうか。

油冷のポイントは境界層破壊

エンジンの軽量化には、冷却水を必要としない油冷システムも大きく貢献しています。
スズキの油冷はすでに1985年のGSX-R750に投入されていますが、これは全く新しい進化形です。これまではシリンダヘッドにオイルを噴射するものでしたが、新しいジクサーはヘッドからシリンダ上部にウォータージャケットならぬオイルジャケットを設け、オイルを還流させて冷やすというものです。

ここでポイントとなるのが、温度境界層の破壊です。高温の表面とオイルとの間には温度差があり、表面に温度差が著しく異なる境界層が生じます。この境界層には温度伝達が悪くなる性質があり、冷却効果を阻害します。だから、冷却性能を高めるには境界層を破壊しないといけません。かつての油冷でシリンダヘッドに高圧でオイル噴射させたのはそのためです。

この新しいシステムでは、オイルジャケットの両側の表面にギザギザを設け、境界層を破壊させています。オイルの比熱は水のそれの50%程度なのですが、この境界層破壊によって、水冷に近い冷却効果を得ているそうです。
進歩した生産技術がそれを実現させたとは言え、スズキの技術の蓄積にも感心させられます。

▲チーフエンジニアの野尻哲治さん(左)とエンジン設計の森光二さん

軽くコンパクトでマスは集中

新しいジクサー250はこのクラスで断トツの軽量ぶりです。また、ホイールベースもGSX250Rから85mmも短く、競合車と比べても短い1345mmとなっています。しかも、エンジンはコンパクトでマスが集中していることを伺わせます。ですから、ショートホイールベースの短所を感じさせず、長所を生かしての運動性能の高さも楽しるはずです。

気になる価格は、インドでの価格などを勘案すると、GSX250Rの53万円程度よりも大幅に安い45万円以下を期待していいかと思います。車輛キャラも価格もバイクが身近な存在に近付いた気がするではありませんか。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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