バイクはヘッドパイプが直立(キャスター角0度)でも走れるのだろうか

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

▲キャスター角0度の自転車

自動車技術会で製作された実験自転車

写真の自転車は、多くの人たちに二輪車への興味を深めてもらおうと、自動車技術会が製作したキャスター角0度と、超ロングホイールベースの自転車です。先般、主に4メーカーの若手技術者を対象としたモーターサイクル工学技術講座が開催され、受講生たちが試乗、バイクのディメンジョンについての認識を新たにする機会が用意されました。

▲超ロングホイールベースの自転車

それぞれの分野について各メーカーや専門メーカーのエキスパートによる講義が終わってから、私は特別講演をさせてもらったのですが、実はこの実験車への試乗に尋常ならぬ興味を抱いていました。

キャスター角によってハンドリングがいかに変化するのか、それなりに経験もしてきましたし、分かっているつもりですが、さすがにキャスター角0度(もちろんトレールも0)のものは試したことはありません。第一、実際のバイクでそんなものは怖くて乗れません。でも、自転車だったらオットットで済みそうです。

というわけで、ここで好奇心と緊張感に包まれた試乗記をお伝えしたいと思います。

人間の順応力に感心

まず、キャスター角0度車は、ヘッドパイプを直立させながら前輪位置を同一位置に保つため、ヘッドパイプは前方にブラケットを介してセットされます。そのままではハンドル位置が前方過ぎるので、リンクを介して操舵、ハンドル位置は標準位置のままです。また、フロントフォークの曲がりはなく、トレールも0です。

リンクを介することによる操舵の遊び間、ブラケットを介したことによる剛性不足感、操舵軸中心とハンドル操作軸が異なることによる違和感がありましたが、これには目を瞑りましょう。また、静的にトレールが0でも、寝かせた状態で操舵角が大きくなると、前タイヤのプロファイルの影響で、接地点が前方に移動、トレールがマイナスになって切れ込みが生じるので、コーナーをあまり攻めないことにしましょう。

二輪車には寝かせた方向にステアリングが切れる自動操舵機能があります。が、キャスター角0度車にはそれがありません。ですから、倒れそうになった方向にハンドルを切るという操作が必要になり、バランスを取りながら進むことになります。初めて自転車に乗ったときのようにです。

ところが、多くの受講生を見ていても、程度の差こそあれ、そのうち誰もが無意識にバランスを取ってほとんど真っ直ぐに走れるようになります。見事な順応力です。これは、短時間に操作法を学習したというよりも、人間に備わっている身体操作を芽生えさせた結果ではないでしょうか。脊髄動物の祖先である魚が身体をうねらせて泳ぎ、動物が四つ足歩きをするような動きを、人類が引き継いでいると思われるからです。

それに、200年前に造られた足で地面を蹴って進む初の自転車は、キャスター角は0度だったのですから、先人たちもそれを受け入れてきたのです。四つ足歩きをするように足蹴り自転車を駆り、そこに馬との接点を見出したのかもしれません。

また、このキャスター角0度車を乗るための身体操作は、バイクを積極的に操るスポーツライディングにも通じると、改めて感じたのでした。

ロングホイールベース車の安定性指向を知る

このロングホイールベース車は、車体後部(ペダル軸から後方)を200mm延長、ホイールベースは1428mmになっています。

ホイールベースが長いと、前輪舵角が同じ場合、旋回半径が大きくなります。ですから、やはり小回りしにくくなります。逆に、舵角を大きくして旋回半径が大きくならないようにすることもできますが、キビキビ感が失せてしまうことに変わりはありません。また、舵角が大きくなることに加え、前輪分布荷重が大きくなるので、フロントにはどっしりとした重さがあります。

ホイールベース1428mmは、ほぼリッタースーパースポーツの水準です。ノーマルの自転車よりも安定した乗り味は、スーパースポーツに通じるものもあるわけで、ホイールベースはハンドリングキャラを決定する大きな要素だと思い知らされたのでした。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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