電子制御サスに新ベンチマーク出現

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

▲Ninja H2 SX SE+「EC Suspension」

2年前の私の所見は完全に覆った

私は2年余り前、このシリーズで「現在、注目を浴びている電子制御サスは完璧ではない」というコラムを書きました。確かに電子制御サスペンション(以下、電制サス)は魅力的で大きなメリットもあるのですが、サスペンション性能そのものに注目すると、2年前の時点では決して満足できるものではなかったのです。

しかし、技術の進歩には凄まじいものがあります。日本のショーワが開発、EERAと名付けられた電制サスは、カワサキの2019年型ZX-10R SE、H2 SX SE+、ヴェルシス1000SEに採用されたのですが、それらは既存のスウェーデンのオーリンズ製、ドイツのザックス製にはあった電制サスのネガティブ面が一掃されており、驚きを隠しきれなかったのです。

▲Ninja ZX-10R SE

▲Ninja H2 SX SE+

▲VERSYS 1000 SE

こうなると、私は2年前の意見を取り消さなければなりません。そればかりか、これを電制サスにとってのベンチマークとしていいと考えるほどだったのです。

徹底追及された応答性

では、このEERA(カワサキではKECSと銘打たれる)は、いかに優れていて、そして、その良さをどのように獲得したというのでしょうか。

ここで言う電制サス、つまりセミアクティブサスは、走行条件に合わせて逐次、電子制御で減衰力を最適状態に調整していくというものです。ですから、感知した正確なマシンの状態を即座にサスペンションの調整機構に送り、サスはそれを遅延なくセッティングに反映させないといけません。

既存品はその応答性に関して、私にとっては満足できるものでなかったのです。

独自の直動型ソレノイドバルブ

電制サスでは、電気信号によってバルブを作動させ、減衰力を逐次、最適化させていきます。
オーリンズ製では、減衰力切り換えにステッピングモーターを用いています。段階的に回転させることができるというものですが、電制サス向きには応答性が完璧でないことも否めません。

一方のザックス製は、応答性に有利なソレノイドバルブを用いています。コイルへの電流で生じる磁力を受けた中央の鉄心がスライドするというものです。ただ、ダンパーが構造上、ピストンスピードの低速域で減衰力を発生するオリフィス部と、別構造の中高速域で機能する板バルブ部が直列配置されているので、中高速側でのオイルの流れが低速側を経たものになり、応答性が遅れがちになります。

その点、EERAのバルブ機構は、基本バルブを最高峰のバランスフリータイプとし、それと並列に直動型ソレノイドバルブによる調整用ダンパーを配置しているので、応答性に優れるというわけです。

▲Ninja H2 SX SE+「EC Suspension」

ストロークセンサーの効果も絶大

EERAでは、サスユニットにストロークセンサーを設けていることも大きな特徴です。
サスの動きを正確にセンシングするには、ストロークセンサーが必要です。オーリンズ製はIMU(慣性計測ユニット)でピッチング状態を、ザックス製ではバネ上とバネ下のGセンサーで動きを把握しようとしていますが、完全ではありません。

レーサーならいざ知らず、一般市販車の場合はストロークセンサーが損傷する恐れもあるので、その装着が困難だったのですが、EERAはユニットに内蔵するという方法で対処したのです。

寛容性を増したサス性能や、切り換えによるハンドリングキャラの変貌ぶりなど、別次元へと進化していたショーワの電制サスだったのです。

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和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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