最高だった鈴鹿8耐2019は最終的に最高の結末を迎えた

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

※画像はKawasaki Press Serviceより

最悪の結末を迎えそうだった最初の暫定結果

鈴鹿8耐はもはや耐久レースではなく、「1時間のスプリントレース×8本」と言われるようになったのは、20年ぐらい前からでした。でも、今年ほどそのものだったことはありません。ライダーの能力の凄さに感激し、もう目が離せませんでした。

ところが残り2分、20秒近いリードを稼いでいたカワサキが、最終周回と思われたS字で、他車が捲いたオイルに足をすくわれ転倒。素晴らしい結末を期待していただけに、衝撃的でした。

そして、出された結果は、カワサキは理不尽にも失格で、2位を走っていたヤマハが優勝というものでした。私も含め、最高のレースが最悪の結末を迎えたと感じた人がほとんどだったはずです。決してヤマハの5連覇を阻止したかったからではありません。内容的に勝者がカワサキであることは明らかだったからです。

最終周回での転倒が一般的なものだったら、ヤマハの優勝に異存はありません。でも、あれは他車のオイルによるものでした。しかも、他車がエンジンブローした時点で赤旗とすべきと思えたほどです。

レース後の表彰台には、ヤマハチームが中央に上がりました。ヤマハファンと喜びを分かち合いたいという配慮があったにせよ、ライダーに加え社長までがお立ち台に上がる姿には違和感を覚えたものです。

最終結果は誰もが納得できるものに

でも、裁定は2時間後に覆り、カワサキが優勝となりました。
最初にカワサキが失格になったのは、「レース終了後に5分以内にピットに戻らなくてはならない」というFIMのモトGPやSBKに適合されるレギュレーションに抵触したから。そして、最終的に優勝に落ち着いたのは、耐久レースのレギュレーションにその条文はなかったからです。

物議を醸し、後味の悪さを指摘する向きもありますが、私はこの裁定に最高の結末を感じました。こうした裁定は、誰にとっても納得できるものでないといけないのです。レギュレーション主導ではなく、然るべき結果に合わせてレギュレーションが適用されたわけで、その点で素晴らしいと感じたのです。

この判断がレース直後になされなかったのは残念ですが、ヤマハもこれを受け入れるという大人の対応を見せ、最終的に後味は悪くなかったと思います。

さらに言えば、裁判所の判決に不可解で現実離れしたものを見掛ける閉塞感のある社会に、風穴を開けてくれた気さえしたのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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