新型S1000RRは直4スーパースポーツの革命児か

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

BMWから登場する新型S1000RRには、国産インライン4スーパースポーツを超越しようとの新しい取り組みが見られます。BMWは10年前に初代型を登場させ、スーパーバイク世界選手権にも参戦する中で、既存のインライン4マシンの長所と短所を研究、導き出した結論がこの新型ではないでしょうか。

車重197kgにして最高出力207psというスペック以前に、その意味で画期的で革新的なのです。
ここでは、その技術ポリシーに3点ばかり、注目してみましょう。

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その1、既存の常識を打ち破ったフレーム

フレームは、一時期、高剛性化によってハンドリング性能を高めてきましたが、昨今はいかにしなやかにするかがテーマになっていると思います。しなやかだと人当たりが良く、寛容性を高めてくれるし、しなり具合がマシンからの情報源にもなるからです。

ところが、しなり方が悪いと、安定性を始め様々な問題を誘発します。その問題を改善するための方策の一つが、フレームの捩じり中心をヘッドパイプとピボットを結ぶセンター上に置くというものです。芯がぶれにくいからです。そのため、エンジンを剛性部材として利用し、フレームそのものは弱くするというのが昨今の傾向です。

昔のツインチューブタイプのように、高剛性のメインチューブに剛性を依存すると、そこを中心に捩じれ、捩じり中心が高位置になります。すると、同じだけ捩じれても接地点の移動量が大きくなり、問題を引き起こしやすくなるというわけです。

さて、S1000RRのフレームは、フレックス(柔軟という意味)フレームと名付けられ、いかにもきゃしゃです。そればかりか、このフレームは、フレーム設計の常識から逸脱していると思えます。

ブレーキングしてのコーナーへの突っ込みで、フレームがどう撓むかイメージしてください。ブレーキ力でホイールベースを短くする方向にフレームは縦曲げを受けます。すると、“く”の字に曲がったメインメンバーは曲げに抵抗するも、耐え切れず屈曲点の左右方向へのヅレを繰り返すことになりかねません。

ところが、このフレックスフレームでは、そうならないようにエンジンがしっかり踏ん張ってくれます。そのため、エンジンは前2点(1点のものが多い)、後ろ2点で強固にマウントされています。

つまり、フレームのしなりによる情報量がこの上なく豊かなうえに、腰があってブレないと期待できるのです。

その2、接地感を濃厚に伝えるリヤサス

リヤサスは、30年以上前のスズキのフルフローターに似たリンク方式で、フルフローター・プロ・キネマティクス(運動力学という意味)と名付けられます。

リヤサスは、ライダーに伝わるリヤショックからの入力が接地感として感じられるとも言われます。その意味で、リヤショックをスイングアームで受けるホンダのユニットプロリンクや、ユニットを斜めに置くカワサキ方式は、適当でないとの見方もできます。

でも、ショック上端をベルクランクで押し、下端をスイングアームで支持するS1000RRの方式であれば、ベルクランク支持点にショックからの力とプッシュロッドのからの力が両方作用し、強烈な接地感を期待できます。しかも、一般的なボトムリンク式のように、ロッド支持点やピボットに横向きの力が掛からず、より接地感が鮮明になるというわけです。

その3、台形型トルクカーブを実現する可変バルブシステム


超高性能車にとって理想的なトルクカーブは、台形型でしょう。ピーク域に向かってトルクはリニアに上昇、加速度は一定の度合いで高まりトラクションを掴みやすく、ピーク域では加速度が一定になり、フルパワーも生かしやすくなるからです。

S1000RRには可変バルブシステムが投入され、豊かな低中速トルクとピーク域の台形特性を実現しています。何しろ、6000~14000rpmの広範囲が、ピークの90%以上のトルクに覆われたフラット域なのですから、その点でも既存のエンジンを超越しています。

私は、このコラムをS1000RRの試乗に渡欧する前日に書きながら、期待に胸を高まらせています。これが実際にどうだったのかは、またの機会にお伝えするとしましょう。

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和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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