次世代剛性チューンが目指すは、一つに減衰効果獲得か

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

スズキのモトGPマシンGSX-RRのカーボン張りフレームの狙いとは

好調が伝えられるスズキのモトGPマシン、GSX-RRのフレームには昨シーズン中盤以降、メインメンバー部にカーボンファイバーが張られています。また、アッパーブラケットの上面にもカーボンが張られています。張られていると言っても、接着剤で張り付けるのではなく、樹脂を含侵させた炭素繊維を熱で硬化させるドライカーボンの製法と同様に、炉の中で硬化させたものと思われます。

その効果については、微妙な剛性調整だと言われているようです。炭素繊維の方向によって剛性は左右されるのですから、その可能性も高いと思われます。でも、そのためなら、炭素繊維はヘッドパイプからピボットまで連続して覆うべきで、中央部だけでは不十分です。

そこで私の頭に閃いた考察は、フレームのしなりによる振動を収束させる減衰効果獲得ではないかということでした。

コラム「BMW・HP4レースへのカーボン採用の狙いは軽量化だけではなかった・その2」で紹介したように、カーボンファイバーは振動減衰効果が高く、柔軟にしなっても、それが増幅することなく、挙動が安定していたのです。その経験から、GSX-RRもその効果を狙っているのではないかと思った次第です。物性が異なるものの複合材ですから、共振しにくいという見方もできるでしょう。

実際、スズキのエンジニアによると、コーナーに向けてブレーキングして奥まで突っ込んだ時の安定性が向上したとのことです。車体がヨレても、その挙動が連続することなく、収まってくれるということではないかと思います。また、タイヤをグリップ限界まで使ったとき、細かい断続的に滑りとフラームが共振しにくいということもあるのかもしれません。

減衰効果を高めるパーツもすでに市販されている

四輪のスポーツカーでは、エンジンルームを横切るように左右のフロントサス(ストラット)を連結し、ボディ剛性を高めるストラットタワーバーが用いられることがあります。それが近年では、単なる補強メーバーではなく、そこにダンパーを用いるものが普及、メーカーから純正パーツとしても用意されています。減衰効果を高めているのです。

これと同じ考え方で、ワイズギヤからはヤマハのいくつかのモデル用に、ダンパー付き補強パーツが市販されています。SR400で試したところ、劇的な高速安定性の向上に驚かされたものです。

▲SR400

▲Serow
▲TMAX

そんなわけで、将来のバイクの車体は、こうしたディバイスに依存することなく、優れた剛性特性が得られるように進化していくと思えてならないのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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