ライテク都市伝説を斬る その16 [コーナーでブレーキとアクセルはグリップと相談して]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

コーナー進入でブレーキングを残すことは大切だが

コーナーに進入するとき、マシンを曲げるためには、フロントブレーキを残すことが大切だと言われます。確かにその通りです。ブレーキングでフロントに移動した荷重を逃がすことなく、タイヤにたくさん仕事をさせたいし、車両姿勢が前下がり、後ろ上がりとなることで、キャスター角の立った曲げやすい状況となるからです。

でも、マシンがバンクし始め、フロントタイヤが曲がる力を発生することで、ブレーキングに費やすことのできるグリップ力は低下し始めます。ブレーキレバーを強く握ったままでは、いわゆる握りゴケは避けられません。

実際、どこまでブレーキングを続けていいのか、怖くて分からないという声も聞きます。それに関し、グリップ力と相談してレバーを握ればいいとも言われます。だけど、それでは神経をすり減らすばかりで、楽しくはないし、リズムにも乗れません。
本当は、決して難しいことはないのです。

引かば押せ、押さば引け

不定期連載「ライテク都市伝説を斬る」の中で私は、コーナーへのアプローチから旋回部分への身体操作に関して、テイクバック、一次旋回にあたるダウンスイング、二次旋回にあたるフォロースルーの部分があると書いてきました。

テイクバックは身体の重心をアウト側に移動して、体重移動のスパンを大きく稼ぐとともにタメを入れる部分で、GPシーンではブレーキングで出していた足を元に戻し、寝かし込むまでのタイミングに相当します。

ここでは、しっかりをブレーキングを残すことができます。徐々にバンクしつつあり、ブレーキングのためのグリップ力は100%ではないのですが、身体がアウト側に移動中なので、たとえフロントがグリップ限界に達しても、自ずと対処できてしまうからです。

そこから、一次旋回に入ると、レバーへの握力はスーッと抜いていくことになります。するとグリップ限界に達しても、ブレーキ力を抜く過程であるため、やはり自ずと対処できます。
ライディングのリズムに同調させればいいのであって、何も相談しなくていいのです。

190218_01

▼段階別静止画

スロットルも走りにシンクロさせて開く

二次旋回では、スロットルを当てながら、荷重をフロントからリヤに移動させ、クリップを目指します。ですから、二次旋回に入るやブレーキングは完全にリリースされます。

乗り手の意識もフロントからリヤに移動し、リヤへの接地感が濃厚になっていきます。グリップ状況が良くない昔のタイヤや路面だと、リヤがヌルヌルと滑り出しグリップと相談しなければならなかったのですが、マシンへの確信度が高まるという意味で、躊躇を伴う相談ではありません。

そして、クリップからの立ち上がりでは、スロットルはリニアに開かれていきます。マシンは起こされていくので、たとえ滑ったとしても、マシンの動きはそれを回復させる方向にあるので、制御不能になることはないわけです。

190218_02

▼段階別静止画

GPライダーの走りをデータロガーで調べると、ブレーキを握っているかスロットルを開いているかで、その繋がり方もレバー入力が減じて0になるや、スロットルが徐々に開かれ、どちらでもない空走区間はほとんどありません。それは、ブレーキングやスロットル操作がマシンコントロールにシンクロしているからに他なりません。

そのことがそのままワインディングでの走りに通用するわけではないにしろ、安全に速くスムーズに走ることのヒントになるはずです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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