のめり込むほどに熱いバイクライフを!(下)~ 柏秀樹のバイクライフ論

【柏秀樹:モータージャーナリスト】

前回:のめり込むほどに熱いバイクライフを!(上)

▲タイガーエクスプローラー スペイン試乗会にて

ビッグオフの魅力

ビッグタンクのバイクの話に戻るけれど、ビッグタンクによって威風堂々の体格が生まれ、地平線の遥か先まで行けるタフなイメージ。ハンドル幅が少し広めで、グリップ位置が高めでアップライトな運転姿勢。風から身を守るスクリーンで疲れ知らず。

一般的なロードスポーツ車よりも前後のサスストロークが長めで、路面からの衝撃も少ない。まさに乗り味は「ほんわか」。通常は17インチの前後ホイールに対して、ビッグオフの主流は前輪19インチ。わずか2インチの差ってどうなのよ、と思われるかもしれない。車輪サイズの違いは遠心力の差。大きめのホイールはわずかにまったりの味。それが私の好み。

グイグイ・クルクル曲がるなら前後17インチだろうが、大きいホイールによって「間合い」が生まれる。それこそが味だ。曲がる作業の手応えが少し大きいと、操る楽しさが倍増してくる。この間合いこそが、より豊かな気持ちへと心を化学変化させるのだ。

究極の旅バイクとは?

速さより、ほんのちょっとまったりした一瞬の楽しさと程よいリズムで駆け抜ける大地。絨毯の上を走るような、しなやかなサスを楽しみながら、突然目の前に現れた路面の凹凸を、サラリといなしてくれる。

それならきっと疲れない。凛とした気持ちと体のまま、自由に走り続けられる究極の旅バイクこそ、ラリーバイクでもあるのだ。旅の相棒はまさしくこれ、と私は定義している。あまた数あるビッグオフの中で、私の場合はタイガーという選択をしているだけ。

▲タイガー955i溺愛時代。ビッグタンクが好きでビッグオフにはまりタイガーへ。それ以前はアフリカツインのスペシャルタンク装備のオブジェクトダカール仕様にも乗っていた

自分が主役でいられるバイク

年2回は3時間走りっぱなしのスポーツランド菅生や富士SWでもタイガーを楽しんでいる。スーパースポーツ車の直線速度や、コーナリング性能には及ばないけれど、乗り方次第でタイガーなりに十分速く走らせられるし、楽しい。

どんなバイクでも「運転を創意工夫」することで「楽しい」が拡大できる。主役はいつもバイクではなくて自分なんだ、というワクワクするような醍醐味だ。タイムを短縮するためにバイクが存在するのではなく、タイムから解放され操る楽しさのためにこそバイクがある。と、私なら定義したい。だから私の場合はいかなる場所でも主役が自分で居られるビッグオフというわけ。

柏秀樹は何故ビックオフに乗っている?

あえてビッグオフという理由は、もちろん他にもある。前後サスのストローク量が・・・車体の姿勢変化をスロットルとブレーキで・・などと話し始めたらエンドレス。

ここでお伝えしたいことは、そのエンドレス。何時間でもニタニタしながら、惚れたバイクの自慢話&ノロケ話ができること。好きなバイクを手に入れる、直前のワクワクを友と語り合いながら、大好きなバイクを手に入れてからも、あーでもない、こーでもない、と気のおけない仲間とまた熱く語り合えること。

実はそれがビッグオフでなくていい。GPマシンに限りなく近いロードスポーツでもいい。風をダイレクトに浴びるネイキッドでもいい。でこぼこ道を好んで走るオフロードバイクでもいい。すべての選択に間違いはない。ぞっこんに惚れるバイクに出会えさえすれば、もうそれだけで正義だ。バイクライフの王道を行っているのだ。

▲レース規則350km以上の航続距離だった1996年のダカール・ラリーで使ったヤマハモーターフランス製XTZ850TRXのタンクは4分割52Lという巨大なものだった

自分がしたいことを絞り込むこと

きっとこの先にある、今以上に素敵なバイクとの出会い。そのためには、あれもこれも、と欲張らず「自分がしたいことを絞り込むこと」で、相思相愛のような、最高に美しいバイクとの関係が生まれると思う。自己限定は不要だが、あれもこれも欲張るより、ちょっとテリトリーを狭めること。それは少し勇気がいることかもしれないけれど、バイクの本質、バイクライディングのエッセンスが、より鮮明に深く見えてくるかもしれない。

さらに、ひとつの分野にのめり込むことは、そのまま他の分野にのめり込んでいる人を今以上に温かな目で見られるようになるかもしれない。排他的にならなければ、きっとあなたのバイクはもっと素晴らしいものになるに違いない。

柏秀樹

柏秀樹 モータージャーナリスト

投稿者プロフィール

1954年2月24日、山口県岩国市生まれ。大学院生時代に作家片岡義男と出会い、バイクサウンドを収録したLPレコード『W1ツーリング」を制作して以来、クルマのサウンドを含めた数多くのLPやCDを手がけ、世界で最も厳しいダカールラリーなどに参戦しながらバイク専門誌・一般雑誌・新聞・単行本執筆のほか各地各企業向けに講演・実技指導を行なっている。
自身のライフワークであるライディングスクールKRSを2007年に開校。開催数1000回を超え、受講生数は延2万人以上を数える。65台に及ぶバイク遍歴とバイクで走った距離120万km以上も含めて国内外オンロードやオフロードで経験してきた膨大な知識やノウハウを次世代へ伝えることに腐心。
ベストセラーのライテクDVD「ビッグマシンを自在に操る」シリーズ5本。近著、モーターマガジン社刊「IQライディング」を含めて著書30冊に及ぶ。

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