賀曽利隆の「ツーリングマップル・ツーリング」( 第1回目)ツーリングマップル関東甲信越 P18 小田原編

【賀曽利隆:冒険家・ツーリングジャーナリスト】

前回:賀曽利隆の「70代編日本一周」第2部(下)

開いたページをとことん走りつくす

多くのツーリングライダーのみなさんが愛用されている『ツーリングマップル』(昭文社)を使っての「ツーリングマップル・ツーリング」は、じつにおもしろい。ぼくは今、それにはまっている。
それはどういうものかというと、『ツーリングマップル』を開いたページにトコトンこだわり、そのページ内を走りつくすというもの。
見開きページの片側だけなら日帰りでまわれるし、両側のページなら1泊2日ツーリングに最適。何の先入観もなしに、パッと開いたページを出たとこ勝負でまわるというのもおもしろい。

走りなれた道も新鮮な気分に

▲『ツーリングマップ関東』の18ページ(小田原)を開いてプランニング

ということで「ツーリングマップル・ツーリング」の第1回目として、我が家(神奈川県伊勢原市)の周辺をまわってみた。昨年の9月6日のことだ。
相棒のVストローム250で『ツーリングマップル関東甲信越』の「P18(小田原)」を走りまわった。出発したのは9時。朝食を家で食べ、ゆったりまったり気分での出発だった。

▲伊勢原を出発。国道246号を西へ

「P18」のメインルートというと国道246号になる。まずはその国道246号を西へ。走りなれた道も「ツーリングマップル・ツーリング」で走るとなると、新鮮な気分になれるから不思議だ。

善波峠のトンネルを抜けて秦野盆地に入っていく。伊勢原市と秦野市の境の善波峠には旧道のトンネルも残っている。交通量の多い新道から旧道に入ると、ほとんど交通量はなくなり、緑で覆われた風景を楽しめる。

▲国道246号の善波峠旧道。善波峠の古道も残っている

▲善波峠からの眺め。秦野盆地の向こうに箱根の山々が見えている

さらには古道の峠道もある。古道の峠には常夜灯が残されている。3世代の峠道を見られる善波峠だ。

秦野盆地の秦野、渋沢と通り、松田から山北へ。
11時15分、国道246号の神奈川・静岡県境に到着。伊勢原から32キロの地点。ここまでが「P18(小田原)」の範囲なので、静岡県の小山町に入ったところで折り返した。

▲松田からさらに国道246号を行く

▲国道246号の神奈川・静岡県境に到着

神奈川・静岡の県境から清水橋の交差点まで戻ると、左折して県道76号を行く。10キロほどで三保ダムのダム湖、丹沢湖が見えてくる。丹沢の山々に囲まれた丹沢湖は目に残る。丹沢湖にかかる永歳橋を渡り、さらに県道76号を行く。

▲丹沢の山々に囲まれた三保ダムの丹沢湖

「信玄の隠し湯」で知られる中川温泉を通り、箒沢の集落まで行く。ここには推定樹齢2000年の箒杉がある。

▲箒沢の「箒杉」。推定樹齢2000年!

中川温泉に戻ると、BOLTに乗るうさぎ猫さんに出会った。うさぎ猫さんとは一緒に中川温泉の「ぶなの湯」に入った。湯から上がると、うさぎ猫さんと一緒に走る。これもまた良し!

▲中川温泉での「うさぎ猫さん」との出会い

▲「信玄の隠し湯」で知られる中川温泉

▲中川温泉の「ぶなの湯」に入る

国道246号に戻ると、旧道で山北の町に入り、JR御殿場線の山北駅前でVストローム250を止めた。国府津(神奈川)と沼津(沼津)を結ぶJR御殿場線は今はローカル線だが、昭和9年(1934年)の丹那トンネル完成以前、御殿場線は東海道本線だった。

▲JR御殿場線の山北駅

当時の山北は「鉄道の町」として栄えていた。そんな山北駅で動態保存されている蒸気機関車のD52を見る。そのあと駅前食堂「ポッポ駅前屋」で昼食。趣のある店構えと店の内部。ここでは日替定食の「カツカレー」を食べた。

▲山北駅前の「ぽっぽ駅前屋根」で昼食

▲「ぽっぽ駅前屋」は風情のあるお店だ

▲「ぽっぽ駅前屋」の日替定食。この日は「カツカレー」

14時、山北駅前を出発し、国道246号で松田まで戻った。松田からは県道78号で足柄峠へ。

▲国道246号から松田の町に入っていく

関本(南足柄市)の町から足柄峠を目指して登っていく。茶畑を見かけるようになるが、この一帯は「足柄茶」で知られる銘茶の産地。正面には矢倉岳(870m)が聳えている。
足柄峠下の集落が矢倉沢なので、足柄峠は矢倉沢峠といわれることもある。矢倉沢には慶長年間から明治維新までの260年間、関所が置かれた。箱根の裏街道の関所で、「入り鉄砲に出女」といわれた厳しいチェックの箱根の関所を避け、この矢倉沢の関所を通る旅人、とくに女の旅人が多かったという。

▲松田から県道78号で足柄峠へ。矢倉岳が見えてくる

松田から17キロ走って足柄峠に到達。展望ポイントからの眺めはすばらしい。足元の足柄平野の真ん中をキラキラ光りながら酒匂川が流れている。
左手には丹沢の山々が連なり、そこから延びる大磯丘陵がそのままスーッと相模湾に落ちている。江ノ島が豆粒のように見える。三浦半島の向こうには房総半島が見える。峠の反対側に立つと、風景はガラリと変わり、富士山が目の中いっぱいに飛び込んでくる。

神奈川・静岡の県境を過ぎたところには、古代の足柄の関跡がある。足柄峠を越える「足柄道」は古代日本の官道で、箱根峠以前の東海道の峠だった。

▲足柄峠の「古代足柄の関跡」。「おじぎ石」が残っている

この足柄峠が古代日本を東国と西国に分けていたといってもいいほどで、奈良時代に書かれた『常陸風土記』には「足柄峠を境にして東を関東、西を関西という」といった記述がある。
その名残は今でも濃く残っている。たとえば甲子園の高校野球で関東の高校が優勝すると、アナウンサーは「優勝旗は箱根の山を越えました」といった表現をするが、その「箱根の山」というのは足柄峠のことだ。
また関東を「坂東(ばんどう)」ともいうが、それも足柄峠(足柄の坂。当時は峠ではなく坂が一般的)の東の世界という意味である。

足柄峠で折り返し、関本まで下っていく。町の中心にある伊豆箱根鉄道大雄山線の終点、大雄山駅前でVストローム250を止めた。
さすが足柄、駅前には熊にまたがった金太郎像が建っている。「まさかり かついだ 金太郎…」の童謡で誰もが知っている金太郎は、後の平安後期の武将、坂田金時のことで、源頼光に仕え、その四天王の一人として勇名を馳せた。武士の勢力がグッと伸びる時代のことだった。

▲伊豆箱根鉄道大雄山線の終着駅の大雄山駅

▲大雄山駅前の金太郎像

大雄山駅前からは大雄山最乗寺まで行ってみる。最乗寺は箱根外輪山の明神ヶ岳の山裾にある曹洞宗の寺で、本山の永平寺や鶴見の総持寺に次ぐ格式を持っている。と同時に、「道了さん」や「天狗のお寺」でもよく知られている。

関本の町並みを抜け出るとすぐに登り坂になり、目の前には箱根の山並みが連なっている。さらに登ると道の両側は見事な杉並木に変わり、深山幽谷の地に入っていく。駐車場にVストローム250を止め、最乗寺の本堂を参拝する。そのあと道了尊の天狗様や天狗様のはく大下駄を見てまわった。世界一の大下駄もある。

▲大雄山最乗寺を参拝する

▲大雄山最乗寺の天狗像。ここは天狗様の寺

▲大雄山最乗寺の大下駄の前に立つ「うさぎ猫さん」

最乗寺は応永元年(1394年)に了庵が開山したといわれるが、そのときに、怪力を存分に発揮してして働いたのが弟子の道了。道了は師が昇天すると、「私の務めは終わった。これからは、外からこの寺を守護するであろう」と告げ、天狗になって飛び去ったという。人々の心の中には道了の強さがいつまでも心に残り、天狗様は信仰の対象になっていった。
最乗寺から大雄山駅に戻ると、県道74号で小田原へ。

その途中では二宮尊徳の生家を見学。小田原に着くと、小田原城を見る。小田原は戦国時代の東国の雄、北条五代の城下町。北条早雲に始まり、氏綱、氏康、氏政、氏直と、100年ほど続いた北条氏の時代は、東の小田原、西の山口(大内氏の城下町)といわれたほど。小田原はおおいなる繁栄を謳歌した。
北条氏が豊臣軍団に滅ぼされ、江戸時代に入ると、小田原は大久保氏12万石の城下町になった。

▲小田原に到着。城下町小田原のシンボルの小田原城を見る

夕暮れの小田原の町でうさぎ猫さんと別れると、国道1号で国府津、二宮、大磯を通り、平塚へ。平塚から県道61号で伊勢原へ。最後は伊勢原から国道246号で厚木まで行き、小田急の本厚木駅前で折り返し、20時30分、伊勢原に戻った。

全行程167キロ。『ツーリングマップル関東』の18ページの1ページだけで、これだけ楽しめるのだ。

▲国道246号で「伊勢原~厚木」を往復して伊勢原に戻った

賀曽利隆

賀曽利隆 冒険家・ツーリングジャーナリスト

投稿者プロフィール

1947年東京生まれ。
1968年から2年間をかけてアフリカを一周したのを皮切りに、アジア、ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカ、南アメリカと、バイクで世界の6大陸を駆けめぐる。
1975年の結婚後も旅をつづけ、赤ん坊連れでの「シベリア横断→サハラ砂漠縦断」を成しとげる。
1980年、鈴木忠男さん、風間深志さんとバイクでキリマンジャロ挑戦。1982年には風間深志さんと「パリ→ダカールラリー」に日本人ライダー初の参戦を果たす。
1987年~1988年には「サハラ砂漠往復縦断」を成しとげる。
「30年代編日本一周」以降、10年ごとの「年代編日本一周」を繰り返し、2018年12月31日には1年4ヵ月に及ぶ「70代編日本一周」を終えた。
「年代編日本一周」とは別に、「島めぐり日本一周」、「温泉めぐり日本一周」、「林道日本一周」の「テーマ編日本一周」もおこなっている。2006年~2007年の「温泉めぐり日本一周」では1年間で3,063湯の温泉(温泉地)に入り、ギネスの世界記録に認定されている。『ツーリングマップル』の「東北」担当で、東北の道という道を精力的に走りまわっている。モットーは「生涯旅人!」

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