これからはステアリングダンパーがハンドリングに影響する要素となる?

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

ハンドリングには様々な要素が関わっている

バイクのハンドリングには、バイクを構成している全ての要素が関わっています。とは言え、最も支配的なのは、車体、それもフレームの剛性だと私は考えます。その剛性バランスやしなり方で、かなり決まってしまうからです。

もちろん、ディメンジョンや重量バランスも大切ですし、タイヤによって根本的なキャラが決まってきます。ライディングポジションによってもバイクが別物のようになってきます。サスペンションも大切で、他の要素から考えるとアレンジ程度という見方もできますが、これが悪いとまともに走れません。また、エンジン特性、特にスロットルレスポンスによってもハンドリングは大きく変わってきます。

これら全てのマッチングによって、バイクのハンドリングは完成度を高めていくのです。

補助的な役割を担ってきたステアリングダンパー

ステアリングダンパー(以下、ステダン)も、ハンドリングに影響を及ぼす要素の一つでしょう。そもそもステダンは、ステアリングの激しい振れを、減衰力、つまり抵抗を与えることで抑えるものです。そのため、レーシングマシンには古くから装着されてきましたし、市販スーパースポーツに標準装着されることも珍しくありません。

でも、このステダンにはネガもあります。通常時のステアリングの自然な動きを阻害し、自動操舵機能を抑制してしまうからです。低速時にバランス取りしにくくなったり、素直にコーナーに入れなくなってしまうのです。ですから、ファッション的な狙いだけで装着してはいけないものなのです。

そのため、電子制御式ステアリングダンパーでは、ソレノイドバルブの切り換えによって低中速時での減衰力を抑え、一方で同じ車速であっても加速時は減衰力を与えて制振効果を高めています。ネガを出さず、効果を高めているのです。

ステダンには舵の動きを調整する効果もある

ただ、ステダンはハンドリングへの決定的な要素ではないと考えますが、ステアリングの切れ込み具合を調整する働きもあります。モト・グッチにはそれを利用したモデルもあります。V11がそうでした。タイトなコーナーをキビキビと小気味良く走れる持ち味があって、切れ角も大きめで小回りが効くのですが、すると、舵角が小さい領域で切れ味を出しても、切れ角一杯辺りでストッパーに向けて切れ込みが強くなりがちです。でも、それがないのです。ステダンがその切れ込みを抑えているというのが私の見解です。

キャスター角やフォークオフセット、トレールは(広義に考えれば先に書いたすべての要素も含めて)、そうした事象も踏まえて決定されるのですが、V11では小気味良さ感重視でそれらが決められ、ステダンがそのネガを抑えていることになります。

SHOWAのイーラ・ステアリングはステダンの革新児かも

そう考えたとき、先のEICMAでSHOWAが発表したイーラ・ステアリングには、これまでにないステダンの効用を見出せる予感があります。SHOWAのブースでは、ボタン操作で減衰力を変え、操舵フィーリングも体感できる写真のデモ機も用意されていました。これは電子制御式であることは同じでも、既存のものとは一線を画しています。

まず構造が、違います。一般的なものはピストンにあるオリフィスをオイルが通過する抵抗で減衰力を得ていますが、これは、ショーワの電子制御サスに準じたバルブ機構を備えています。減衰力特性の自由度が高いうえに、その特性を電子制御できるのです。

そして、電子制御のための情報源が、既存のものは車速センサーのみになりますが、イーラ・ステアリングでは、車体の運動状態を検知するIMU(慣性計測装置)やストロークセンサーが加わります。車体が暴れたとき、バンク角の大小、加減速の状態に合わせ、さらにステダンのストローク位置(つまりハンドル切れ角)によって、減衰力を最適化できるわけです。

すべての要素とのマッチングによって、バイクのハンドリングをさらに高次元化できる可能性を感じたのでした。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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