ライテク都市伝説を斬る その15 [コーナーは左右対称に?]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

※画像出典元:motogp.com

左右コーナーで基本的な身体操作は同じ

コーナーの左右には得手不得手があり、不得手をいかに克服していくかが、多くのライダーにとってテーマの一つかもしれません。

私自身、そのことに悩んだこともあり、30年前の著書「ライディングを科学する」では、右コーナーは遠心力で論理的思考の左脳に血液が集まり、考え過ぎることが一因との仮説を発表したことがあります。でも、それは、右コーナリング中に違和感の理由を考えていたに過ぎなかったのかもしれません。

それはともかく、このコラムで度々書いてきたように、私はコーナリングにおける身体操作は、「走る、打つ、投げる」というスポーツの基本要素に準じていると考えています。つまり、股関節を起点に骨盤が動いて腰が入り、頭に向かって動きが背骨を伝播していくように伝わり、体重移動していくのです。

日本人の約90%は右利きで、子供のころからボール投げで右投げの身体操作は身に染み付いているので、左コーナーはこなしやすいのです。でも、右コーナーでは経験してこなかった身体操作が求められるのです。

ライディングスクールで、右コーナーが苦手という人に左投げの格好をやらせてみると、多くは身体をどう動かしていいか分からないのです。これを練習することで、苦手の右コーナーを克服できることもままあります。

それでも、左右に違和感はありがち

私の場合、左右コーナーの得手不得手はないのですが、ただ、左右で違和感を覚えることはあります。左コーナーがうまくいった感覚で右コーナーに入っていくと、左コーナーのようにはうまくいかず、また、その逆の場合もあります。

具体的にその状態に注目すると、違和感そのものも左右で異質です。左コーナーがうまくいかないときは、体重移動しようにもつっかえ棒が入ったかのように、体重移動が止められてしまいがちです。また、右コーナーがうまくいかないときは、寝かし込みにしたがってマシンとの一体感が損なわれます。これは多くの人にとっても、同じはずです。

GPライダーだって左右のコーナリングフォームは異なる

古くは、バリー・シーンのコーナリングフォームが左右で異なることが話題になったことがあります。また、最も極端な例として、マイケル・ドゥーハンがいました。今の現役ライダーにしても、左右で微妙に異なります。

傾向として、左コーナーはリーンアウト気味で、右コーナーはリーンイン気味です。また、左コーナーが前乗り気味であることからすると、右コーナーは後乗りです。

ドゥーハンの場合は、左はダートトラックばりのリーンアウトなのに、右は普通のロードレーススタイルでした。現役ライダーも、極端に頭がイン側に入るフォームになるのは右コーナーで、左コーナーはそれよりいくらか上体が起きています。

※画像出典元:motogp.com

これは、人間の身体構造によるものなのです。

人間の身体は右側が重い

人体の重量バランスは左右対称ではありません。最も大きな臓器である肝臓が右側にあるため、右側が重いのです。ですから、身体をわずかに左に傾けた姿勢がニュートラルポジションとなります。ボール蹴りで左脚を軸足としたほうがやりやすいのは、そのためです。

それについては、運動科学研究家の小山田良治さんの著書「左重心で運動能力は劇的に上がる!」(宝島社)に詳しく書かれていますので、興味ある方は読んでいただくとして、ここからはライディングでの要点を紹介したいと思います。

身体の右側が重いのですから、バイクに跨ったときは、右側よりも左側のお尻に荷重を感じる状態が、ニュートラルポジションです。ですから、その状態を基本に左右に体重移動していくことになります。

左コーナーでは、外足の右脚に軸足があることは同じでも、左腰に体重が多く掛かっていることを生かして、左腰からコーナーに切り込んでいくことになります。そして、一方の右コーナーでも左腰を使って体重移動していく感覚となります。

つまり、左コーナーでは実質的によりイン側にハングオフした状態からコーナーに入るのに対し、右コーナーは腰をアウト側に残したままのコーナリングになり、リーンイン傾向が強くなるというわけです。

※画像出典元:motogp.com

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また、左コーナーでは左股関節の外旋を強く利用して体重移動することで、前乗りになるのに対し、右コーナーでは左股関節の内旋を重視することで、右腰を幾分後方に引くことになり、後乗り傾向となるのです。

この左腰重視感が疎かになると、左コーナーでは、右股関節の内旋で左腰が後方に引き戻され、体重移動がせき止められるのに対し、右コーナーでは右股関節の外旋が身体を後方に残し、外脚のホールドが緩み一体感が薄らぐというわけです。

最後にアドバイスを付け加えますと、まずは、素振りでも素投げでも左右を同じようにこなせる身体操作を身に付けてください。そして、実際のライディングでは、右よりも左のお尻のホッペへの荷重感を途切れさせないようにしてみてはどうでしょうか。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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