色んな面でターニングポイントを感じた今年のEICMA

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

その1.均衡が崩れ出したショー間の立ち位置

偶数年開催のケルンのINTERMOTも、毎年開催のミラノのEICMAも盛況のうちに終了しました。かつては偶数年のケルン(あるいはミュンヘン)と奇数年のミラノが交互開催で、うまく回っていたのですが、05年にミラノに新会場が完成した以降は、EICMAが毎年開催になったのです。

そこでも当初は、日本メーカーとBMWは10月初旬のINTERMOTで、イタリアンメーカーは11月初旬のEICMAでという図式が成り立っていたのですが、それが近年になって崩れ始め、今年はドイツのBMWまでもがイタリアのEICMAに重きを置いた出展を行うようになっています。

▲INTERMOT

▲EICMA

確かに、メーカーとしては世界的に多くの人が注目するところで発表したいでしょうし、毎年、同じ時期に新型車を発表して来季の商談に結び付けたほうが仕事が流れやすいことも確かでしょう。

そんなわけで、INTERMOTとEICMAのバランスが崩れ始めており、これは特に欧州において由々しき問題のはずです。EICMAだけでは、ドイツを中心とする欧州北中地域をないがしろにしてしまうからです。

その2.多くの中小メーカーが元気になってきた

会場内のブース、または会場外の施設でカンファレンスを開催するのは、それなりのトピックと予算に恵まれる大メーカーが中心でした。それでも、特にプレスディの1日目は、30分刻み(1時間を確保するメーカーもあるが)のスケジュールに追われて、会場内を駆け回ることになります。

ところが今年は、それが20分刻みのスケジュールとなったのです。全てに出席するのが困難になったことはともかく、それだけ多くのメーカーがカンファレンスを開催するということです。INTERMOTからEICMAに流れてきたというよりも、これまで開催にあまり縁がなかった中小メーカーまでもが加わってきたと見るべきなのでしょう。

それらの多くは、市場としても生産国としても魅力的なインドや中国と関係を持ち、世界進出を目論んでいます。そしてそのことは、バイク産業勢力図に大きく影響を及ぼしていくと思われます。

その3.ベーシックモデルの充実ぶりが顕著に

ですから、発表されるニューモデルは、バイク市場先進国ではベーシックモデルになり、また開発途上国では単なる実用車から一歩抜き出てスポーティに楽しめるバイクが増えています。具体的には、125ccクラスからミドルクラスのストリートバイクです。

ベネリのレオチーノ800(コンセプトモデル)や752S、ヒーローのXパルス200/T、イタルジェットのドラッグスターやカフェイナ、モンディアルのフラットトラックやスポーツクラシック、プジョーのP2Xコンセプト、ロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650とインターセプターINT650、SWMのVareZ125/300/400など枚挙にいとまがありません。

ベネリ レオチーノ800(コンセプトモデル)/752S

ヒーロー Xパルス200/T

イタルジェット ドラッグスター/カフェイナ

モンディアル フラットトラック/スポーツクラシック

プジョー P2Xコンセプト

ロイヤルエンフィールド コンチネンタルGT650/インターセプターINT650

SWM VareZ

もちろん、国産メーカーには、こうしたものに相当する優秀なモデルが多く存在します。でも、人々が何か違うものを求めるようになると、これらの魅力が光ってくることも確かです。

その4.電動バイク化への動きが急激に活発になってきた

すでにイギリスとフランスは2040年からの電動車への移行を言明。隣国の台湾政府もその動きを明確にしており、これが世界的に広がっていくことは間違いないでしょう。

国産メーカーも準備を怠っていないはずですが、大メーカーよりも市場への働きかけが早いのが中小メーカーです。中小メーカーとは言えないでしょうが、H-Dはライヴワイヤーを市販車として、KYMCOはスーパーNEXをコンセプトモデルとして発表。電動スーパースポーツにいち早く取り組んできたエネルジカはサムソンと提携し、さらに発展させたボルドEを出展するなど、電動大型スポーツの動きを加速化させています。

H-D ライヴワイヤー

KYMCO スーパーNEX

エネルジカ ボルドE

他にも、GASGASは世界チャンピオンマシンの電動トライアラー(ミッション・クラッチ、クランク軸に代わるフライホイールを装備する)を市販化、ハスクバーナはミニモトクロッサーのEE5を発表、SYMもスクーターの電動化を進めています。

今後、こうした動きがさらに拡大していくのではないでしょうか。

GASGAS 電動トライアラー

ハスクバーナ EE5

SYM 電動スクーター

その5.尋常ではない欧州製スーパースポーツの高性能ぶり

リッタースポーツの最高出力200psは絶妙のバランスで成り立っています。これ以上に高出力化しても市販車としての耐久性に問題が出てくるので、これが上限かと私は思っていました。

ところが、EICMAで発表されたパニガーレV4Rは221ps、S1000RRは207ps、1100ccとなったもののRSV4 1100は217ps、ブルターレ1000セリエオーロはネイキッドモデルであるにも関わらず208psなのです。

ドゥカティ パニガーレV4R

BMW S1000RR

アプリリア RSV4 1100

MVアグスタ ブルターレ1000セリエオーロ

どうなってんじゃ、と叫びたくもなります。かつてほど需要が見込めないリッタースポーツなのに、それだけメーカーの威信を掛けての技術開発が行われているということなのでしょう。現実的な動きとは異なるロマンも感じざるを得ません。

▼関連記事まとめ

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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