【NIKEN動画インプレ】 雨の「ヒザ擦り」「8の字」で見えた底知れぬ可能性とは!?

【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

ヤマハが開発したLMWの最新大型スポーツモデルがNIKENである。先日開催されたメディア向け試乗会での第一印象は、インプレ速報でお伝えしたとおりだが、今回は動画解説も加えつつNIKENの素顔を掘り下げてみたい。

LMW(リーニング・マルチ・ホイール)とは、ヤマハが名付けた「車体を傾けて曲がっていく3輪以上の乗り物のこと」でトリシティシリーズなどがすでに有名だが、ミッション付きの大型スポーツバイクとしてはNIKENが初ということになる。

ベースはMT-09で、クロスプレーン3気筒エンジンの元気の良さはそのままにクランクマスを増やすなど、特に低速域の扱いやすさを向上させているのは既報どおりだ。3つのエンジン特性を選べるD-MODEやABSやトラコン、スリッパ―クラッチ、クイックシフターなどの最新の電子装備も同様だ。

最大の違いはフロントの接地感

出力特性はMT-09に比べると全体的にマイルドで、モードを切り替えても極端にフィーリングが変わる感じはしなかった。もちろん、最強モードにすればレスポンスが鋭くはなるが、車重があってホイールベースも長いこともあり、車体で吸収してしまうのかもしれない。いい意味で穏やかになっていると言える。

今回は雨天で自分が試乗したときはフルウェットだったこともあり、LMWのメリットがより明確に感じられたと思う。絶大なる安定感、安心感に支えられながら曲がれるコーナリングの素晴らしさは速報でもお伝えしたとおりだ。動画を見てのとおり、ヒザ擦りも朝飯前!と言いたいが、最初はやはり探り探りだった。
現地に同行していたヤマハの開発スタッフからは「雨でも大丈夫」と聞かされてはいたが、一方で「絶対転ばないわけではない」という話もあったので、どこまで行けるのかが分からなかったのだ。

ところが実際に走り出すと通常の2輪にとても近い感覚の乗り味で、慣れるのに時間もかからなかった。そして決定的に異なるのがフロントの接地感だった。

2輪との勝負はシチュエーション次第

フロントさえしっかり路面を掴んでいてくれれば、多少リヤが滑っても何事もなかったように走り続けることができる。これが2輪だったら、リヤの滑りがフロントにも伝わって激しく振られるか、ウェットなら即座に転倒してしまうだろう。それがLMWの場合はリヤの滑りをフロントで吸収してしまうのだ。ちなみにトラコンの効果も絶大だ。

この安心感があるので、コーナリング中もフロントだけに神経を集中させていられるし、車体を傾けながらでも、けっこうフロントブレーキを握れる。その意味では4輪的かもしれない。動画を見てもらえば分かるが、フルウェット状態の中、ノーマルタイヤであれだけ寝かせていくことはなかなかできないと思う。
もし可能だとしても、いつ転倒するか分からない紙一重の状況ですぐに疲れ切ってしまうことだろう。我慢しなくてはならないので、ストレスもたまりやすく神経に良くない。

それがNIKENの場合はフロントからスリップダウンする悪夢から解放されるため、雨でも気楽に肩の力を抜いて走れる。それ故に疲れにくく、結果的に長距離も快適に走れるし、峠道を繋ぎながらのロングツーリングも楽しくなるはずだ。

一方で2輪とLMWとどちらが速いか、というガチ勝負になると、ドライ路面では軽快性やコンパクトな旋回性に優れる2輪に軍配が上がりそうな気もする。やはりNIKENはだいぶ大きく重いからだ。つまり、NIKENは2輪よりコーナリングが速いわけではなく、より安心が担保された上でスポーティなコーナリングを楽しめる乗り物と言える。

ただ、さらに突っ込んで、「その限界はどの辺りにあるのか?」という疑問に答えられるだけの情報収集はできなかった。何しろすべてが初体験。限界付近でどういう兆候が現れるかは未知の領域だ。

4輪のステアリング機構をLMWに最適化

もうひとつ感じたのが、今回新たに採用されたLMWアッカーマン・ジオメトリーの凄さである。LMWという意味ではトリシティも同じ機構を採用しているが、NIKENが異なるのはアッカーマン・ジオメトリーを採用している点だ。

アッカーマンは4輪の前輪に採用されているステアリング機構の一種で、カーブに対して内側と外側の車輪が描く軌道の違いを補正してスムーズに旋回させるための仕組みだ。ただLMWの場合、これにリーンが加わることで内外輪はトーアウト(ハの字型に開く方向)の状態になり、うまく曲がれなくなってしまう。

これを防ぐために考案された仕組みがLMWアッカーマン・ジオメトリーだ。4輪では古くから一般的に用いられているアッカーマンをLMWに合わせて最適化したものと言える。その要となるのが「オフセット・ジョイント」という機構で、リーン軸とステアリング軸とを分離させることで宿命的な課題を解決した。
工学的な話なので難しいが、だいたいそんなところだと自分では理解している。

バンクしたところからさらに曲がっていく

重要なのはその効果だ。試乗会では低速時のハンドリングを確かめるため、特別に許可をいただいて8の字旋回にトライしてみたのだが、ホイールベース1510mm、263kgの巨体にしては意外なほど小回りが利く。

たしかに車体が大きい分、トリシティのようには小回りできないが、曲がり方というか曲がる力が強い感じがするのだ。他メーカーの幾つかの3輪モデルに乗った経験もあるが、大概はステアリング機構の複雑さ故か、2輪に比べて旋回半径は大きくなりがちだ。

大雑把な言い方をすれば、フロントが外側に逃げるようなアンダーステアの傾向を示すことが多いように思える。それがNIKENの場合は車体を倒し込むとフロントがイン側にグイッと向いてくる感じなのだ。
かといって通常の2輪のように自動的にセルフステアによって前輪が切れ込むのとも異なり、極端に言うとフルバンクに近いところでは、ハンドルを自分で切っていく4輪的な操舵感覚も持ち合わせている。

その辺りのバンク角と操舵角の微妙なサジ加減を上手くコントロールできるようになると、さらに曲がるようになってNIKENを操るのが楽しくなってくる。
ぜひ動画でも低速8の字旋回の様子(06:30辺りから)を確認してみてほしい。

NIKENに見た底知れぬ可能性

NIKENは絶大な安心感とともにビギナーでもイージーにスポーティなコーナリングを楽しめる一方で、ベテランにとっては曲がり方のサイエンスを追求する面白さもあると感じた。LMWが今後もドンドン進化していけば、それとともにライダーの乗り方にも変化が現れ、そのうちにとんでもないライディングスタイルが登場するかもしれない。
また、LMWの真価は林道などのラフロードを含めた長距離ツーリングにあるのではないか、と思える節もあった。次に機会があれば是非そのあたりも検証してみたい。そんな可能性を垣間見たNIKENの初試乗だった。

【Webikeモトレポート】ヤマハ「NIKEN」試乗インプレッション

ケニー佐川

ケニー佐川 Webikeニュース編集長

投稿者プロフィール

早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。
雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。
株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。
日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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