INTERMOT2018で改めて思う「バイクは使ってナンボのもん」

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

気持ちよく過ごせた今年のINTERMOT

私が今年のINTERMOTへの出張を決断したのは、開幕のわずか10日前のことでした。それでも、その日のうちにpdfでプレスパスが届いたのは、日本と本国ドイツの事務局の迅速な対応のおかげでした。

初めてケルンショーを訪れた22年前から欠かさず取材を続けてきただけに、ショーが近づくに連れ、居ても立ってもいられなくなったというのが正直なところだったのですが、私には取材を躊躇する訳がありました。現地で発表されるや、すぐさま発表会の様子から技術的な詳細までが、世界にネット配信されてしまう今日、あえて取材をすることの意味が薄れていることが、最大の理由でした。

でも、今年のINTERMOTに行ったのは大正解でした。何人かの欧州のジャーナリストや業界関係者と再会を喜び合い、仕事の輪を広げることができましたし、カンファレンスのスケジュールに余裕があって、ミラノのEICMAとは違いプレスデイにおける一般の人達の入場が厳しく制限され、ジャーナリストのための取材の場としてのスタンスが比較的守られていたのです。

そして何より、発表されたバイクがどれもホッとさせてくれる雰囲気を放っていて、気持ち良さを保つことができたのです。

目指すべきトレンドは非日常ではなく、超日常

10年近く前までは、超高性能なバイクのエキサイティングさにワクワクしてきたものです。また、昔ならスポーティパッケージとして成り立ちにくかった大型車が、使える大きさにまとめ上げられ、それを使いこなせる可能性に心が躍ったものです。

そうした技術の進歩への感激を人々が持続できるうちはいいのです。
でも、様々な要因によって、それには頭打ちが訪れます。人間の能力を超えた高性能化に疲弊し始めたことや、ライダーの高齢化、リーマンショックという経済的な要因が加わり、10年近く前からバイクへの要求が大きく変化してきたように思います。

私自身、以前は、非日常を味わえるのがバイクであり、それに乗ることで現実から離れることのできる魅力があると考えていました。もちろん、今もそのことは基本的に変わらないのですが、非日常の度合いが過ぎると、それは逆にストレスになりかねません。ですから、日常というスタンスを保ったまま、日常生活にスパイスと豊かさを加えてくれる“超日常”が求められるべき姿ではないかと考えるようになっています。

今回のINTERMOTで発表されたニューモデルは、どれも超日常を感じさせるバイクばかりでした。最も存在感があったスズキのカタナは、ベースのGSX-S1000から基本特性を受け継いでいるはずですが、ライポジは、快適さの中にスポーティさを訴えるS1000に対し、もっと着座位置が前寄りでアップライトのため、より日常寄りの存在を思わせます。

▲SUZUKI KATANA

▲SUZUKI KATANA

インディアンのFTR1200は、ダートトラッカーイメージのモデルながら、街乗りスクランブラーとしての魅力を感じます。楽なライポジでワイドレンジに使えるわけで、昔の何にでも使えたキャラを、高次元化させたものであるからです。ドゥカティのスクランブラーシリーズやトライアンフのストリートスクランブラーも同様に魅力的です。

▲Indian FTR1200/S

▲Ducati Scrambler

▲Triumph Street Scrambler

BMWのR1250GSは動力性能的にもさらに充実し、大排気量化と高出力化にはうんざりという気がしないでもないのですが、ドイツではこれが街乗りバイクとして使われている現状を見ると、やはり超日常バイクとしての充実ぶりを思わせます。

▲BMW R1250GS

というわけで、いたずらに刺激されることなく、平穏な気持ちで新型車を見守ることができたのでした。

▼関連記事まとめ

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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