ライテク都市伝説を斬る その14 [体重移動で曲げる]

【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

コーナー飛び出し事故が減らない現実

体重移動をしてコーナーに入るというのは、紛れもない事実です。
ここで気になるのは、右コーナーなら外側のガードレールに接触、左コーナーだと対向車線に飛び出し対向車と衝突といった事故が減らないことです。これはどうしてなのでしょうか。

昔だと、コーナーでのズリゴケこそあっても、飛び出し事故はあまり聞かなかったものです。コーナリング速度も遅いうえに、逆操舵を伴った大きい体重移動でコーナーにアプローチしなくてはならず、やるべきことをこなしやすかったのかもしれません。

でも今では、極端な話、コーナーを見ただけで曲がり始め、コーナリング速度も高いため、知らず知らずのうちにペースが高まり、ちょっとしたミスが悲劇を呼ぶと思えます。一瞬のヒヤリ感が身体を固まらせ、なす術もなくなってしまう場合が多いのでしょう。特に中高年のリターンライダーだと身体が固く、昔のように反射的に反応できなくなっていて事故を起こしやすいとも言われています。

そんなとき逆操舵で事なきを得ようとする人もいるはずです。でも、一瞬たりとも行きたくはない方向にハンドルを切るなんて、本能的に難しいのです。体重移動が先決で、逆操舵はその後に付いてくるべきものなのです。逆操舵を第一義としたライテク論に私が否定的なことには、そうした理由もあるのです。

大切なのは明確な正しい体重移動のイメージ

ここでは、体重移動というものに対して、正しい認識を持っていることが大切です。
体重移動というと、身体そのものをイン側に移動させることと考えている人が多いようです。でも本当は、身体ではなく、体重を移動させなければならないのです。それも、漠然と身体を寝かせるだけでもいけません。

身体そのものをイン側に移動させようとすると、移動の反作用によってマシンはアウト側に押しやられます。そのことによって、特にタイミングが遅れたとき、アウトに膨らみそうな不安が過ることになります。

正しい体重移動には、投げる、打つといったスポーツの基本要素に通じるものがあります。それらは、テイクバック、ダウンスイング、インパクト後のフォロースイングの3段階から成り立っています。

テイクバックの部分では、迫るコーナーに向けて反対側に体重を移動する感じで身構え、ダウンスイングでは、股関節を起点にまず骨盤をイン側に移動させることになります。これは「腰を入れる」という動作であり、コーナリングの一次旋回に相当します。

もっと言えば、腰を入れる前には、できるだけ外足に体重を残す外足荷重が大切で、これがいわゆる「タメ」なのですが、こうしたイメージを持っていれば、いかなる状況にも対処しやすいはずなのです。

そして、体重移動を持続させるイメージが大切

また、体重移動で無事コーナーに入っても、旋回中、飛び出すかもとの緊張感から解放されないという人もいます。これも、コーナーでそのまま真っすぐ行ってしまいそうになることと、本質的な原因は同じだと考えます。

コーナリングは進入が大切とは言え、それで終わりではないのです。
一発で決めればと思っていると、そのタイミングを逃したとき、パニックに陥りがちだし、コーナーに入ってもマシンに乗せられた状態のため、予想より曲がり込んでいたとき、何もできないことになります。

だから、一次旋回で腰を入れたら、そこから腰から上体がしなるようにイン側に移動していくことになります。そのことでクリップに向かってニュートラルに曲がり込んでいくことができます。そうすれば、旋回中の緊張感からも解き放たれるはずです。最近のレースでの極端なリーンインスタイルも、その延長線上にあるのです。

上手くて速いライダーの中にも、後ろから眺めたとき、全く身体が動かず、お地蔵さんのようなリーンウイズに見える人もいます。でも、彼らにしても、本当はそのようにしっかり体幹運動しているのです。

和歌山利宏

和歌山利宏 モーターサイクルジャーナリスト

投稿者プロフィール

1975年にヤマハ発動機に入社。ロードスポーツの開発に携わる。
レーシングライダーとしても活躍し、鈴鹿8耐第4回大会では4位入賞。
85年からはヨコハマゴム契約となり、タイヤの開発テストを行うとともに、
ワイルドカード参戦した87年の日本GPでは、250ccクラスで11位に入る。
90年からはジャーナリストとしての活動を始め、現在に至る。

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